諒はしぼり出すように、
「…麻也さんは今度は薬で…」
すると社長は諒の腕を叩き、
「麻也は絶対大丈夫だよ。病院の薬しか持っていないんだから。何より麻也はお前を失うより死んだ方がましだと思ったんだ。2人ともお互いに愛情があるまま、一緒におかしくなってたんだよ」
しかし諒は、
「そんなの分からない。麻也さんは人気とかバンドとかを失うのが怖かっただけかも…」
でも、そう言いながらも諒は最後に見た麻也の笑顔と言葉を信じたかった。
やっぱり麻也は本当に自分に救いを求めていたのではないだろうか。
そして自分だけを愛してくれていたのではないだろうか。
それを自分はどうして信じられなかったのか…諒は自責の念に駆られるばかりだった。
その後、麻也のことは何も知らされぬまま諒は個室に移されると、疲れの限界をとっくに越えていた諒はベッドの上で意識を失って…
目が覚めると社長がいてくれた。
そこに須藤がやってきて、ようやく諒は麻也の容態を聞くことができた。
麻也の意識が戻って記憶障害はなかったこと、命に別状は無かったこと…
諒は必死で頼んだ。
「麻也さんに会わせて!」
「いや、面会謝絶なのでまだだめです。一生人工透析になる人もいるようなんですが、そんなこともなくて、でも麻也さんの精神的なショックが大きいので、真樹さんは付きっきりだし…
「諒、お前もこんな状態だから会うのは無理だよ」
「でも、でも俺は麻也さんに会いたい。会って謝りたい」
「もう少し落ち着いてからにしてください」
「でも須藤さんは会ったんでしょ」
「私も会ってません、本当に家族だけなんで連絡は真樹さんに頼んできました。ご両親は出張中でこちらに向かってる最中だそうで…」
じゃあ、せめて真樹に…と言いかけて、諒は自分にその資格があるのかと気付き、言葉を飲み込んだ。