どうにか麻也は意識を自力で取り戻し、真樹の次の言葉を待った。
真樹の方も言葉を選びながら、
「その…諒が嫉妬して、兄貴に失望していくように、二人を引き裂くように、あのバカ女優が裏で糸を引いていたって…」
真樹の声が頭に響いて思わず麻也はしかめっ面になった。
それを見て真樹はごめんと声を潜め、
「…社長が聞いたんだ。あの二世のボウズの父親、あの偉い俳優から。それで諒に電話でそれを説明してる時に…その…兄貴倒れたってことで…」
「…」
麻也は混乱するばかりだった。
「ひどい話だよ。未成年の子たちの真剣な想いを利用して、自分の不倫を叶えようなんて…」
と語る真樹も耐えられないというようにうつむいた。
麻也は頭が混乱してしまい、ただひたすら諒と自分がどうなるのか不安に思うばかりだった。
それを真樹は察してくれたらしく、
「兄貴、俺ずっといるから安心して。付き添いだから。諒はほぼ休んでるだけだから親父さんが来るまで、社長と恭一さんがついてる」
(恭一が…)
麻也は彼が自分の秘密を諒に告げていたらどうしよう、と真っ青になった。
「父さんと母さんが出張ですぐに帰って来れなかったんだよ」
それで万が一を覚悟して、動転していた真樹は身内同然の恭一を呼んだのだという。
「恭一さんは諒をぶん殴りかけて、俺たちが必死で止めて…」