まるく見えるのだが・・・、どんな風が吹いている???
夏の夜空、天頂付近にはくちょう座が位置する。写真の明るい星は、はくちょう座の十字の中心星、その周りには目には見えないが赤い星雲が覆っている。
「ネオワイズ彗星が見頃です。」というニュースに誘われて撮ってきた。公転周期6,700年、前回、地球に近づいたときは縄文時代だった。
星が十字状に配置されているはくちょう座、その十字の中央の星が通称サドル(Sadr)と呼ばれている星です。写真の中の最も明るい星がサドルです。写真では白く写っていますが、実際には黄色の星で、生まれてからかなりの年数を経ている超巨星です。
そのサドルのまわりには、赤い星雲が雲のように広がっていて、まるで夏空の雲のようです。星空の中で最も好きな領域ですね。
このサドル、残念ながら望遠鏡を使っても肉眼で見ることはできません。
星空が好きで、今日も天体写真を撮りながらブログを書いています。・・・・などと書いたとたんにガスが出てきて曇ってしまいました。これから撤収です。
夏の入道雲が好きでよく写真に撮っているのですが、このサドル付近の赤い星雲と周辺の色とりどりの星々が小さい頃に見た入道雲の記憶と重なる部分があり、宇宙の中で特に印象深い領域です。
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本当は望遠鏡をとおして直接目で見ることができれば良いのですが、赤い星雲はほとんど見えません。長時間の高感度撮影ではじめて浮かび上がってきます。
写真右に見える明るい星ははくちょう座のγ星、通称サドルと呼ばれていて距離約1,830光年、写真左側の赤い星雲はIC1318という番号が付けられていて距離約5,500光年と言われています。もし、5,500光年の距離を数日で行けるような宇宙船ができたら真っ先に行きたい領域ですね。(たぶん赤い星雲は見えないだろうなと思いますが)
中心部の明るい核、周辺部は全体的に淡いのですが部分的に星が密集した明るい部分があり、それらが連なっているように見えます。Sunflower Galaxy(ヒマワリ銀河)と呼ばれているのですが、なんとなく独特の趣がありますね。
僕の持っている望遠鏡で銀河の構造をはっきりと撮ることのできるのはM63程度の距離(2650万光年)が限界です。まぁ、すごい性能の望遠鏡ではないのですが、2650万光年は2650万年前の光ということ、言い換えると2650万年も宇宙を旅してきた光ということになりますから、そんな大変な思いをして届いた光をとらえているんですね。
いつの日か2650万光年という距離が近いと感じる日も来るのかもしれませんが、その時には、僕のように望遠鏡で写真を撮って、その銀河の姿をあれこれと想像する人はいないだろうな。
「星?あまり興味のない」という人も”北斗七星”や”北極星”は聞いたことがあると思いますが、このM81とM82は、北斗七星のヒシャクの先端から北極星までの間の中間付近に並んで浮かんでいます。
渦巻きがきれいなM81と何やら変形したような形のM82、この2つの銀河は近い位置にあり、お互いに影響しあっています。どちらかというとM82が大きな影響を受けているようですが。
前回のアップ時に紹介した「福岡 伸一著 生物と無生物のあいだ」には興味深いことがいくつも書かれていました。
分子生物学者には、生命現象が原子や分子が絶え間なく流れている川の中の流れが遅くなっている部分のようなものに見えているようですね。
人間の細胞は新陳代謝によって絶えず入れ替わっていて、胃壁や腸壁だと5日、心臓が22日、筋肉・肝臓は約2ヶ月、骨で3ヶ月ですべて入れ替わってしまうそうです。驚きですが3ヶ月でまったく新しい人になってしまうということです。細胞は、壊れている細胞も壊れていない細胞も関係なく、食べた物を材料として常に新しいものへと置き換わっていく。
原子の寿命は10の後ろにゼロが32個並ぶような、ほぼ永遠といえるような寿命を持っていると言われています。食物を構成している分子や原子は、体の中に入って、胃の材料となったものは5日、筋肉や肝臓の材料となったものは2ヶ月、骨の材料となったものは3ヶ月で出て行ってしまうということです。常に新しい分子や原子が体の中に入ってきて、壊れてもいないのに短期間で体から出ていく。そんな分子や原子の流れの中で”私”が連続しているんですね。
DNAという設計図によって常に新しい体に置き換わっても”私”を保持しているんでしょうが、それにしても生命現象というのは奥が深いですね。
中央の大きな銀河がM106、その他、中くらいから極小までいくつもの銀河が写っていますね。(写真をクリックすると大きな写真が出てきます。その中でややボンヤリと写っているのが銀河です)
これらの銀河、ひとつひとつが数千億の星の集まりですから、・・・・・とてつもない数の太陽のような星、地球のような惑星が宇宙にはあるということですが、お隣の星までの距離がとても遠いため、”ちょっと隣の星まで行ってきます!”というわけにもいかないのが実情です。
人の体の大きさと宇宙の大きさは、なぜスケールがこんなにも違うんでしょうね。ちょっと不思議に思うことがあります。距離が関係しない通信方法、移動方法が宇宙には隠されているんでしょうか。
左上の大きな散開星団がNGC663、右下の小さな散開星団がM103です。このペアーは小さな散開星団にメシエナンバーが付いていて、大きな散開星団には付いていないという不思議な組合せです。(メシエナンバーは、たいていは大きくて明るい星団、星雲、銀河に付けられます)
それにしても、赤い星、黄色い星、青い星、カラフルで見ていて楽しい領域です。
私達が属している天の川銀河にもいくつかの渦があり、中心方向の渦は”いて腕”、外側の渦は”ペルセウス腕”と呼ばれていて、太陽系はそれらの渦の真ん中付近にある小さな渦の中にいます。 NGC663やM103は”ペルセウス腕”に属していて、いくつもの散開星団があります。
写真の中にたくさん見えている星はすべて太陽と同じような恒星です。地球と同じような惑星を持っている恒星もたくさんあるでしょう。中には生命を宿している惑星もあると思います。広大ですね。宇宙は。
ケフェウス座のアイリス星雲、青く輝く星雲の周りに光を通さない分子雲が広がっているのが特徴です。もう少し、感度の高いカメラで撮ると分子雲が一面に広がっているのがわかるのですが、私のカメラではこの程度が精一杯です。
”重力波を検知した”というニュースが今日配信されました。アインシュタインが理論的に予言した重力波が100年以上経て現実のものとして確認されたことになりますね。アインシュタインは4次元時空という表現で時間と空間が密接に連動している理論を提唱しました。光速度に近いスピードで移動している物体の中では空間が縮み時間の進みが遅くなるというのですから、宇宙そのものは固く動かない絶対的なものではなく、空間的にも時間的にも伸び縮みできるフレキシブルなものということになります。
アインシュタインが扱っていた宇宙空間という極大の世界、そしてアインシュタインが「神はサイコロ遊びをされない」という表現で最後まで与しなかった極小世界の量子論、人の生命や精神という分野も含めていつの日か統合的な理解ができるのでしょうか。
秋から冬の星座 アンドロメダ座には有名なM31(アンドロメダ銀河)というお隣さん銀河がありますが、NGC891はそのM31よりも10倍以上離れた約3,000万光年の彼方にあります。銀河を真横から見た姿でエッジオン銀河と呼ばれています。大望遠鏡で撮ると中心部の赤と黒の帯があり、複雑な構造を確認することができます。かの有名なアメリカ パロマ-山天文台のパロマ-写真集にもNGC891が収録されているそうです。
パロマ-山天文台は、カリフォルニア州サンディエゴにある古い天文台ですが、パロマ-山天文台と聞くと不思議に青い空と真っ白をイメージします。事実、パロマ-山天文台は白い色をしているのですが・・・。写真の影響を受けているんでしょうかね。
本来、色は光の波長が関係しているのですが、心の中でも色をイメージすることができます。心の中にもスクリーンがありますね。