arata-tokyo-jp's blog(Henry Nagata)

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「ある情景」 (ショート・ショート・ストーリー)

2006年05月29日 17時41分42秒 | ショート・ストーリー
血で血を洗う戦国時代の或る静かな夜。

敵の城を取り囲んだ多くの武士たちは、明日の総攻撃にそなえて、草むらの中でひと時の眠りに就いていました。

敵の水路は既に絶たれ、城内では武器も食料も底を突いているようです。

最早、形勢は既に明らか。

夜明け前には近隣からも援軍が加勢し、総勢数万の武士たちが一気に城を攻め落とそうという勢いです。

数ヶ月に及ぶ戦いの末、皆疲れ果てて、死んだように眠っている者たちもいます。

近くの湖には、妖艶な三日月が浮かび、辺りの森は「しーん」と静まり返っています。



その時!



敵の城内から幽かな笛の音が・・・

それは、死を覚悟した娘たちの、音曲と舞が始まったのです。
 
その幽かな音色は、夜の闇に広がり、眠っている強者たちの耳元にまでも届きました。

ある者は目を覚まし、ある者は夢の中で、その幽玄な美しい幻想に酔いしれています。

ある者には純潔な娘たちの姿が・・・

ある者には妖艶な女たちの姿が目に浮かびます。

夜が明けるとともに、殺伐とした血生臭い世界が繰り広げられる、その束の間の出来事。

敵と味方を忘れさせる、不思議なひと時・・・




コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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不思議な感覚です☆ (astuloso YUKA)
2006-06-06 20:08:06
「和」のテイストが強めなストーリーですね。

戦国時代、想像しにくい世界ですが、

「娘」というワードは、

戦国という硬いイメージをやわらげる、

重要な要素だと感じました。
返信する
鋭い指摘ですね・・・ (ARATA)
2006-06-06 22:49:48
YUKAさん、コメントをどうもありがとう。

「娘というキーワード・・・」という言葉に、ちょっと「はっ」とするものを感じました。

自分でも気が付きませんでした。

それで前から少し気になっていた所を修正する事が出来ました。

ありがとう。
返信する

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