投資家の目線

投資家の目線56(村上ファンドの意義)

 いわゆる村上ファンドは、基本的に企業の純資産に対して株式時価総額の低い銘柄に投資するスタイルをとっているようである。つまり、企業の資産に対してミスプライシングされている銘柄に投資しているということだ。市場におけるミスプライシングであれば、短期間で企業価値(=株式価値+負債価値)が本来の姿に修正しうると思われる。今回の阪神電鉄株売却劇で、同ファンド側は1株当り1,200円程度が同社の適正価格と考えていたようである。それ程ではないが、2005年前半の株価よりも阪急側の買収価格1株当り930円は一株当り1,200円に近く、阪神電鉄のあるべき姿に近づいたといえる。阪急HDの予想以上の株主がこのTOBに応募したといわれるが、このような経済合理性に則った決断をする株主が増えたことは喜ばしいことだ。
 また、ファンドというのは転売を前提としている。すかいらーく社のMBOでも将来の再上場が検討されているようであるが、それは多くの投資家への株式の転売といえよう。そして村上ファンドの阪急HDと阪神電鉄の統合に続いて、投資ファンドのユニゾン・キャピタルは東ハトを山崎パンに転売することによって業界再編に寄与した。
 村上ファンドが購入した銘柄にプレミアムがある程度つくことは合理的なことと考えられる。企業経営者は企業内情報に詳しいため、彼らとその株主には情報の非対称性がある。村上ファンドのような大株主の存在はかつてのメインバンクのように、情報の非対称性を緩和する存在になりうる。阪神電鉄株購入時に阪神百貨店や甲子園球場の土地の簿価が新聞をにぎわせたが、一般投資家ではそのような細かいことを調べることはできないだろう。このような情報が公表されたことで、経営者と投資家の情報の非対称性が少しでも緩和されたように思う。大株主と他の株主の間でも情報の非対称性が生じうるが、経営者と株主間よりも小さいと考えられる。
 日本経済新聞で村上ファンドからの解約の記事があったが、その顧客には企業年金もあった(2006/6/7)。したがって、村上ファンドが高いリターンの上げるほど、その年金の保険料支払い者は負担を減らし、あるいは年金受給者は高い年金支払いを受けることができる。株式投資を行っていない人々でも、実際には年金などを通じて株価の影響を受けている。また、同ファンドの投資家の6割が米国の大学財団だそうだが、その運用益はその大学の教育水準の向上に資する。日本の私学も少子化の影響等により基金の運用に焦点が当たっており(2006/6/16日経金融新聞参照)、国内でも無関係な話とはいえない。このような状況に照らせば、企業の経済的価値を向上させられない経営者の存在は社会の迷惑といえる。ファンドに対する認識を変えていくべきときがきているように思う。

 6月30日からの巨人・阪神戦の視聴率(関東地区)は6月30日が5.5%(新生銀行のCMのようだ)、7月1日が8.6%、7月2日が8.3%であった(プロ野球の視聴率を語るblogより)。6月は巨人の成績が悪かったうえ、6月30日は大差のついた試合だったなど悪条件があったが、最も視聴率を見込める阪神戦でこの数字とは!この成績では来年も放映権料の更なる低下が懸念され、もしかしたら地上波の全国ネットさえなくなるかもしれないが、阪神球団はこの収入減をどうやって補っていくのだろうか?これは球団経営者の責任である。
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