最近、昔、読んだ本を再び本棚から抜き出し読むようになった。
新しい発見があり、嬉しくなる。
今、『ヘルマン・ヘッセ 庭仕事の愉しみ』を、ゆっくりではあるが紐解いている。
18年ほど前に購入した本だ。
胆嚢摘出の手術のために国立病院に入院の際、病室のベッドで読もうと持参した。
腹腔鏡手術が、今ほど実施されていなかった頃である。
手術前の説明で主治医の女医さんが自信ありげに申された。
「私はアメリカで200件以上、手術の実績がありますから安心して下さい」と。
手術に際して、私は何の心配もなく臨んだが、
親方のおろおろ振りは目にあまり、病人の私が心配するほどだった
娘が仕事をぬっては世話をしてくれた。
・・・そんな思い出の詰まった本である。
、『庭仕事の愉しみ』は、庭仕事の中に尽きぬ愉しみを見つけたヘルマン・ヘッセの
エッセー、詩、絵が詰まった素晴らしい本である。
表紙カバーの端に記してある文章が目に止まった。
「土と植物を相手にする仕事は、瞑想するのと同じように、魂を解放させてくれるのです」
今の私には目から鱗の言葉である。
続けて、こうも、記してある。
― ヘルマン・ヘッセは後半生、執筆に費やす以外の時間は殆ど自分の庭で過ごした。
一見、隠居趣味のように見える庭仕事の中に、ヘッセは尽きぬ愉しみと、後に彼の
文学へと結実する様々な秘密を発見した。
「自然は寛大であると同時にまた容赦のないものである。」
― ヘッセは庭に佇みつつ、観察し考える。本書はヘッセが自然から学んだ自然と人生に
関する心理を綴った書である。
これから、1ページ、1ページを大切に読んでいこうと思っている。
残りの人生を過ごしていく上に、大切なものを得る事が出来る気きがしてならないから。
座右の銘ならぬ、座右の書である。
しかしながら、つるつるの脳みそに中々染みこんでくれず困ったものである。
最後はお棺の中に入れて貰おうとも思っている。
娘の好きだった『ももいろのきりん』と共に。
あの子に届けてあげなくては。
空の雲の上で二人並んで読書するのもいいなあ・・・なんて。