クリニックの検査が終わってから、いつものごとく、ドトールで軽いランチを
とっていた。
お昼時で混んでいて、辛うじて奥の壁際の椅子が空いていた。
壁に向かっての食事は味気ない。
まして、私は閉所恐怖症気味だ。
両脇、見知らぬ人。
アメリカンコーヒーとサーモンと海老のサンドイッチをもそもそと食べていた。
「あら~、ユキさんじゃないの~」
振り返ると友だちのKさんが空のコーヒーカップを持って立っている。
「あら、まあ、お久しぶり。もうお帰りなの?}
「もう、一杯飲むわ」
彼女、コーヒーのおかわりを取りに行った。
30年近い友人で2歳下である。
テニススクールで知り合って、練習中、ふくらはぎに肉離れを起こした私を病院
まで運んでくれた気のいい友。
私、40代、まだ若かった。
テニススクールを止めてからも、Kさん、もう1人の友、Aさんと3人で山に
行ったり、食事をしたりと、気の置けないお付き合いをしている。
私以外はお酒がいける口だ。
「ねえ、大変なことがあったのよ」
椅子にかけながら、Kさんが言った。
可愛い性格である彼女の大変には慣れている。
オレオレ詐欺に引っかかりそうになった話とか、これは間違えば大変なことだが、
まあ、他愛もないことが多い。
しかし、今回だけは信じたくない出来事だった。
もう1人の友、Aさんのご主人が交通事故で亡くなられたのだった。
まだ、60を過ぎたばかりの若さだ。
それも、友の目の前で。
一カ月前のことで、Kさんは告別式に行ったとのこと。
「何故、知らせてくれなかったの」 と、私。
「あら、そうだったわね、ごめんなさいね」 と、相変わらずのんびりやさん。
仲の良いAさんご夫妻だった。
最愛のご主人に突然先立たれたAさんの胸中を思うと胸がつぶれそうになる。
暫く、そっとしてあげたい気持ちだ。
私がそうだったから。
偶然だが、今日は娘の月命日だった。
1年半経ったのだが、昨日のことのように思える。
現実として受け止めたくない気持ちで、いまだに心が揺れている日々だ。
今日は悲しい気持ちでいっぱいだった。
夕食の支度も上の空で、すき焼きの味が甘すぎると親方に言われた
そして、食後の薬を間違えて、朝服用の薬をまた、飲んでしまった
夜の薬は別にあるのに。
どうかしている私。
クリニック、待合室の花