天然の美?
今も住む集合住宅に越してきた頃の話だ。
隣の部屋の奥さん(Sさんという)に子供が生まれた。女の子で名はMちゃん。
そのうち3歳年下の男の子も生まれた。
Mちゃんが4歳くらいの頃だろうか。
家に帰ると、そのMちゃんと男の子を抱いたSさんとRoseyがいた。
隣の部屋の前でMちゃんが、「ママがいない」と泣きじゃくっていたらしい。
それでRoseyが連れてきたのだが、程なくSさんも帰って来てわが家へ。
Mちゃんは私らの姓がまだ言えず、Ocean(おおしゃん)ママとかパパと呼んでいた
そのMちゃんが「Oceanママは天然でちゅねぇ」と突然言ったのだ。
大人3人は呆気にとられて「エッ!」。「M ,どこで覚えたのそんな言葉」
「保育園で流行ってるもん。あのセンセ、天然っぽいねぇ、とか」
「Mちゃんさぁ、Oceanママはねえ、天然でもホンモノなの。養殖ものと違うの」
Roseyが言ったが、これは保育園児には通じなかった。
「残念、行商の魚屋さんの口癖だもんね。養殖もんじゃないよ、天然ものだよっ!」
それからRoseyは何を思ったのか、突然立ち上がって歌い出し、踊り出したのだ。
♪空にさえずる鳥の声 峰より落つる滝の音・・・
こういう時、大人は一歩引いてしまうが、子どもは意外と物怖じしない。
「Mも踊る!」と叫んで駆け寄った。
すると、RoseyがMちゃんの手を掴んでポーズを取らせながら一緒に踊る。
「美しき天然」(天然の美)というワルツの曲である。
二人の踊りが結構サマになっていて、Sさんも私もビックリ。
こういう時こそ写真を撮ればいいのに・・・いつでもアトの祭りだ。
そういえば子どもの頃から踊ることも大好きと言っていたRosey・・・。
これが刺激になったのか、彼女は社交ダンスまで習い始めたのだった。
ここで歌っているのはRoseyの好きだったボニージャックス。
ハーモニーの付け方や間奏などに独特の味があり、その辺りが好みなのかも。
ギターの伴奏もなかなか良い。
歌詞はすべて載せたが、ボニーの歌っているのは前半半分だけ。
歌詞を詰め込み過ぎたので、ぜひ全画面で見て欲しい。
背景写真は「心もよう」の二番煎じ。
なお、このメロディーはサーカスやチンドン屋の曲としても流行った。
よく聴くと物悲しい感じもする・・・その辺りが人を惹きつけるのかもしれない。
さて、越してきた当初からSさんとRoseyは仲が良かった。
ファッションが苦手というSさんのアドバイザー役にもなっていた。
どこへ行くにも揃いの洋服など着て、姉妹と間違えられることもよくあった。
家族ぐるみの付き合いでもあった。
しかし、Mちゃんが中学性の頃、Sさん一家は転居し、さらに転居をして音信不通に。
Mちゃんも30代半ばになっているはずだ。
お母さん、お父さん、弟・・・みんな元気で幸せに暮らしているだろうか。
Roseyと私にとっても、「天然」は忘れ難い貴重な想い出の一つだった。
[Rosey]