「う~ん、いいにおいがする。まずは腹ごしらえといくか」グリッドが突然気づいたように言った。
他の二匹もうなずくと飛び跳ねるやいなやストリート・ギャングたちを頭からバリバリ食べ出す。メンバーたちはあまりの恐怖に腰が抜けている。
「おい、お前の相手はこっちだ!」ダニエルはヒードンに言い放つと、セラフィム(織天使)だけが持つ6枚の羽を広げて飛び上がった。ただし、羽は金色ではなく、暗い黒色だったが。
「なんだ、このオーラは! まさかセラフィムが地上に? なぜ黒い羽?」
ダニエルは、マクミラを傷つけると言ったヒードンを許せなかった。
「地獄で後悔しろ! ミックスト・ブレッシング!」ダニエルの右眼から白い熱線が左目から黒い熱戦が発せられた。黒い熱戦は黒色火薬のようにヒードンの身体を幾重にも包むと、一瞬後に白い熱戦が時限爆弾のように発火した。
ヒードンは丸焦げになって絶命した。
今度はマクミラの番だった。
真っ赤な鞭をグリッドに向け振り下ろすと鞭自体が巨大な炎を生み出した。サラマンダーの血を強く引く兄たちと比べて発火能力の弱いマクミラが編み出したピュリプレゲドン・フィップである。
グリッドの甲羅にヒビが入り、次の瞬間、内部から地獄の劫火が吹き出した。グリッドはのたうち回りながらも、今度は殺してくれるのか? おお、お主に殺されるなら本望ではないか、とつぶやきながら燃え尽きていく。
一人残されたダークブリッジをマクミラとダニエルが挟む格好になった。
「油断するなよ」ダニエルが声をかける。
「わかってる。待たせたわね。お前は簡単には殺さない。なんで冥界に閉じこめた魔物たちがこうも急に人間界に来るようになったかを教えてもらうよ」
「色男が一緒で強気になったか。もしこの星が消滅したとしてもお前になど何か教えてやるつもりはないわ」
だが、すでにマクミラは手を打っていた。
ジュニベロスの三首の口から瘴気(しょうき)がはき出されて立ちこめていた。瘴気を吸い込むと神々でさえ意識が失われて、魔界の狼よりも鋭い牙に噛みつかれ振り回され冥界親衛隊の前に引き出されてしまう。
ワンブリッジもマクミラと話をしている内に自分の周りが瘴気で覆われていることに気づいた。「しまった! してやられたか」
「成長しない悪鬼だね。ジュニベロス、押さえつけて!」
一声叫ぶとジュニベロスはワンブリッジの上に飛び乗って、首にするどい牙を押し当てた。巨大な悪鬼もジュニベロスの前には赤子のようであった。
「た、助けてくれ!」
「もしも秘密を話すのなら冥界の牢獄に送り返すだけで許してあげる。なぜ人間界に次々と魔物が現れるようになったの?」
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