「たしかに・・・・・・闘いにあたって道理を説くなどとは、柄にもないことをした。メギリヌよ、闘って敗れれば、我らが軍門に下る約束は忘れておらぬであろうな? 闘って雌雄を決する方が先であった」
「それでこそシンガパウム。そちらこそ、我が勝てばアポロノミカンをいただくことを忘れてはおらぬであろうな」
「言うまでもない」
ガオーーン!
シンガパウムが、咆哮を上げて伸び上がると、一気に身の丈が数メートルにもなったかのように感じた。
いきなり方向転換するとそびえ立つ巨大な氷柱に、一撃を加えた。
その一撃は、氷柱に固まりきっていない土壁かのようにめり込んでいった。バランスを保っていた氷柱が、メキメキ音を立てると倒れた。崩れた氷柱は、かき氷状になると、一気に轟音を立てて竜巻になった。
シンガパウムは振りかぶると、竜巻を別の氷柱に投げつけるしぐさをした。次の氷柱が崩れて、新しい竜巻が出来た。次々同じことを繰り返すと、メギリヌを囲んで数個の巨大な竜巻が出来た。それは水流を含んでおり、まるで渦巻きのようだった。シンガパウムが、その内のひとつに飛び乗った。
「準備はできたぞ」
「氷天使の能力とマーライオンの能力。どちらが上か、力比べと行こう」
シンガパウムは、息を吸い込むとオーケストラのコンダクターが指揮棒を振るように腕を動かした。次々、竜巻をメギリヌにぶつけていく。
メギリヌも、負けてはいない。本気の時しか使えない技コールド・ファイア。メギリヌがはばたきで「冷たい炎」を送ると、一瞬で竜巻が凍りつく。超高熱の白熱と逆に、白い炎はすべての熱を吸い込む墮天使の秘技。凍りついた竜巻は、コントロールされてシンガパウムに向かっていく。
シンガパウムは、右から来た氷柱を右手で砕くと、今度は左手で轟音を立てる竜巻をぶつける。左から氷柱が来ると、今度は右手でメギリヌに竜巻をぶつける。永遠にその繰り返しが続くか、と思われた。
だが、そうではなかった。コールド・ファイアによって、一瞬にして竜巻を凍りつかせられるメギリヌに対して、いちいち氷柱を砕くシンガパウムのダメージの方が大きかった。だんだんと爪が割れ、毛並みが乱れ、手にも傷が目立ち始めた。
「ククク、大言壮語した割には、そのざまは何じゃ。あと何度、我がコールド・ファイアにたえられるかな」
ガオーーン!
シンガパウムが、再び一声吠えた。
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