人民元は2年間で円に対して50%以上も上昇した。
日本にUターンする企業が続出しておかしくない情勢だ。
2015年1月1日 木曜日
◆アベノミクスによる円安に対応できない中国・韓国、その衝撃度は重大 編集委員・田村秀男 2014年12月7日
アベノミクスが打ち出されて以来、2年で1ドル=120円をつけた。回復基調の国内経済に比べ、海外への影響はどうか。調べてみると、隣国の中国、韓国への衝撃度はかなり大きいことがわかった。
不況感が全土に広がっている中国をグラフで見よう。鉄道貨物輸送量というと、唐突 かもしれないが、李克強首相が遼寧省共産党書記当時に米国の駐中国大使に向かって「GDPは人為的だが、鉄道貨物輸送データは信用できる」と推奨した。中 国はGDPにモノが占める比率が5割程度と高い。そのモノの動きを代表する鉄道貨物は経済実態をかなり正確に反映する。
アベノミクス開始後、円は急速に下がり続けるのに並行して、中国の鉄道貨物輸送量が急激に落ち込む傾向が顕著だ。輸送量は今年初め以来、マイナス基調が続く。円安・人民元高と中国景気不調がなぜ共振するのか。
人 民元は12月5日までの2年間で円に対して50%以上も上昇した。人民元高は中国の輸出競争力を損なわせる。製造業の新規輸出受注指数はこの11月で前年 比2・1%減だ。日本企業は対中投資を削減し、他の生産をアジアへ移す動きも出ている。このまま、円安・人民元高が続けば、賃上げ率が年2ケタの中国に見 切りをつけて、日本にUターンする企業が続出しておかしくない情勢だ。
円安の動因はもちろん、アベノミクス第1の矢「異次元金融緩和」だ。日銀が資金を大量発行すると、ドルに対する円相場は下落する。中国は逆に人民元をドルに対して切り上げざるをえない。
中国当局は外国為替市場に介入して、人民元を小刻みながら切り上げることで、外部からの資本流入を促している。中国本土にカネを持ち込む勢力の多くは中国の党官僚、国有企業など特権層で、大半は利殖目的であって愛国的ではない。人 民元を切り下げると、こうした投機資金の多くが中国から逃避する。すると、不動産や株式相場は暴落する恐れがある。従って、習近平政権は汚職高官の不正蓄 財資産の対外持ち出しを取り締まると同時に、人民元相場を引き上げざるをえない。中国は自身の制度と内部事情のためにアベノミクス相場に対応できないの だ。
習政権が安倍政権との対話再開に動き出した理由の一端は、以上のような中国側の苦境にあるだろう。高度な技術を持つ日本企業を何とかつなぎ留めないことには、将来が危うい。
一方、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領はこのところ、円安の進行に神経をとがらせ ている。朴大統領は「(世界的に不透明感が強まっているため)株式市場を含む国内の資本市場ではボラティリティーが高まっており、輸出企業の利益が円安の ために悪化する恐れがある」(ロイター通信の10月6日電)と述べた。さらに、韓国・中央日報の日本語ウェブ版11月17日付によると、朴大統領はオース トラリアで16日に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合で、「自国の状況だけを考慮した先進国の経済および通貨政策は新興国にマイナスの波及効果を及ぼす」と語り、日本の円安政策を暗に批判した。
円安による打撃を端的に反映しているのが、日韓の対照的な株価動 向である。円安・ウォン高が電子・電機や自動車、鉄鋼など日本と競合関係にある韓国大手輸出企業の競争力を低下させるとの不安から、韓国株は低迷を続けて いる。それを尻目に日本株は順調に上昇気流に乗っている。
韓国も金融緩和でウォン安に誘導すればよいのだが、致命的な弱点がある。韓国への外国からの証券投資額はGDPの4割以上に達し、外資への依存度が高い。ウォン安は外資の韓国売りの引き金になりかねない。
経済政策は本来、自国のために行うのが国際的な鉄則だ。日本としては国内需要の拡大を通じて、中国や韓国の経済にも好影響を及ぼす結果を出すよう、粛々とアベノミクスを完遂するのみだ。
グラフを見れば分かるように円安と中国の鉄道輸送量はリンクしている
(私のコメント)
新年あけましておめでとうございます。今年こそ日本の景気が本格回復してほしいものですが、アベノミクスの成果 が表れるまでにはしばらくの年数がかかるだろう。1985年のプラザ合意以来30年も続いた円高によって、中国は改革開放政策で日本からの投資と技術移転 によって世界第二位の経済大国になった。
プラザ合意によって日本はアメリカから円高を飲まされましたが、それくらい日米通商摩擦が激しく て、アメリカから日本バッシングを受けるようになってしまった。アメリカ自身が日本の経済力に恐れをなしたからですが、アメリカでは日本との戦争を想定し た本まで出されるほどになった。
現在では中国がアメリカ経済を購買力平価で追い越したという話がありますが、こうなればアメリカも中国 バッシングを始めだす。その方法は日本の円安を容認して中国の輸出競争力を失わせることだ。日本はプラダ合意以来、円高を回避するために中国に工場を移転 して対米輸出する事で日米貿易摩擦を回避した。
韓国も同じことが言えますが、中国と全く同じ構造であり、日本からの技術移転によってサム スンやLGやヒュンダイなどの輸出企業が飛躍的に業績を伸ばして日本企業を凌駕するほどになった。日本の失われた20年は円高がもたらしたものであり、日 本国内の工場は中国に移転してしまって、日本の地方から工場が無くなってしまった。
日本に工場が無くなってしまったから、いくら円安に なっても輸出が伸びませんが、生産工場が無くなってしまったから輸出のしようがない。しかし中国では人件費の上昇と円安人民元高によって中国における生産 はコスト高になり、中国から移転しなければどうにもならない状況になって来ている。
昨日は原油価格の暴落について書きましたが、中国の経 済不振が石油の輸入を減少させているのだろう。中国の経済指標はあてになりませんが、鉄道輸送量などから逆算すれば経済規模が計算できる。それを見る限り 日本の円安と中国の経済規模とが比例していることが分かる。中国のバブル崩壊は日本からの資本が東南アジアなどへ移転していることを物語っている。
中 国の習近平首席が、安倍総理と会談しなければならなくなった背景にはこのような事実があり、日本の円安は中国経済にとっては致命傷になりかねないほどの影 響があったという事だ。韓国についても同じでありサムスンの変調は韓国経済そのものを破綻させかねなくなるだろう。問題はパククネ大統領が何処まで頑張れ るかだ。
このような経済の変化は、新冷戦体制が復活していることが影響しており、アメリカも中国の挑戦的な態度に対応しなければならなく なってきた。もちろん直接的な反撃はせずに、日本の円安を認める事で中国に圧力を掛けている。同じ事は昨日も書きましたが、ロシアに対してもサウジアラビ アを使って石油暴落を認めてロシアを締め上げている。
アメリカにとって一番重要な同盟国は日本でありサウジアラビアだ。アメリカは同盟国 を使ってロシアや中国をコントロールしているのであり、ロシアや中国にとっては、アメリカとサウジや日本を分断する事が戦略になる。アメリカにとってサウ ジや日本が離れればドルの基軸通貨体制は崩壊するだろう。つまりアメリカ帝国は崩壊する。