アメリカの大統領はドナルド・トランプからジョー・バイデンへ交代したが、世界戦略は変化していない。バラク・オバマ政権がロシアと中国に攻勢を仕掛けた結果、そのロシアと中国が同盟関係を結んだが、そのため、ロシアと中国を個別撃破することはできなくなっている。どちらかを攻撃すれば、中露2カ国と戦わざるをえない。
現在、アメリカはヨーロッパでロシアに圧力を加え、ペルシャ湾岸の産油国を親イスラエル国として統合しつつシリアへの攻勢を強め、そしてインド洋から太平洋にかけての軍事態勢を整備している。この海域で特に力を入れているのは中国が打ち出している「一帯一路」のうち「海のシルクロード」の東端にあたる南シナ海から東シナ海にかけての海域だ。
南シナ海を支配できれば中国の海運をコントロールでき、中東からのエネルギー資源輸送を断つこともできる。当然、中国も対抗手段を講じるので、軍事的な緊張は高まらざるをえない。中国がミャンマーでパイプラインを建設、パキスタンでも輸送ルートを建設しようとしている理由もそこにある。
東シナ海から南シナ海を押さえ込むため、日本列島から琉球諸島、そして台湾へ至る弧状に並ぶ島々はアメリカにとって重要な意味を持つ。明治政府は琉球を併合し、台湾へ派兵、李氏朝鮮の首都を守る江華島へ軍艦を派遣して挑発するが、当時と似たことをさせられようとしているのではないだろうか。今後、アメリカの戦争マシーンの中で自衛隊の役割は重要になり、この島々は中国と戦争が始まれば最前線になると見るべきだ。
安倍晋三は首相だった2015年6月、赤坂にある赤坂飯店で開かれた懇親会で「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたというが、その発言の背景はこうしたアメリカ側の戦略がある。
しかし、東アジアから東南アジアにかけての国々でアメリカの手先になりそうな国は多くない。戦力が足りないということだ。昨年11月17日に日本はオーストラリアと相互アクセス協定(RAA)で合意、その日から自衛隊はアメリカ、オーストラリア、インドの海軍と北アラビア海で艦隊演習を行っているが、オーストラリアは米英の属国であり、インドはイギリスの植民地だった国。そして日本は明治維新以来、一時期を除き、米英の影響下にある。その一時期とは、「親分」と言うべき巨大金融資本がホワイトハウスで実権をニューディール派に奪われた頃だ。当時、日本は「頭のない鶏」のような状態になっていた。
アメリカの戦略上、南シナ海は重要な海域だが、そこへヨーロッパの国やカナダが軍艦が姿を見せるようになった。フランスは潜水艦を、イギリスは空母を中心とする艦隊をそれぞれ派遣。カナダは1月、自国の戦艦に台湾海峡を航行させた。フランスやイギリスは自国の権益を拡大することが目的なのか、あるいは日本と同じようにアメリカの戦争マシーンに組み込まれたのかは不明だが、軍事的に連携していることは確かだ。
アメリカ、イギリス、フランスが参加しているNATOも活動範囲を拡大させている。2020年6月にイェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は「NATO2030」なるプロジェクトを始めると宣言した。NATOの活動範囲を太平洋へ広げ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、そして日本をメンバーにするというのだ。韓国に対するプレッシャーは強まるだろうが、すんなりといくとは限らない。
戦争が想定できる状況になると、仮想敵国を悪魔化するプロパガンダが激しくなる。日本は中国を担当させられる可能性が高い。そこで日本人の反中国感情を高めなければならず、事実と違う話が流される。天安門広場での出来事や香港における反中国運動については本ブログでも繰り返し書いてきたが、ここにきて盛んになっているのが新疆ウイグル自治区の話。この地域は一帯一路のうち、陸のシルクロードの要衝だ。
新疆ウイグル自治区には約1000万人のイスラム教徒が住んでいると言われているが、その中へアル・カイダ系武装集団の主力になっているサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団が入り込み、外部では反中国宣伝も展開されている。
2018年には約100万人のウイグル人が再教育キャンプへ送り込まれ、約200万人が再教育プログラムに参加させられていると「人種差別削減委員会」のゲイ・マクドーガルが発表したが、この委員会は人種差別撤廃条約に基づいて設置されたNGOであり、国連の機関ではない。マクドーガルが信頼できる情報源としているのはCHRD(中国人権防衛ネットワーク)だが、この団体の情報源は8名のウイグル人である。
CHRDと並ぶウイグル問題の情報源はキリスト教系カルトの信者であるエイドリアン・ゼンズ。「神の導き」でコミュニズムと戦っているというタイプの人間だ。1993年にアメリカ政府が設立した「コミュニズムの犠牲者記念基金」でシニア・フェローとして中国問題を研究していた。
この基金を創設したのはレフ・ドブリアンスキーとヤロスラフ・ステツコだが、ステツコはウクライナのナショナリストOUNの幹部。第2次世界大戦中にはナチスと関係があったほか、1946年にはイギリスの情報機関MI6のエージェントになり、ABN(反ボルシェビキ国家連合)の議長に就任している。この団体は1966年にAPACL(アジア人民反共連盟/後のアジア太平洋反共連盟)と合体、WACL(世界反共連盟)になった。APACLでは台湾の蒋介石、日本の笹川良一や岸信介、統一教会の文鮮明らが中心グループを形成していた。WACLはその後、WLFD(自由民主主義世界連盟)に改名されている。
ゼンズが「100万人説」の根拠にしているのは亡命ウイグル人組織がトルコを拠点にして運営している「イステクラルTV」。そこに登場するETIM(東トルキスタン・イスラム運動)のメンバーが情報源だが、このETIMはアメリカ政府や国連の安全保障理事会もアル・カイダ系だとしていた。この組織から推計1万8000名がシリアへ戦闘員として送り込まれている。
戦闘員の一部は新疆ウイグル自治区からカンボジアやインドネシアを経由、トルコの情報機関MITの手引きで戦闘員としてシリアへ入ったようだ。ETIMの政治フロントがTIP(トルキスタン・イスラム党)だ。
アメリカがウイグル問題で中国を攻撃し始めた頃、カザフスタン系中国人のサイラグル・ソウイトベイが売り出されたが、発言内容がクルクル変化する。
イギリスやアメリカの支配者にとって、日本は東アジアを略奪、ロシアを制圧するための拠点であり、日本人は傭兵である。日本列島と日本人が存在しなければ、彼らの世界制覇戦略は実現不可能だ。そのために作り出されたのが天皇制官僚システムというカルト体制だ。東アジアとの交易でなく侵略の道を選んだ勢力が現在でも日本を支配している。その計画を実行するため、明治以降、日本では「反東アジア洗脳」が徹底されてきた。学校やマスコミが洗脳機関として機能してきたが、最近ではインターネット上でのプロパガンダも盛んだ。