「トルコの窓から見た中東」 第23回
ヨーロッパ最大のコンサート会場であるマンチェスター・アリーナに向けて、テロ組織DEASH(ISIL)が攻撃を行いました。
15.06.2017 ~ 16.06.2017
私たちも今回、このテロ攻撃と地域への反映を分析します。
イギリスの、2万1000人を収容するヨーロッパ最大のコンサート会場であるマンチェスター・アリーナで、コンサート終了時に発生した爆弾攻撃により、22人が死亡し、59人が負傷しました。多くの子どもや若者が死亡しました。この攻撃の犯行声明を出したのは、テロ組織DEASHでした。類似の方法を使うこのテロリストらは、中東をはじめ、世界の各地で似たような攻撃を行い続けています。マンチェスターのこの事件の規模は深刻なものであり、それによりイギリスは非常対策を講じざるを得なくなりました。治安は現在のイギリスの優先的な議題となっています。同じ状況は多くのヨーロッパ諸国にも通じます。フランスのマクロン新大統領の最初の仕事の1つは、非常事態を秋まで延長することでした。
マンチェスターでの事件の情報共有をめぐり、イギリスとアメリカの間に深刻な危機が生まれました。イギリスは、捜査で入手した秘密情報をアメリカに伝えました。そのすぐに、この情報はアメリカのメディアで報じられました。このことは、イギリスで大きな怒りを買いました。イギリス政府は情報共有を続行しないことにすると発表しました。2つの緊密な同盟国がこの問題で違う見解を持ったことは、変わった進展です。
マンチェスターでの攻撃を、長年にわたりテロと戦っているトルコ共和国も非難しました。トルコ外務省は発表を行い、「イギリスのマンチェスターで発生し、多くの死者と負傷者が出たこのテロ攻撃を強く非難する。人間性を失った者や組織が行ったこのような残酷な攻撃の無慈悲さと痛みを、残念ながら熟知し感じているトルコとトルコ国民の名において、イギリスとイギリス国民に心からのお悔やみを申し上げる。テロの災厄に対し、この災厄を作り出すあらゆる環境の根源を四方から掘り起こすために、親しい友好国で同盟国であるイギリスとともに、決然たる効果的な戦いを、肩を並べて続けて行く。それが、マンチェスターでの残忍な攻撃に対する最良の共通の答えとなる。」と強調しました。トルコのレジェプ・ターイプ・エルドアン大統領も、「イギリスのマンチェスターで発生したテロ攻撃への強い非難を表明する。トルコはイギリス国家とイギリス国民の痛みを分かち合う。テロ組織との戦いで、トルコがどの国に対してもそうであるように、イギリスとともにいることを表明したい。」という発表を行いました。
テロ組織DEASHは、2014年から現在までイラクの支配地域の83パーセント、シリアの支配地域の56パーセントを失いました。武装戦闘員の人数も大きく減少しています。資金源と年間の収益は半分に落ちました。しかしテロ組織DEASHは、イラクのモスルで激しい抵抗を見せています。イラクの多くの都市を失ったにもかかわらず、イラクの様々な場所で爆弾攻撃を続けています。シリアのラッカでは、新たな市街戦に備えています。テロ組織DEASHの資金源とプロパガンダ能力の減少は、このテロ組織が完全に消滅することになるという意味にはなりません。
テロ組織DEASHの狙いは、ヨーロッパでの治安政策の強化とムスリムに対する偏見の高まりが原因で、自分が暮らしている社会で疎外感を感じている個人やグループです。テロ組織DEASHは、このグループからメンバーを集めようとしています。テロ攻撃が続くと予想されるのはそのためです。またテロ組織DEASHは、イラク、シリア、中東で公的権威が脆弱で、地域的な敵意が残っている場所で、新たな領域を開拓しようとしています。そのため、再びゲリラ戦法を取るようになる可能性があります。
シリアのラッカ、イラクのモスルがテロ組織DEASHから奪還されても、DEASHまたは別の名を持つ類似のテロ組織に属するテロリストが、世界各地で流血沙汰の攻撃を続けて行くでしょう。そのためにも、テロとの長期的な戦いにおける真の国際連帯と、正しい戦略が重要となってきます。DEASHのようなテロ組織の影響を根絶する方法は、その存在を許しているイデオロギーを打倒し、テロ支配の期待をくじく発想を奨励し、希望をもって将来を見据える政治的秩序を築くことです。
今日シリアでアメリカと同盟国はこの方法を誤った戦略を立てています。テロ組織DEASHに対し、テロ組織PKK、PYD、YPGの強化を促しています。1つのテロ組織に対し別のテロ組織を支援することは、火遊びです。この方法でDEASHが打倒されても、さらに過激なテロ組織が生まれるでしょう。そのため、DEASHを戦場だけではなく、発想の根本からも打ち負かすことができる正統な役者を支援する必要があります。この点で思い浮かぶ最も道理にかなった役者は、トルクメン人です。なぜならトルクメン人には、民主的で世俗的、モダンで欧米的な価値感と融合した、地域のすべての少数派グループや民族グループに対し敬意を持つという特徴があるからです。支援を受ければトルクメン人はどんな場でもDEASHとDEASHを鼓舞する根源を、打倒することができるでしょう。
アタテュルク大学国際関係学部研究員ジェミル・ドアチ・イペク氏の見解をお伝えしました。