Miyuki Museumブログ

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Miyuki Museumのひとりごと

ゼロの不思議/下

2012-06-03 | 読書・言の葉
(Sun)
(続き)
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strawberry基準次第、消えたり現れたり…

 前回、ゼロとは「ない」ことが「ある」ということを示す数だというお話をしました。
考えてみれば、世の中のすべての出来事には「始まり」があります。
何かが始まるということは、その前には、まだ始まって「ない」状況がなければ、
始まったなどとはいえません。
つまり、「ある」ことと、「ない」ことは別々のことではなく、
セットになっていて、一つのことの両局面なのです。

 さて、ここで、0の世界をもう少し探ってみましょう。
まず、距離と速さと時間の関係を思い出してください。
ある速さである時間走った時の距離は、皆さんもよくご存じのように
距離=速さ×時間という式で計算できます。
例えば、車を時速100キロの速さで3時間走らせた時の距離は
100キロ/時×3時間で答えは300キロです。
それでは、時速100キロで0時間走ったらどうでしょう。
0時間走るとは、走った時間がゼロ、つまり走っていないということですから、
当然、走った距離は0キロです。式で書けば、
100キロ/時×0時間=0キロ、0を掛ければ、0だということですね。

 次に、走った距離を走った時間で割れば、速さが計算できますね。
そこで、300キロの距離を0時間走った時の速さは、
300キロ÷0時間になりますが、0時間走ったということは、
走っていないということですから、走る速さは存在しません。
すなわち、300÷0という計算は成り立たず、
0で割ることはできないということです。

 いずれの場合も0時間とは、過ぎ去る時間がないという事実があること、
言い換えれば、時間そのものがないのではなく、「ない時間」が「ある」ということです。
だからこそ、距離と時間と速さの関係を示す計算式が意味を持つのです。
これが、0を掛ければなんでも0、どんな数でも0で割ることはできない、
ということの理由です。

 ところで、前回、エレベーターには0階がないというお話をしました。
それは、エレベーターの床が地上面と同じ高さにある時を基準にして、
そこを1番目の階、つまり1階としているからです。そうすると、
地階の床面の位置は基準面より下にあるので0階ではなく、
いきなり地下1階だとしか言いようがありません。
ただ、外国に行くと、日本での1階をグラウンドフロア(地上階)と呼び、
日本でいう2階を1階だとしている国もあります。

 そもそも階数は地上からの建物の高さの順番を決める数字ですから、
0・6階とか8・2階といった階は存在しません。いつも始まりは1番目の1階で、
その後は2階、3階と続いていき、小数点がつくような階はないのです。
世紀も同様で、1年からスタートして100年までが1世紀、
101年から2世紀ですから、21世紀の始まりは、
2000年からではなく2001年です。

 ところが、長さや速さは、ある基準を0と決めてしまえば、
0・62メートルとか時速81・7キロのように、整数以外の値を
とることができますから、最初の基準になる0は目に見えるものとして存在します。
消えたり現れたり……ゼロって本当に不思議な数ですね。


pencilnoteby佐治晴夫・鈴鹿短大学長、理学博士
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