東野作品は大好きで、何度も読み返すのだけれどこれはまだだった。友達との話に出たので、年末年始にかけて読み返してみた。
「私」がささやかながらも幸せを手にできそうになると、どこからか現れて不幸を運んでくる小学生からのつきあいの倉持。子供の頃から「殺人」という行為に興味のあった「私」は、彼への殺意がそれに至るためのあと一歩を模索する……
**以下、ネタバレあり**
財産家の家族、初恋の相手、堅実な仕事、ささやかだが幸せな結婚生活 そういったものを、倉持が全部壊していく、あるいは最初から不幸になるように仕組んでくる。
今や社会問題化している悪徳商法をメインに人を騙す倉持の巧みさがとても恐ろしくて、でもスリリングで面白くて一気に読み進めてしまう。
人はどれだけの憎しみがたまれば殺人ができるのか。それがテーマのようだが、むしろその要因となる、「私」が倉持にどうやって嵌められどんな不幸に陥っていくか、という過程の方が見せ場だったように思えた。
その先の、一線を越えて殺人をするのかしないのか、の迷いの辺りはさらっと終わっているように感じたので、「殺人の門」というには少し違和感が残ってしまった
むしろ、この倉持という男の素顔を見つける旅、と言った方がしっくりくるような気がする。倉持が一体どうして自分にそういうことをするのか。そういうことを仕掛けてきながらも本当に親友と思ってくれているような節。倉持の歪んだ思い
読後に爽やかさが残る、とはとても言えないけど、面白くて止まらなくなるのは間違いない。結果を知っていても、後半などはすごい加速度で読み終わりました(^_^;)