筋書きのないドラマ、筋書きのあるドラマ

ロッテ戦を中心に、野球を好き勝手な視点から見るブログ

東野圭吾「殺人の門」

2009-01-15 18:18:28 | 小説

東野作品は大好きで、何度も読み返すのだけれどこれはまだだった。友達との話に出たので、年末年始にかけて読み返してみた。

私」がささやかながらも幸せを手にできそうになると、どこからか現れて不幸を運んでくる小学生からのつきあいの倉持。子供の頃から「殺人」という行為に興味のあった「私」は、彼への殺意がそれに至るためのあと一歩を模索する……

**以下、ネタバレあり**

財産家の家族、初恋の相手、堅実な仕事、ささやかだが幸せな結婚生活 そういったものを、倉持が全部壊していく、あるいは最初から不幸になるように仕組んでくる。

今や社会問題化している悪徳商法をメインに人を騙す倉持の巧みさがとても恐ろしくて、でもスリリングで面白くて一気に読み進めてしまう。

人はどれだけの憎しみがたまれば殺人ができるのか。それがテーマのようだが、むしろその要因となる、「私」が倉持にどうやって嵌められどんな不幸に陥っていくか、という過程の方が見せ場だったように思えた。

その先の、一線を越えて殺人をするのかしないのか、の迷いの辺りはさらっと終わっているように感じたので、「殺人の門」というには少し違和感が残ってしまった

むしろ、この倉持という男の素顔を見つける旅、と言った方がしっくりくるような気がする。倉持が一体どうして自分にそういうことをするのか。そういうことを仕掛けてきながらも本当に親友と思ってくれているような節。倉持の歪んだ思い

読後に爽やかさが残る、とはとても言えないけど、面白くて止まらなくなるのは間違いない。結果を知っていても、後半などはすごい加速度で読み終わりました(^_^;)


途中から加速の「ゴールデンスランバー」(伊坂幸太郎)

2008-12-15 14:29:36 | 小説

2009年版「このミステリーがすごい」(宝島社)第1位であるこの作品。図書館8か月待ちで、忘れた頃にやって来た。更に期限近くに他の本の貸し借りをお願いした際、「240人待ちなので期限内で返して下さいね」とクギを刺されたほどの大人気。

首相がラジコン爆弾で暗殺された。ごく普通の市民である青柳が、警察なのか国家なのか、とてつもなく大きな力で犯人に仕立て上げられていく。アメリカのJ・F・ケネディ暗殺犯に仕立て上げられ殺されたオズワルドのごとく「死人に口なし」とならないために、青柳は逃亡を余儀なくされる

伊坂幸太郎さんの作品は今回初めて読んだので、実は結構つまずいてしまった。ファンの方なら、もう「作家と読者の意思疎通」というものができていてあっさりと進めてしまうのかな、と思われるところにいちいち引っかかってしまった。

まずは章立て。というか段落なのかな。何度も同じ「青柳雅春」というタイトルが続いたりするのに「何のこっちゃ?」と違和感でもたついてしまった。それは、現在と過去が行ったり来たりして書かれているからなのだが、その目印のマークに気付くまで、入り組むカットバックに混乱して筋がわからなくなったりした

読解力がないと言えばそれまでですが

そして、結構難しい漢字が多いんです…… 最初の方でフリガナが振ってあるのだけれど、しばらく間が空いてしまった後に続きを読むと、そんなことは忘れているのでフリガナなしのそれが読めなかったり、意味がわからなかったり。長閑、諦観、僥倖、暢気、魘される……なんとな~く意味を想像し、わかっているようなフリをして、読めなくても強引に進んでいった。

はい、辞書を引けばいいんですが ちなみに「のどか、ていかん、ぎょうこう、のんき、うなされる」です。

その上、伏線が張り巡らされているので、前半は全体像が全くつかめなくて乗っていけず、なっかなか進まなかった。すぐに眠くなってしまって、もう途中でやめてしまおうと何度思ったか。

それが、後半へ来て急に加速した 様々なピースがカチャンカチャンと音を立ててはまり始め、最後も「そうか~」と、さりげなさの中に満足のいく終わり方。いや、頑張って読み続けて良かったです

伊坂さんとは、こういう書き方の作家さんなんだろうか。他にも、会話のシーンでいくつものセリフが全て同じ長さ、といったのも特徴なのか。

この本で満足したので、また何かトライして確かめてみようと思います。まあ、図書館ではまたかなり待つことは間違いないけれど、気長に待ちましょうか


東野圭吾「魔球」

2008-07-24 11:18:21 | 小説

最新作「流星の絆」がドラマ化される。熱烈東野ファンのくせに未読なので、今までで一番のお気に入りの紹介を。

「魔球」。

題名から想像がつく通り、野球がバックグラウンドの小説である。
ただし、高校野球。時代は昭和39年。

東野圭吾さんであるからして、殺人が起こる。孤高の天才ピッチャーの信頼するキャッチャーが殺される。そして次にそのピッチャーが。そして更にはその弟が狙われる。その裏には悲しい真相があった……。

野球とストーリーの絶妙な絡ませ方。お手本としてもファンとしても私のバイブルである。

これぞ、ドラマから野球に興味を持てるような、そして野球ファンもくぎづけのドラマになりうる双方向の小説だと思う(ただ、実際ドラマ化されたものを見ると、原作ファンとしては心中複雑なことが多いが)。

ちなみに、これを読んだときの私のイメージキャストは、主人公は堂本剛さん、弟が山田孝之さんだった。けど、相当前だったので年齢的に今ではちょっと無理がありますね……。