今、フィリピンではホーリーウィーク。キリストの復活を祝う祝祭週間で、ほとんど全ての学校、会社、お店が休みとなる。日本人が経営するお店はオープンしているから、そこに日本人観光客、駐在員やその家族が集中して混雑する。
一昨日の昼食は、近くのハンバーガーショップ”サンゴ”へ混雑を避けるため時間をズラして遅く行った。腰の低いオーナーがいて、引越しのことなどいろいろな話をした。そこで、お店に立ち寄った老人を紹介された。
老人はサンゴの常連客で、管理人と同じ浜松市在住だった。
オーナーによればその老人は、5年程前にフィリピン人女性と日本で結婚し貯金を全てつぎ込んで近くの店舗で日本食レストランを開業し、移住する予定だったという。
ところが、日本食レストラン開業どころか結婚相手のフィリピン人女性に貯金の全てを持ち逃げされて無一文になり、途方に暮れた。このようなフィリピン人女性による結婚サギ被害の話は本当に多い。
老人は仕方なく工場に勤めて、お金が貯まるとフィリピンへ来ては行方を暗ませたフィリピン人女性を手を尽くして探しているそうだ。オーナーは老人に「いくら探しても見つけ出すのは不可能だからヤメたほうがいい」と忠告しても聞く耳はない。
老人特有のしつこいグチをフィリピンへ来る度聞かされてオーナーもウンザリしているようだった。サンゴを後にして近くのサウナへ向かった。
サウナに入っているときに、その老人の風貌を思い出した、「同じ浜松市在住、どこかで見たことがある、さて、何処だっただろう・・・」
そうそう、そうだった、いつもよく行く太陽カレーさんで会ったんだ。
偶然に会うことも場所がフィリピンとなると希少価値だ。欣喜雀躍して太陽カレーさんへ国際電話をしてしまった。それから、現地在住のJetさんへ電話して、Jetさんの友達と晩メシを一緒に食べることになった。そして、ブルゴスという街へ向かった。
ブルゴスはマカティ市北部にあるマニラのソドムとゴモラ、欲望と快楽の歓楽街だ。ホーリーウィークというのにGOGO-Barはオープンしている。
ゴーゴーバーの詳細は避ける、というか2回目なのでよく知らない。Jetさん曰く、「ブルゴスは白人の老人にとって夢のような街」、なるほどアメリカやオーストラリアの爺さんが多い。そこでJetさんの友達と合流して少し時間をつぶした。
日も沈んだころに移動して日本食レストランへ行った。そこで晩メシを食べ終わったあとは、日本人相手のカラオケ・バーへ向かう。
ホーリーウィークなので夜の街は静まり返っていた。しかし、日本人相手のカラオケ・バーだけは何処もかしこも日本人のオジサンたちでいっぱいだった。
何軒か回り、夜も更けて最後のカラオケ・バーへ行った。そのお店で暫くすると、どこかで見たことのある老人が若いフィリピン人女性のホステスとカラオケを熱唱しているではないか、そう、昼間会った結婚サギで無一文になった老人だった。
まったく懲りない爺さんだ。けれどもよく考えてみれば、その爺さんは人生の最後でフィリピン人女性によって全てを失ったけれど、ホーリーウィークの聖なる夜だけはもう一度甘美な夢を見たかったかも知れない。聖なる夜なら神様も許してくれるだろう。