「民主党マニュフェストと小沢一郎」(EJ第3142号)
鳩山政権は「5原則」と「5策」を掲げて、政権を発足させています。そのうちの「5原則」を以下に示します。
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【原則1】:官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ治家主導の政治へ
【原則2】:政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ
【原則3】:各省の縦割りの省益から、官邸主導の国益へ
【原則4】:タテ型の利権社会から、ヨコ型の絆の社会へ
【原則5】:中央集権から、地域主権へ
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この5原則を見ると、その基本的部分は小沢一郎氏が自著『日本改造計画』(講談社刊)で主張していることを実現するプランになっています。といっても、小沢元代表の時代に作ったものであるから、自分たちはあずかりしらないといっている反小沢系の民主党議員がいるようですが、とんでもない話です。
マニュフェストは、当時の民主党の正規の意思決定機関を経て決定されたものであり、すべての民主党議員のマニュフェストであることは当然のことです。それを鳩山、菅両政権において、ロクに努力せず、実現不能のこととしてマニュフェストを葬り去ろうとしていることは国民に対する裏切りです。
この鳩山政権時のマニュフェストの骨格部分が小沢一郎氏がかねてから主張している理念と同じであるかどうかを以下に実証していきます。「5策」のうち「第1策」を以下に示します。
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第1策 政府に大臣、副大臣、政務官(以上、政務三役)、大臣補佐官などの国会議員約100人を配置し、政務三役を中心 に政治主導で政策を立案、調整、決定する。
──鳩山政権構想マニュフェスト「5策」より
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この「第1策」は、ほぼそのまま『日本改造計画』で述べられています。なお、現在の副大臣、政務官などの役職についても、小沢氏が自民党の小渕政権との連立(自自連立)のさい、提案し決められたものです。小沢氏は、英国の議会を例に引きながら、日本の議会のあり方を次のように説いています。
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日本ではどういう形にするか。省庁ごとに2~3人の政務次官と4~6人の政務審議官ポストをつくり、与党議員を割り振るのがよい。その結果、閣僚を含めて与党議員のうち150~160人程度が政府に入る。政府ポストを与えられた与党議員は、各省庁の局ごとの分担なり、テーマごとの分担なりを決めて政策を勉強し、政策立案に参画する。省庁の政策方針を決定するときでも、政治家チームが、官僚の助言と協力を得ながら、最終的な責任を持つという形でリードする。これが本当の意味で「民」主体の政策決定であり民主主義の根幹をなすものだ。
──小沢一郎著『日本改造計画』/講談社
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小沢氏は1993年にこの提案をしており、それが民主党のマニュフェストのベースになっていることは明らかです。しかし、当の民主党の議員──反小沢系だけでなく、小沢系の議員を含めて、どれほどの議員がこの本を読んでいるのでしょうか。
政治について発言する機会の多い政治評論家やコメンテーターそれに政治学者や改革派官僚と呼ばれる人たちの小沢氏に関するコメントを聞いたり見たりすると、どうやら彼らもこの本を読まずに発言しているとしか思われない人も多いのです。
つまり、小沢一郎像を完全に取り違えているのです。かつて田中角栄や金丸信が、数を頼んで政治の主導権を取り、不正な金を動かし、陰で政権を操ったようにきっと小沢もやっている──こう信じて疑わないようです。彼らは、それまで小沢氏の著作や政治的実績を十分に調べもせず、風評によって小沢氏を貶めているのです。しかし、メディアの中枢は小沢氏の力をよく知っていてその政治力を潰そうとしていることは確かです。
さて、マニュフェストの「第1策」についてですが、十分なかたちで実現されているかといえば、それは「ノー」です。なぜ、実現されないのでしょうか。それは、民主党議員の力不足、経験不足といわざるを得ないのです。
しかし、今までに一度も政権与党についたこともなく、政治的経験も少ないのですから、うまくいかないのは当然のことです。何しろ相手は明治維新以来続いている官僚機構なのです。これを崩すには相当強い政治的リーダーが必要なのです。民主党はそのリーダーをあろうことか、座敷牢に入れているのです。これは政治的謀略としか、いいようもないことです。
それではどうすればよかったのでしょうか。
鳩山内閣は「5原則」の2で、「政府と与党の一体化」を掲げています。しかし、これが十分にできていないのです。既に述べたことですが、小沢氏は次のようにいっているのです。
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与党の重要ポストを内閣に取り込むことだが、日本では法案にいて内閣が責任を十分負えるよう、与党側の議会運営の最高責任者、たとえば幹事長を閣僚にする。それによって、内閣と与党が頂点で一つになり、責任を持って政治を運営できる。
──小沢一郎著の前掲書より
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幹事長を閣僚にする──このように小沢氏はいうのです。もし鳩山政権が小沢幹事長を閣僚にしていたら、きっとまだ鳩山政権は続いていたと思われます。しかし、当時の鳩山氏には小沢氏に権力が集中することを恐れて、幹事長にするのでさえ、迷うテイタラクだったのです。
─── [日本の政治の現況/68]
小沢氏が幹事長が引き受けたいきさつ/平野貞夫氏
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2009年8月30日に歴史的な選挙結果が出たとき、鳩山氏の腹の中は、小沢氏に幹事長をお願いすることで固まっていた。ところが党内では、小沢氏の幹事長就任は好ましくないので、岡田幹事長を留任させるべきだという動きが起こった。鳩山氏は、すでに9月1日には小沢氏に会いたいとの意向を示していたが、その意向が意図的に小沢氏側に伝えられず、9月3日午後になつて鳩山氏自らがプレスに対して「今日小沢さんと会う」と伝え、ようやく会談が実現した。鳩山氏は岡田幹事長案に賛成しなかったので、鳩山氏の周辺は、「政権運営、政策協議に関わらない」という条件で小沢氏の幹事長就任を受け入れた。鳩山氏は、小沢氏に「選挙と国会運営をお願いします」という形で幹事長就任を要請した。小沢氏はこれを受け入れた。 これが事実経過だが、果たしてこのような考えで行う議院内閣制度というものがあるのだろうか。しかも、当初国会道営までも政府側でやるとの意見があったらしい。三権分立についての理解が欠如していると言わざるを得ない。
──平野貞夫著
『日本一新/私たちの国が危ない!』/鹿砦社刊
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(以上、Electronic Journalより)
民主党に綱領はない。従って何をやりたいのかわからない。ではまた。