フィリピンパブ 歴史
2004年、アメリカの国務省による人身売買報告書の中で、日本が人身売買容認国として名指しされた。数十万人いた興行ビザでの若い外国人女性の日本入国を「性的搾取による人身売買であり、被害者である外国人女性を全く保護していない」と批判した。日本の芸者文化のような、女性が酒を酌み歌や踊りでお客をもてなすキャバクラのスタイルは、欧米では確立しないビジネスモデルであり、ダンサーやホステスといえば売春婦が当たり前の欧米では理解できず誤解を受けたと思われる。しかし当時、日本の外交政策の最優先戦略であった安全保障理事会入りの目標があった為、日本政府はすぐに興行ビザの撤廃を決めた。
2006年、予定通り興行ビザの発給は10%程度に激減し、その結果、日本各地にあったフィリピンパブのほとんどは閉店してしまった。
2007年現在のフィリピンパブでは、ほとんどが興行ビザでの就労ではなく、アルバイト契約で働いている。日本人との結婚や育児で滞在許可がある者や、親族訪問ビザで来日しているフィリピン人である。尚、観光ビザはフィリピン人に対してはとても厳しく取得が難しいが、2週間程度の観光であればビザ発給は特に問題はない。親族訪問ビザも親子関係のみで兄弟ではほとんど発給されない。
(以上、フィリピンパブ 歴史 残りをウィキペディアより一部引用)
前エントリーではフィリピンパブが思いもよらないほど巨大なマーケットであること指摘した。しかし、”驕れる平家は久しからず”飛ぶ鳥を落とす勢いだったフィリピンパブは米国によってアッケない終焉をむかえる。今回はそれを掘り下げて考えてみる。
ハイ、ではウィキ記事冒頭部分から執筆者のピン中オヤジにケチをつけよう。日本の外務省にあたる米国国務省は毎年世界各国の人身売買(売春)被害をABCD4つの水準に分けて該当国に警告している。2004年以前から日本とフィリピンは該当国だった。メディアで話題になったのは国連人権委員会による人身売買監視国家に指定されたことだった。
人身売買被害について、1998年にアロヨ大統領と森山元法務大臣の会談で、当時の入国者数約7万人を半減することで既に日比政府間で合意していた。ところが、無為無策だったため減るどころか増加の一途を辿っていた。だからウィキに「安全保障理事会入りの目標があったため興行ビザの撤廃を決めた」とあるが、実際は米国が在日米国大使館に日比両国の政府高官を呼びつけて入国者数を10%まで削減しろと恫喝し、青ざめた日比両国が慌てて興行ビザの撤廃を決定したことが本当のところだ。日比両国は大恥を掻いた。
また、ウィキでは記されていないが、この年はフィリピン国軍イラク派兵の撤兵問題があった。このイラク撤兵事件が「テロに屈した」と米国の逆鱗に触れ、その制裁措置としてフィリピンパブで働くフィリピン人女性の入国規制をした、というのが大方の見解であった。それは史実として正しい。当時、撤兵の英断を下したアロヨ大統領は英雄気取りで国民の支持を回復した。
しかしながら、腑に落ちないのはイラクに駐留していたフィリピン国軍は僅か20数名、それが撤兵したところでイラクの治安に影響するとは到底考えられない。所謂「見せしめ制裁」としても、何故それが、フィリピン人女性の日本入国規制なのか、論理的整合性に欠けるではないか。入国規制問題が起きた当時のネットでは、特にフィリピン人女性を妻のもつピン中オヤジが大騒ぎしただけで、米国制裁による入国規制の目的と方法に疑問を呈する輩はほぼ皆無だった。
米国から突然、「フィリピンパブは人身売買の巣窟で、そこで働くフィリピン人女性は性的被害に遭っている、おまえのカーちゃんデベソ」、そう烙印を押されれば、当然、「ふざけるな」となるワケだが、在日米国大使館に対して抗議行動を起こした日本男児たるピン中オヤジはいなかった。実際に米国の勧告通りだったから仕方のないことではあるが、少しでもピン中オヤジの気概を見たかったものだ。
さて、米国による制裁の目的に話題を戻せば、当時さらに疑問に思ったことは、制裁方法の用意周到さ、だった。米国は在米人権保護団体を通じて国連人権委員会に対して日比政府に人身売買改善の勧告をしたあと、すぐさま米本国で働くフィリピン人すべてのビザをチェックし、稼ぎ頭であるフィリピン人看護師の雇用を控えるよう各州の医療団体に通告した。イラク撤兵によるフィリピンに対する一連の制裁措置はあたかも事前に計画されていたかのように思えた。
当時、フィリピン人女性の入国規制問題をいち早く取り上げ、審査する入国管理局の内実をかなり踏み込んで書いていたブログがあった。人身売買について暴力団の資金源になることが最大の問題だと指摘していた。それはその通りで、米国国務省による人身売買国家の指定も貧困国に巣食うマフィアの存在を標的にしている。ただ、そのブログで残念だったのは管理人がフィリピンパブ業界関連の人間らしく終始、入国管理局の官僚及び官僚体制を批判することに留まっていたことだった。
フィリピンのイラク撤兵による米国の用意周到なる制裁措置。フィリピンパブの狙い撃ち。いったい何が目的だったのだろうか。そこで、エントリー基軸通貨で示した米国の意志、「ドル防衛(信用の維持)とドル市場の拡大」を今一度思い出したい。自ずと答が見えてくる。何しろフィリピンパブは年間約5000億円強の巨大なマーケットで、暴力団の資金源となれば、ブラックマーケットを生み、ドル信用を失墜させる。
フィリピン人女性のほとんどはフィリピンパブで得たお金をドア・トゥ・ドアをいう公的金融機関を通さない方法で本国へ送金する。巨額な資金を送金した地下銀行が摘発されたこともあった。フィリピンはメキシコに次いで世界第二位の出稼ぎ国家である。フィリピンパブを標的にした米国の真の狙いはブラックマーケットを生み出すフィリピン国家の金融体質に制裁を科してドルを防衛したかったのではないか、そのように推論し結論付けたがどうであろう。今回はちょっと熱いエントリーになった。