太った中年

日本男児たるもの

愚かな菅直人

2010-07-30 | weblog

田中秀征×田崎史郎 「愚かな菅直人、不気味な小沢――それにしても幼稚な民主党よ」

この大政局をズバリ読み切る

田崎 今回の参院選で民主党が突きつけられた、改選議席54に対し獲得議席44という結果は大惨敗といっていい数字です。

逆に自民党は13議席増やして51議席を獲得しましたが、これは自民党が勝ったというより、民主党が一方的に負けた選挙といえます。まさに昨年夏の衆院総選挙と正反対の結果です。

田中 自民党の勝利は民主党への鉄槌ですよ。自民党の支持団体が息を吹き返したりしたわけではないと思いますが、1人区の地方を中心に、自民党には人材が多く、そこでの圧勝が今回の結果につながっている。

田崎 1人区の全29選挙区で、自民党は21勝8敗。前回'07年は民主系の23勝6敗ですから、ここでも正反対の結果が出ました。

やり方がズルすぎる

田中 原因は民主党が危機感を持てば持つほど、労組を中心とした組織固めをやり、労組側も民主党にすがりつこうと必死になったことへの反発でしょう。

その最たるものが、自民党やみんなの党の公務員制度改革や人員削減方針を恐れた公務員組合です。

県庁や市役所で役人たちがこぞって民主党支持に動けば、民間の組織が反発するのは当然です。

政権政党というのは国民全体を代表する党ですから、その中であまりに特定の団体が力を誇示すると、他の団体の票が逃げてしまう。民主党にはそれがわかっていなかった。

田崎 そういわれると確かに頷ける点がありますね。

私が思うに、今回の敗北は菅政権の責任ではなく、民主党政権そのものの責任でしょう。菅さんの消費税発言が敗因になったという分析も多くありますが、消費税増税を打ち出した直後は賛否が拮抗した感じでしたから。

ただその後、年収によっては全額還付する案などを口にしたり、今度は逆に引っ込めたりしたことで、「中身があやふやなまま話しているな」と受け取られた。そういう政権の体質が見透かされたのだと思います。

田中 いや、民主党そのものの責任といいますが、実は民主党のそうした状況主義的体質を象徴的に持っているのが菅さんなんです。菅さんは選挙と政局を、政略だけで乗り切ろうとした。そのズルさを有権者は見抜いているんですよ。

鳩山政権の末期、菅さんは次の首相を睨んで2番手で順番待ちをしていた。そういう姿勢も有権者はちゃんと見ている。首相という立場は、本人の意識していないようなところまでさらけ出してしまうポストで、政治のプロではない人ほど澄んだ目で見るから、菅首相がどういう人物か見えてしまう。

だいたい、消費税増税のせいで負けたといいますが、議席を増やした自民党だって、同じことをいっているんです。

田崎 確かにそうです。

田中 田崎さんがおっしゃるように、菅さんが消費税発言をした直後に強い反発が出なかったのは事実です。しかしそれは突然のことに有権者が戸惑ってしまったからで、菅さんの説明を聞くにしたがって腹が立ってきた。はっきりいって、有権者の多くは増税の必要性を理解していますよ。

私だってそうだ。でも「増税の前にやることがあるだろう」というのが有権者の気持ちです。有権者が反発したのは消費税を持ち出したことよりも、それを口にした菅さんに対する不信感があったからです。

田崎 菅さんがなぜ消費税増税を打ち出したのかを忖度すると、財務省の意を汲んだということもあるでしょうが、対自民党の争点をなくすという意図があったんではないでしょうか。

あちらがいうなら、こっちもいっておこうという。また増税というインパクトで政治とカネ、普天間問題を吹っ飛ばそうという思惑もあった。その感覚は、ある種のゲーム感覚です。

つまり本質的に、「いま消費税が最大の課題だ」という覚悟を決めて打ち出しているのではなく、対自民、対世論とのゲームをする感覚で打ち出した論点だった。そう思うんですね。

田中 私は菅さんが首相になるときに大きな心配をしていたんです。それは彼には世論が全く読めないということです。

最近、ある新聞が報じていましたが、鳩山政権時に菅さんは、鳩山さんに消費税増税を勧めていたそうです。「消費税を上げれば参院選で勝てる」とね。おそらく本気でそう思っていたのでしょう。

だから首相になった直後に支持率をさらに引き上げるため、進んで消費税増税に踏み込んだ。別に勇気ある行動でも何でもなく、計算ずくの政略です。でも、それが全く外れて、世論が読めないという、首相としての資質に関わる問題まで露呈してしまった。

菅さんは首相を辞任すべきだ

田崎 ただ、消費税発言についての結果はどうあれ、計算高さは、権力者には必要な資質ではないですか。

田中 田崎さんのようなジャーナリズムの側にいる人がそういうのならいいんですが、彼は自らそういって自分の場当たり主義を正当化するところがある。

その一方で、正当性を訴えたいなら当然、開くべき予算委員会も党首討論もやらずに、国会を閉じてしまった。私はその一点で彼のことが許せなくなりました。

予算委員会や党首討論は、いかに野党から叩かれ吊るし上げられようとも、公開の場での議論ですから、愚直に自分の信念を貫くべきだし、それが正しければ首相の支持率は上がるものです。それを逃げ出してしまった。これは許し難い。

田崎 予算委員会を開かずに高支持率のまま参院選に逃げ込むというのは、参院民主党が主導した作戦です。樽床国対委員長は予算委員会を開く方針でしたが、参院民主党が反発して開けなかった。もちろん菅さんに、参院側の作戦を止めなかったという責任もあるのでしょうが。

田中 首相がやりたいといえば開けるんですよ。

私は菅さんが首相になった直後は期待していたんです。財務省に取り込まれているのではないかと報じられている最中にも、「そう見えても猫をかぶってチャンスをうかがっているだけだ」と受け止めていた。ところが消費税増税の理由にギリシャの問題を持ち出した。

ギリシャのようになればIMF(国際通貨基金)が乗り込んできてあれこれ指示されるよと。しかしこの発言は本末転倒です。彼がこの国の最高権力者なのだから、IMFがやりそうなことを先手を打って自分の手でやればいい。それをしないで、「だから消費税増税が必要だ」と訴えるのはお門違いです。全くもって不見識だ。

田崎 私も、選挙戦の最後に菅さんが「安定か混乱か」といいだしたことには少しガッカリしました。有権者は「民主党政権なら安定するのか」と疑問を抱いているのに、そこで安定か混乱かと突きつけるのは筋が違うなと思いますね。

田中 そんなことばかりいっているから、「ねじれ」が生じる結果になった。だから、解散すべきなんです。ねじれを生じさせたのは菅さんの責任なんだから。

田崎 もう一つ選挙中に気になったのは、菅さんの街頭演説を取材した人の話を聞いてみると、「確かに人は集まってくるんだけれど熱気はなかった」ということです。腕組みをして聞いている人が多くて、まるで品定めしている感じだと。

田中 聴衆がどういう姿勢で街頭演説を聞いているかっていうのは選挙の大事なポイントです。私自身の経験でも、聴衆の支持を集めているときは、後ろのほうの人はつま先立ちをして聞いている。菅さんの演説は聴衆受けしないという定評がありますが、特に今回は昨年の政権交代のときの熱気はなかったでしょうね。

田崎 あの演説の際の「皆さん、どうですか」という口調もあまり評判が良くないですね。なにか拍手を聴衆に強要しているようで。

ともかく、大方の予想を超えた惨敗で菅さんがかなり苦しい立場に追い込まれたのは間違いありません。

田中 はっきりいいますが、菅さんは首相を辞任しなければなりません。今回の選挙結果は実質的に「菅不信任」です。菅さん自身は、開票がはじまってそれほど時間が経たないうちから続投表明しましたが、それじゃあ今回の参院選は何のための選挙だったのか。結論が決まっているなら選挙をする意味がないじゃないですか。

国政選挙というのは、一人ひとりの国会議員を選ぶ機会であると同時に、政権に対する評価を下すチャンスでもあるんです。そこで菅さんは国民からはっきりとノーを突きつけられたわけです。

田崎 私はちょっと意見が違います。「民主党代表」の立場だけなら辞めるべきだと思いますが、菅さんは就任してから1ヵ月あまりしか経っていない首相です。この段階で簡単に首相を替えてしまっていいのか、もう少し様子を見たいという気持ちがどうしても働いてしまう。

首相がこれほど短期間で交代するのは、国際的に見て信用されないし、党内に菅さんに替わる人がいるのかという問題もある。参院選敗北の責任は誰かが取らなければならないでしょうが、せめて半年くらいは菅政権の様子を見守りたい。

田中 私は今は民主党の在庫一掃過程だと思うんです。確かに首相がコロコロ替わるのは国際的な評判を下げることになるでしょう。しかし、今の日本が抱えている問題は政治全般の劣化ではなく、あくまでも「首相の劣化」です。民主党の若い世代には優秀な人材もいる。

だから「国際的な体面を考えて、首相を替えちゃいけない」というだけで政権を延命させる必要は全くないと思う。どんどんページをめくればいい。

田崎 そういって次々に首相を交代させると、玉ねぎの皮むきみたいに、めくってもめくっても芯が出てこないという可能性はないですか。

田中 芯がないんだったら、その事実をみんな早く知ったほうがいいんじゃないですか。

田崎 私は現実的に見て、まずは民主党が体制を作り直す、あるいは菅さん本人に心を入れ替えてもらって当座を凌いでいくしかないだろうと考えています。

田中 いや、やっぱり解散総選挙して民意を問うのが正しい。菅さんは決断できないと思いますけど。

枝野は間違っている

田崎 今後、小沢さんがどう動くかにも注目しなければなりません。小沢さん周辺の人たちと話をすると、「2度目の検察審査会の判断がどうなるか」を非常に気にしています。検審がなければ小沢さんや小沢グループも動きようがあるのでしょうが、いまは動きにくい状況でしょう。

それに対して、現執行部が枝野幹事長や、落選した千葉法相を留任させるのは、人事をいじりたくないからです。人事を行えば、小沢さんの周辺の人たちが、幹事長に小沢さんに近い人を就けるように要求しだすことが目に見えている。

小沢さんに近い人たちの怒りは凄まじいから、いまは沸き立っているビンに、とりあえず蓋をしたままやり過ごそうとしている。

田中 菅政権は小沢"不人気"に甘えすぎなんですよ。小沢さんが「公約は守らないといけない」と発言したら、枝野幹事長が「大衆迎合だ」と批判したが、この発言はとんでもなく不見識です。だって、小沢さんの言っていることのほうが正当なんだから。

要するに枝野さんは、「小沢の言うことにはどんな内容でも、世論は反発する」と思い込んでいる。それが間違っているんです。

一般の有権者はもっと冷静。「政治とカネで追及されている小沢さんの発言でも、正しいものは正しい」と思っています。

田崎 ただ、この政権の一つの柱が「脱小沢」であることは間違いない。だから菅政権発足直後の支持率V字回復もあったし、党内的な結束も固まった。ということは、脱小沢をここで放棄するわけにはいかないし、それを堅持していくためには人事で小沢さんサイドと妥協することはできない。

もっとも、ビンに蓋をしたままだと、そのうちボンと破裂する可能性もある。菅さんは党内の様子をよくよく確かめながら、最低限、代表選を戦って勝たないと党内をまとめることさえできなくなるでしょうね。

田中 小沢さんには検審の問題が残っているけれど、それと小沢さんの主張の当否は関係ない。「4年間は消費税を上げない」という公約を反故にしようとしたことで、菅さんはみすみす小沢さんに反執行部の旗印を与えてしまった。これは後々響いてくるでしょう。

田崎 党内問題は9月の代表選がピークになりますが、ここでも小沢さんの存在が鍵になります。菅さんがなんとか党内をまとめるためには小沢カードを利用するしかない。仙谷、枝野、岡田、前原といった人たちがまとまっていられるのは、反小沢という名目があるからです。

逆にいえば、代表選までに小沢さんが民主党を離脱するようなことになれば、菅さんを支える人たちはバラバラになる可能性が高いでしょう。

田中 そもそも、菅、仙谷、枝野の3人にしてからが、信頼関係ではなく、利害関係で結ばれているだけなんだから。

どう考えても、辞めるしかない

田崎 党内運営も前途多難ですが、国会運営も混迷を極めるでしょう。衆参のねじれは深刻です。みんなの党は公務員制度改革を丸呑みするなら、組んでもいいようなことをほのめかしていましたが、民主党の支持基盤である公務員組合の反発もあって、難しい。

公明党も、自民党と選挙協力した手前、すぐに民主党と組むわけにはいかないでしょう。となると何とか案件ごとの協力を取りつけていくしかないが、これはかなり苦しい。

田中 私はみんなの党の渡辺さんには、修正して呑めるような法案なら、呑めばいいといっています。そのかわり、法案を呑むときには、「何年までに3兆円の無駄を削減する」というような覚え書きを交わす。それで民主党ができない無駄削減の公約などを、どんどん実現させればいい。

田崎 それはいい。自民党もあれだけ勝ったら、そう簡単に大連立もできないでしょうから。ただ、案件ごとのパーシャル連合では不安定な政権運営になるのは間違いないですね。

田中 少数与党として国会で揉まれて、本当の政権担当能力をつけるいい機会ですよ。しかし、消費税のように、官僚に操られているようではもう菅政権に存続する意味はない。もっとも本人は今でも取り込まれているとは思っていないでしょうが。

田崎 実際、消費税でも年収で区切って還付する案などは、財務省と打ち合わせて口にしたものではなかったようですね。第一、財務省とすり合わせしていたのなら、区切りの年収額も詰めた話になっていたはずでしょうし。

田中 悪いことに、"政治主導"で、財務官僚が喜びそうな話を先回りして言ったというのが真相でしょう。ただ菅さんが歩こうとしている道は、財務省の目指す方向と一緒。そしてそれは菅さんが目指す方向とは正反対の「弱い経済、弱い財政、弱い社会保障」に繋がる道です。

私は菅政権ができた直後から、経済の基本方針も打ち出すべきだと発言してきましたが、彼はそれもせず、「景気回復よりも財政再建」の財務官僚と同じ発想です。

菅さんが財務官僚同様に「まず増税ありき」の姿勢を貫こうとするなら、景気回復の努力や、税金の無駄遣いをなくしているフリをする一方で、着々と増税路線を敷く。そしてそれは景気に大打撃を与えますから、経済や社会保障を弱める方向にしか作用しません。

田崎 菅さんがどのような国会運営をしていくのかは、まずは7月末に召集される臨時国会での参議院議長人事が最初の鍵になります。通常なら第1党から新議長を選出することになりますが、'93年の衆院選後に自民党が第1党だったにもかかわらず、非自民の多数勢力が社会党の土井たか子さんを議長にした例がある。

今度も野党が多数派を形成して、自民党から議長や議院運営委員長が出るようなことになれば、菅政権の国会運営は立ち行かなくなります。

そう考えてみると、菅政権に打開策が見えないのは事実です。菅さんの前に立ちはだかる党内の壁と国会の壁は非常に高い。これをどうやってよじ登るのかで力量が問われますね。

田中 繰り返しますが、一番いいのは解散総選挙。菅さんに対する最後の忠告ですが、政権にしがみつくことだけはやめたほうがいい。菅さんは焦り出すと政略的な発想がどんどん前面に出てくるタイプだし、きっと人気挽回の勝負を仕掛けようと考えるはずです。でも世論が見えないからその試みは必ず失敗します。

田崎 解散総選挙になれば、党内は一気に菅下ろしになります。そして今の流れのまま解散総選挙に打って出れば、おそらく民主党は政権を失うでしょう。

田中 だからもう菅さんは辞めるしかない。鳩山さんは次の選挙には出馬しないと宣言していますから、議員を辞めるときに菅さんと小沢さんを一緒に道連れにできれば、民主党はガラッと変わるんでしょうけどね。

(以上、現代ビジネスより転載)


民主政権の末路

2010-07-26 | weblog

血みどろ党内抗争へ 「菅退陣」小沢の考え

まるで去年の夏を見ているかのようだった。違うのは、惨敗したのが自民党ではなく民主党だということ。「死に体」に陥った菅政権を見て、一度は「死んだ」はずのあの男が再び動き出す。真夏の政変、生き残るのは誰か。

この歴史的大敗は、民主党のみならず、政界全体のメルトダウンのきっかけとなるだろう。

「44議席」という、信じがたい惨敗を目の当たりにし、民主党の議員たちは例外なく動揺し、ある者は言葉を失い、ある者は菅直人首相ら党幹部に対しキレていた。

「これほどの惨敗を喫しておきながら、誰も責任を取らないという理屈があるか。せっかく民主党の支持率がV字回復していたのに、消費税の話なんて持ち出せば、負けるのは当たり前だ。菅総理は、何を考えてあんなことを口走ったのか。枝野幸男幹事長は、なぜ責任を取ろうとしないのか」(民主党・斎藤勁代議士)

菅首相は参院選前、目標を現有議席と同数の「54議席」としていた。しかし、7月11日の参院選の結果は、その目標を10議席も下回る悪夢のような大敗。これで民主党は、国会で1本の法案も通すことができなくなった。

社民党と決別して衆院での勢力が3分の2に満たなくなっている以上、参院で法案が否決されれば、それで終わり。ただでさえ難航が予想される予算案の審議すら覚束なくなり、政権は完全に「死に体」に陥ったのである。

民主党内では、菅・枝野執行部に対する怨嗟の声が渦巻く。火に油を注いでいるのは、いちはやく続投を表明した菅首相の態度だ。投開票日の11日、すでに惨敗が明らかになりつつあった中、首相は選挙区の長野にいた北沢俊美防衛相に電話をかけ、こう明言した。

「私は首相を辞めませんから」

この日、首相は自宅のある東京・武蔵野市で投票を済ませ、伸子夫人らと鉄板焼きで昼食を摂った後は、公邸に籠った。そこで仙谷由人官房長官や側近議員らと選挙情勢の検討を行ったが、結論は出ていた。

「どのような結果が出ようと、現体制を維持する」というものだ。

実は、選挙の最高責任者である枝野幸男幹事長は、事前に自党の大苦戦が予想されたことから、「自分がやはり責任を取ることになるのか」と、思い悩んでいた。

「投開票日が近づくにつれ、口数がめっきり少なくなっていました。表情は暗く、最悪の事態に陥った場合は、クビを差し出さざるを得なくなると覚悟をしていたようでした」(民主党若手議員)

だが、辞任すべきかどうかで苦悩する枝野氏を押し止めたのは、菅首相と仙谷官房長官だった。

枝野  40議席台で惨敗するようだと、私や安住(淳)選対委員長が辞めなければ、党内の反対派を抑えられなくなるでしょう。

仙谷  辞任は早計だ。幹事長が辞めれば、結局は菅総理の責任ということになる。ドミノ倒しが起きる。

ただし、選挙で大敗を喫すれば、枝野氏を蛇蝎の如く憎悪している、党内の小沢一派の追及が激化する。小沢グループは、ボスが失脚して以来、現執行部が失策を犯すのを手ぐすね引いて待ち構えているのだ。枝野幹事長で惨敗となれば、世紀の無能幹事長として、血祭りに上げられるハメに陥るだろう。

そこで菅首相らは、選挙前から敗戦を見越し、「予防線」を張ることにした。その象徴的なものが、選挙前日に発表された「民主党声明」である。

〈 民主党がまだ、国民の)ご期待に十分応えられていないこと、そして、政治とカネ、普天間基地問題、税制改革の道筋で、混乱と不信を招いたことを率直にお詫びします 〉

政治とカネ、普天間の問題は、鳩山由紀夫前首相と小沢一郎前幹事長の負の遺産だ。つまり、「参院選敗北は前任者たちに大きな責任がある」と仄めかし、責任転嫁を図ったわけだ。

「菅は権力欲、保身だけの男」

それだけではない。開票が始まり敗色が濃厚になった11日には、菅首相側近が、公然と執行部の批判を始めた小沢一派の動きを封印しようと、「3点セットの小沢氏への反論ペーパー」を用意している。

「その内容は、選挙の敗因について(1)小沢・鳩山の政治とカネの問題があった。(2)2人区で2人の候補を擁立した小沢氏の戦略はことごとく失敗した。(3)選挙期間中にもかかわらず、小沢氏が消費税問題等で菅首相を批判したことが混乱を招いた・・・というもの。もし、鳩山・小沢体制のままで参院選に突入していたら、30議席台も考えられた。だから44議席なら、十分に健闘したというのです」(民主党中堅代議士)

開票が進む中、午後9時前に民主党の開票センターが置かれたホテルニューオータニに到着した菅首相は、そのまま3時間以上も姿を現さなかった。他党の党首・代表らは午後10時過ぎからテレビ出演していたが、首相がようやく姿を現したのは午前0時30分。

「ここでも、枝野幹事長は弱気になっていて、辞任するかどうかという話になったそうですが、やはり菅首相と仙谷長官が『早まるな』と、枝野氏を説得したといいます」(同)

こうして首相はいかなる批判を浴びようと「強行突破」することを決意。未明に始まった会見では、

「選挙結果は真摯に受け止めるが、あらためてスタートラインに立った気持ちで頑張りたい」

として、公式の場であらためて「続投」を表明したのだった。

しかし、この会見が、選挙で苦杯を舐めさせられた民主党議員ら、中でも、特に苦戦を強いられた小沢系議員の感情を、より逆なでしたのは言うまでもない。

「すいませんとか、申し訳ないとか言うならまだしも、『新しいスタート』とか、枝野氏を含めて全員続投だとか、落選した千葉景子法相まで続投とか、これはもう血迷っているとしか言いようがない。われわれを舐めるにもほどがあります。会見には、首相の本性が出ていたと思う。『権力を手放したくない』という感情しか見えない。

あの人は、国民のことを思って・・・などと考えてはいない。ひたすら、レベルの低い個人の権力欲、保身だけが露になっている。見ていて非常に不快でした」(小沢グループ若手議員)

会見終了後、首相は報道陣の問いには完黙したまま、公邸へと帰った。同じく、ふだんは多弁かつ能弁で知られる枝野氏も無言。どういうわけか、いつもは着けないメガネをかけ、記者らと視線を合わせないようにして専用車に乗り込むと、開票センターを後にした。

翌12日、枝野氏は定例記者会見で、「辞めたくても辞められない」という、自身が置かれた苦しい立場について、生気を失った表情を浮かべながら、綿々とこう話している。

「(惨敗の責任について)私個人としては、さまざまな思いがある。また、いろいろなところから意見が上がっていることも承知している。しかしその上で、総理から『しっかりと改革を実らせるため、職務を全うしてほしい』という強い指示があった。個人的な思いは、個人的な思いだ」

民主党の「黄門様」こと、渡部恒三元衆院副議長は、菅・仙谷・枝野トリオを、こう庇っている。

「勝負には、絶対というものはない。むしろ、負けたときこそ一致協力していかなければならない。ここで、誰の責任だ、誰が辞めるんだと言い出せば、党が潰れてしまう。党内抗争なんか始めれば、ますます国民に笑われてしまう。いまこそ一致結束が必要なんだ」

だが、6月の鳩山「抱きつき心中事件」以来生じた、党内の亀裂は大きく深い。死に体に陥った菅政権を見て、あざ笑っているのが小沢系のグループだ。小沢グループ中堅の代議士の一人はこう話す。

「やっぱり弁護士上がりのヤツ(仙谷・枝野両氏)はダメだな。選挙結果より、法律のほうが重いと思っているんだろう。法律に違反してさえいなければ、民意を無視して居座ろうが何をしようが構わないと考えている。市民派上がり(菅首相のこと)も、自らが獲った位を自分で捨て去るようなことはしない。しがみつきたいんだよ、地位に」

別の小沢派若手議員も、菅政権の命運をこう「予言」してみせる

「菅首相はピンチに陥り、少ない味方を集めて密集隊形を作り、敵陣を一点突破しようというんでしょう。でも、(300人のスパルタ軍が100万のペルシャ軍に抵抗した姿を描く)『300(スリーハンドレッド)』という映画と同じですよ。最後は全滅するんです(笑)」

行方をくらました小沢

その去就が注目される小沢一郎前幹事長は、選挙の直前から、姿をくらませていた。それ以前は「一兵卒」と称して精力的に全国各地を回り、自分の息がかかった候補の選挙応援に勤しんできた。ところが7月8日頃から消息をプッツリと絶ち、結局、投開票日もどこに小沢氏がいるのか、ほとんど誰も分からなかった。

「ある新聞社は、小沢氏をつかまえるために記者とハイヤーを動員し、東京・世田谷区の自宅や赤坂の個人事務所、さらには『持病の心臓系疾患に関係があるのでは』と、主治医がいる病院まで張り込みをしましたが、結局、どこにいるのかわからずじまいでした」(全国紙政治部記者)

前出の渡部氏は、「大事なときは姿を現さないのが小沢君」と言う。実際、小沢氏が行方をくらますのは、後に「何事か」を起こす際の前兆であることが多い。'93年7月、小沢氏は周囲に「オレは潜る」と言って姿を消し、4日後に再び姿を現した時には、細川政権ができあがっていた。

小沢氏周辺の一人はこう話している。

「小沢氏は側近に、『12日から政局だ』と漏らしていました。菅政権が参院選で大惨敗するのを見越し、準備を始めろということです。小沢系のグループは、これまで4つに分かれていました(一新会、一新会倶楽部、参院小沢系、旧自由党系)。

これを参院選後、1つにまとめる予定です。6月の代表選挙ではグループがバラバラだったため、候補の一本化がうまくいきませんでしたが、今度は違います。9月の代表選挙では、小沢グループが一丸となって代表の座を争うのです」

雲隠れを続ける小沢氏は何を狙っているのか。小沢氏のお膝元である岩手県の県政関係者は、こんなエピソードを本誌に語った。

「5月末に小沢さんの有力後援者の一人だった花巻市の後援会幹部が亡くなったのですが、選挙直前の7月初め、多忙の中、小沢さんはわざわざ、線香を上げに地元を訪れました。小沢さんは冠婚葬祭に関しては非常に律儀な人ですが、今回はある種の『決意』を秘めているように見えました」

果たして小沢氏の決意とは―。岩手の小沢氏後援会関係者はこう語った。

「小沢さんは昨年、西松建設問題で民主党代表の座を降りざるを得なくなったとき、周囲にボソリと、『やっぱりオレは、総理になれない運命なのかなあ』と呟いたそうです。小沢さんにとって、菅首相の劣勢が明白な9月の民主党代表選が、自身にとって最後のチャンスだと思っている。側近には『オレが出る』と話していると聞いています」

選挙戦の序盤、小沢氏は側近の輿石東参院議員会長の応援にかこつけ、山梨県にある師匠・金丸信元自民党副総裁の墓参りもした。68歳の小沢氏が、「総理」に向けたラストチャンスを前に、並々ならぬ執念を燃やしているのは、もはや明らかだと言ってもいい。

実際、関係者を困惑させた「行方不明」に関しても、こんな情報が流れている。

「実は小沢氏が、大阪に潜伏していたというのです。目的は太いパイプを持つ関西創価学会幹部と面談し、選挙後の公明党との連携を模索するためと見られています。さらに小沢氏は水面下で、自民党の長老・森喜朗元首相や古賀誠元幹事長とも接触を図っています。その狙いが、自身を中心にした政界再編にあることは明白です」(全国紙政治部デスク)

菅からの電話を無視した小沢

こうした小沢氏の動向に、菅首相や仙谷官房長官ら反小沢派は、神経を尖らせている。起死回生のためには、国民新党以外の政党とも何が何でも連立を組んで、参院での与党過半数を回復し、求心力を取り戻すしかない。そのため仙谷氏や枝野氏は、小沢氏の向こうをはって、大躍進したみんなの党との交渉に望みを託している。

しかし、その前途は極めて厳しい。みんなの党の江田憲司幹事長はこう語る。

「民主党との連立の可能性は、ゼロです。みんなの党は、小さな政府で大きなサービスを目指す政党です。役人の組織は徹底してスリム化し、民間の活力を高め、経済を成長させていく。しかし民主党は、理念なきバラマキと大企業の国営化という、・超大きな政府・路線です。われわれとは違いすぎて、連立はあり得ません」

菅首相サイドには、みんなの党の渡辺喜美代表が「アジェンダ(政策課題)が一致するならば、協力を考えてもいい」と発言していることから、「行革担当相などの大臣ポストを明け渡し、渡辺氏を一本釣りする」という楽観的構想もある。だが、民主党・菅政権を批判して10議席を獲得している以上、みんなの党が、おいそれと菅政権になびくとは考えにくい。

しかも、もしみんなの党との連立に成功したとしても、負けすぎた菅政権は、参院の過半数にまだ1議席足りない。視野に入って来るのは、参院で19議席を保持する公明党。ところが、その選択肢もうまくいく保証がほぼゼロだ。

「仙谷氏と枝野氏がいる限り、学会が相手にしない。彼らは池田大作名誉会長の証人喚問を要求したこともあり、公明党は彼らと話はできない。今回の参院選でも、公明党は民主党を過半数割れに追い込むことを最大目標として動いた。公明党が民主党と組むとするなら、その際の窓口は、やはり小沢氏しかいないのです」(公明党中堅議員)

菅首相にとっては、まさしく手詰まり。そこで「現実主義者」として知られる首相は、驚くべき行動に出ようとした。いまや仇敵となっている小沢氏に対し、接触を求めたというのだ。

「選挙戦の終盤で敗北の色が濃くなってきた頃から、菅首相は小沢氏に対し、『敵対するのは本意ではない』と釈明しようとし、何度も連絡を取ろうとしました。ただ小沢氏が、電話を無視しました。

いちばん驚いたのは反小沢急先鋒の仙谷氏で、『選挙で(自民党を支持して)時計の針を戻すようなことはやめよう、と国民に訴えているのだから、総理が針を戻す(小沢支配の復活)のはやめてほしい』と、慌てて説得したのです」(首相官邸関係者)

あまりに調子が良すぎる菅首相のラブコールを無視している小沢氏は、周囲にこう語っているという。

「菅は、放っておけば自滅する。代表選までに、政権支持率は20%台に落ち込む。その時が勝負だ」

進むも退くもままならなくなった菅首相と反小沢グループ、そして逆襲の機を虎視眈々と窺っている小沢氏とそのシンパ・・・。激化する民主党の内紛劇の中で、次第に「次のシナリオ」が見えてきた。

まず、一か八かの強行突破を図る菅首相らだが、7月末までに、政権運営が行き詰まる可能性が高い。

「過半数割れの菅政権が国会を運営するためには野党に頭を下げて協力を求めるしかないが、昨年来、民主党は衆院での数を頼みに強行採決を繰り返して来たため、野党はその復讐を果たす気満々でいる。

加えて、自民党が改選第一党となったため、参院議長の座を要求し、すでに中曽根弘文元外相を候補にしている。議長が野党になったら国会の開閉もままならなくなり、完全に政権は死に体となる」(自民党幹部)

国会もまともに開けないとなれば、政権維持はどうあがいても不可能。民主党内では、「代表選の前倒し」論が高まると予想される。

その時こそが、菅首相を担ぐ反小沢派と小沢氏との決戦の時だ。

「実は鳩山前首相が、自分のグループの議員が菅政権で干されていることもあり、最近小沢氏に対して、道連れ辞任に追い込んだことを謝罪しました。小沢氏サイドは『最初からそう出ればよかった』と謝罪を受け入れ、いまや小沢グループと鳩山グループは同盟関係です。両グループを合わせると、約400人の民主党議員の中で200人近い勢力になる」(民主党ベテラン代議士)

結局、衆院解散しかない

野党時代に自分が自民党攻撃の口実に使っていた「直近の民意」によって否定された菅首相は、まともに戦えば、小沢氏本人か、同氏が推す候補を代表選で打ち破ることは難しい。しかも、仮に何とか代表選で小沢氏の攻勢を凌ぐことができても、「第二段の構え」が待っている。

「'93年、宮沢喜一政権に対して野党から内閣不信任案が出された際、当時まだ自民党にいた小沢氏の一派が賛成に回って不信任案が可決され、宮沢内閣は崩壊した。同じことが、民主党政権でも起きる可能性がある。小沢氏は菅首相を退陣させて衆院解散に追い込み、当時と同様、民主党を脱党して一挙に政界再編に持ち込む。

荒業が得意な小沢氏は、みんなの党の渡辺代表を総理に担ぐことも想定しています。一大臣なら民主党への合流はあり得ない『みんな』でも、総理の座と重量閣僚のポストを複数用意されたりすれば、何が起きるか分かりません」(前出・ベテラン代議士)

最後の大勝負を仕掛ける小沢氏の前に、まったく打つ手はないかに見える菅首相。もはや、座して死を待つしかない―のか。

菅首相周辺は、「唯一、手段があるとすれば首相自らの意思で、衆院を解散してしまうことです」と語る。

「'07年の参院選で惨敗した安倍政権がジリ貧になり、結局崩壊した事例の二の舞にはなりたくない、という意思が首相にはある。だったら、参院選で掲げた財政再建を大義名分に、近いうちに解散に打って出る。

その時には、自民党内の改革派にも同調者を募る。小沢氏が自民党の旧保守系と手を結ぶつもりでいるなら、反小沢派は、リベラル保守の自民党勢力と協力し、逆に先手を打って、政界再編を仕掛けるのです」

首相が自らの意思で解散を打った場合、カネと公認権を持つ首相(党代表)のほうが圧倒的に有利であることは、'05年の郵政選挙で小泉純一郎元首相が証明した。小沢系の議員は、昨年の衆院選で当選したばかりの新人など、若手が多い。党本部から排斥された上で、再び勝ち残れる議員は数えるほどしかいない。

「今回の参院選で、落選した候補は小沢氏肝煎りの候補ばかり。その点で小沢氏は菅首相に激怒していますが、逆に言えば、小沢氏はその分、勢力を削がれて計画に狂いが生じた。仙谷氏は、それが付け込む隙になると考えているから、枝野幹事長の辞任を容易に認めないのです」(民主党幹部)

最後の大勝負を目前にして、小沢氏には検察審査会という、大きな壁もある。7月末もしくは9月に出ると目される検察審査会の結論が、起訴議決となれば、小沢氏は強制起訴となる。

小沢氏側近は、「たとえ裁判になっても判決には10年かかる。その間、政治活動は続ける」と、小沢氏の「黒幕化」をあえて示唆するが、現実的には、師匠の田中角栄元首相や金丸氏のように、政治家としては死んだも同然だ。

まさしく、生きるか死ぬか。日本政治の行方を決める血みどろの抗争の幕が、切って落とされた―。

(以上、現代ビジネスより転載)


ワルン96

2010-07-20 | weblog

 

 

連休はインターネットのない友人H宅で過ごした。

Hは中年サーファーでバリ島渡航歴50回以上をほこるバリ・フリークス。

でもってHに連れられて何度かバリ島へ行った。

話題に上ったのはバリ島で一番旨いと思われるレストラン、ワルン96。

窯焼きピザが有名で夕方になれば行列ができるほどの人気店。

で、ある日、ワルン96の朝食セットを食べたくなって食べてみたら旨かった。

というたわいない話で盛り上がった。

Warung96


菅おろし

2010-07-17 | weblog

仙谷、海江田、原口との会談からみえた「続投」「退陣」「解散」3つのシナリオ

菅おろしはおきるのか

参院選挙直後の一週間に、海江田万里衆院財務金融委員長(7月12日夜)、仙谷由人官房長官(14日夕方)、原口一博総務相(15日夜)、そして鈴木宗男新党大地代表(16日夜)それぞれから長時間、話を聞く機会を得た。

海江田氏は民主党内の鳩山(由紀夫前首相)グループに属し、小沢一郎前幹事長とも太いパイプを持つ有数の税制・財政の専門家である。9月の党代表選挙後に予定される執行部人事で次期幹事長の有力候補と目されている。

仙谷官房長官は、言うまでもなく、菅直人政権の新成長戦略、普天間基地問題、2011年度予算概算要求・編成、そして衆参院ねじれとなった国会対策まで一手に担う官邸の司令塔である。

原口総務相は、菅政権にあって菅・仙谷・枝野(幸男幹事長)の新トロイカ体制から一定の距離を置き、かつ代表選挙で小沢氏が菅首相の対抗馬として担ぐのではないかと見られる次世代リーダーのひとりだ。

また、鈴木氏は民主党外にあって最も小沢氏に近く、今後の出方に注目が集まる同氏の肉声を唯一聞ける人物である。

要は、各氏ともに参院選挙後政局のキーパーソンということだ。それぞれオフレコ懇談であったので、ここで各人の発言を紹介できない。しかし、懇談内容を踏まえての今後の私的見通しの披見であれば、許してくれるだろう。

今後の政局展開は、概ね三つのケースに要約できる。

(1) 菅直人首相は、7月30日召集の臨時国会で参院の議席確定と同時に選出される参院議長、それに伴う民主党参院執行部人事で小沢サイドに大幅譲歩し、何とか代表選挙に臨み、対立候補が誰であれ再選をめざす。即ち、政権維持である。

(2) 参院選挙大敗によって党内の求心力が低下したうえ、責任論がくすぶり続ける中で秋のねじれ国会での予算審議などで政権運営の見通しが立たず、代表選挙出馬を見送らざるを得なくなる。つまり、菅退陣である。

(3) 「脱小沢」でスタートした菅首相はさらに"小沢切り"を決断し、代表選挙直前に「政界再編」を前面に押し立てて衆院解散・総選挙に踏み切る。リスクはあるが、「小沢チルドレン」の過半は落戦の憂き目に遭うなど大幅な議席減となっても衆院過半数を確保できれば、「直近の民意」を得たとして菅イニシアチブによる自民党との政策パーシャル連合を目指す――。

それぞれのシナリオにはもう少し細かなバリエーションがあるが、荒っぽく言えば、政権維持、菅退陣、解散・総選挙の三つである。

「三木おろし」の再現なるか

現時点では、菅首相が代表選挙に出馬できない事態になる可能性は少なくないと見ている。

もちろん、権力の座にいる者を引きずり降ろすには大変なエネルギーが必要だ。ましてや代表選挙で新代表を選ぶということは、3ヵ月余でわが国の首相が代わるということである。

5年4ヵ月続いた小泉純一郎政権以降、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、そして菅直人といった歴代の日本の最高指導者が年替わりメニューよろしく今秋にも代わることが、どれほどわが国の国益を損ねることになるか。

しかし政治権力闘争というものは、一般人では窺い知れぬほど熾烈なものである。

ロッキード事件が発覚・田中角栄元首相が東京地検闘争部によって逮捕された1976年当時が想起される。

自民党の主流派の田中派、福田派、大平派が結成した挙党協があらゆる手立てを講じて行った"三木降ろし"も最後は不発に終わり、同年12月の任期満了総選挙で自民党は結党後初めて衆院過半数割れになり、三木首相・総裁は退陣に追い込まれた。

三木後継の福田赳夫首相は後に大平正芳幹事長との「40日間抗争」を繰り広げたのだが、福田政権誕生直後に大平幹事長は、自民党離党・結成の新自由クラブとの連携を実現、国会運営を凌いだ。このとき初めて、大平氏が当時の社会党を含め野党に対しパーシャル(部分)連合を提唱したのである。

歴史は繰り返すというが、当時の"三木降ろし"が現在の"菅降ろし"になるのか。だが小沢氏ひとりでは、当時の挙党協にはなり得まい。

(以上、現代ビジネスより転載)


「白旗」掲げた菅政権

2010-07-14 | weblog

官僚に取り込まれ「白旗」掲げた菅政権

どうなる?「埋蔵金」発掘の事業仕分け

2010年7月11日の参院選で民主党が与党過半数割れの大敗を喫し、政局は一気に流動化し始めた。霞が関の「埋蔵金」発掘に欠かせない、特別会計にメスを入れる事業仕分けの先行きにも不透明感が強まりそうだ。逆風の下、東京選挙区で過去最多得票を記録した蓮舫行政刷新相は早速、「事業仕分けは第1弾、第2弾に続き、特別会計にもしっかり入っていきたい」と息巻いたが、果たしてどうなるだろうか。

2010年4月、民主党は特会の検証チームを設けて本格的な検討に乗り出したものの、当初予定していた参院選前の取りまとめを断念した。さらにはマニフェスト(政権公約)の内容も2009年の衆院選からは大きく後退している。

政府・民主党は事業仕分けを通じて改革姿勢をアピールしているが、菅直人首相が消費税増税に突き進むのと反比例するかのように、特会改革への意欲は急速に萎んでいる。

「官僚を敵に回す」議論を避け、消費税増税に突き進む菅政権

「事業仕分けなどの手法を通じて、全ての特別会計を見直し、不要な特別会計は廃止します」――。今回の参院選マニフェストでは、特会改革に関する記述は「原則廃止」とした当初案から大幅に後退。2009年の衆院選で打ち出した「ゼロベースで見直す」との表現も姿を消してしまった。

しかもマニフェストをよく読んでみると、特会の見直しは「国家戦略室の設置」や「社会保障費2200億円削減の撤廃」などと並んで、何とこれまでの取り組みで「実現したこと」に分類されているのだ。

ところが、菅首相は財務相当時、2010年1月の国会答弁で特会改革について「時間がなく十分でなかった」と率直に認めている。その後も具体的な成果など何もないのに、菅政権は霞が関を敵に回す面倒な議論を闇に葬り、消費税増税路線を突っ走っているとしか思えない。

特会の見直しに向けて民主党が重い腰を上げたのは、2010年3月下旬のこと。2010年度予算の成立を受け、党の財務金融・決算行政監視合同議員政策研究会で全ての特会を対象に、各省庁の担当課長らを呼んでヒアリングを集中的に実施した。

これを踏まえて4月上旬には、廃止が決まっている登記特会を除く17特会を対象にそれぞれ検証チームを設置し、その必要性や「埋蔵金」の有無について本格的な検討に入った。その目標は当然、参院選マニフェストに特会改革をどのように書き込むかに絞られていた。

5年前の「直嶋プラン」、特会を3つに減らし国債33兆円圧縮

民主党には実は、野党時代の2005年末にまとめた「直嶋プラン」と呼ばれる特会改革案がある。

塩川正十郎財務相(当時)の「離れでスキ焼き」発言がきっかけとなり、特会改革に乗り出した小泉政権に対抗しようと、民主党の決算行政監視調査会が取りまとめたものだ。調査会の会長が直嶋正行氏(現経済産業相)だったため、党内でこう名付けられて改革案のたたき台となった。

直嶋プランは、当時31あった特会のうち29を統廃合した上で、最終的に国債整理基金、外国為替資金、交付税及び譲与税配付金の3つにまで減らすというドラスティックな内容だった。

例えば、道路整備など公共事業関係の特会は全廃して一般会計に統合。このほか、労働保険や厚生年金など社会保険関係も全て廃止して一般会計に統合するか、新設する公法人に移管するとしていた。

その上で、直嶋プランは各特会が貯め込んでいた積立金を取り崩し、あるいは剰余金を活用して国債残高の33兆円圧縮を打ち出した。一方、小泉政権の改革案は特会を17に削減して国債残高の20兆円圧縮を目指していたから、財政健全化への貢献を考えれば計画上は民主党案の方が大胆だった。

財政投融資、労働保険、年金、エネルギーが一転して「存続」に

マニフェスト2010への提言(特別会計改革の部分)

特別会計制度は国の財政状況をわかりにくくし、また各省庁の「隠れた財布」となって、巨額のムダづかいの温床になっています。このムダづかいをとめるために、特別会計をゼロベースで見直します。

・財政民主主義の観点から財政の一覧性・一元化をはかり国の収支を明確にします。

・特別会計は原則廃止し、存続する事業は「事業仕分け」の手法で一般会計、地方、民間など仕分を行います。

・特別会計の見直しで生ずる「埋蔵金」は一般会計に統合し、国の借金返済にあてるなど財政健全化に努めます。

出所:民主党

全体的に抽象的な内容ではあるが、特会を「原則廃止」と明記した点が最大のポイントだ。同時に非公式ながら、特会の新たな統廃合案もまとめている。

民主党の特会統廃合案(カッコ内は直嶋プラン)

地震再保険廃止(廃止)
財政投融資存続(廃止)
外国為替資金検討中(存続)
国債整理基金存続(存続)
社会資本整備事業廃止(廃止)
自動車安全廃止(廃止)
労働保険存続(廃止)
年金存続(廃止)
国有林野事業廃止(廃止)
農業共済再保険廃止(廃止)
森林保険廃止(廃止)
漁船再保険及び漁業共済保険検討中(廃止)
食料安定供給検討中(廃止)
貿易再保険廃止(廃止)
特許廃止(廃止)
エネルギー対策存続(廃止)
交付税及び譲与税配付金検討中(存続)

出所:民主党

「検討中」として結論が出ていない特会が4つある。また、直嶋プランでは「廃止」とされた財政投融資、労働保険、年金、エネルギーの4つが一転して「存続」に変更されたのが目を引く。エネルギー以外の3つは制度の見直しが今後行われるとして、その結果が出るまで存廃決定を先送りするという。一方、エネルギー特会に関しては明確な方針転換である。

「原則廃止」をうたいながら、少なくとも5つの特会を存続させるのは民主党の自己矛盾としか言いようがない。もし「例外的に」存続させるのなら、その理由を誰にでも分かるように説明してもらいたい。

国会で正反対の主張を展開、周囲を「あ然」とさせた民主党議員

「これは一般財源で使われたら困るおカネだ。問題だと思わないのか」

2010年5月22日に開かれた衆院決算行政監視委員会の第2分科会。民主党の吉田おさむ氏は、これまでの党の主張とは正反対の論陣を張り、周囲を「あ然」とさせた。エネルギー特会の検証チームで、吉田氏は主査として議論を取りまとめる立場にある。

エネルギー特会の財源である電源開発促進税と石油石炭税は、いったん一般会計の収入となった後、必要額が特会に繰り入れられる仕組み。特会に繰り入れない金額は一般会計に残ったまま、使途に定めのない一般財源となる。

何れの税も本来はエネルギー関連の特定財源だから、1円たりとも一般財源として活用するのはけしからん――。吉田氏の主張はそういうことだ。

しかし、特会で不要なおカネがあれば「埋蔵金」として可能な限り一般会計で活用するのが、これまでの民主党の主張だったはず。自民党や公明党、社民党、国民新党などもこうした考え方でほぼ一致している。

一般会計を「母屋でおかゆ」、特会を「離れでスキ焼き」に例えた塩川氏に倣えば、吉田氏の主張はこうなる。母屋がどんなに苦しかろうと構わない、離れではスキ焼きを食べ続けるべきだ――

もっともエネルギー特会については、直嶋正行経産相もその5日前に開かれた別の分科会で「無駄な資金が特会に積み上がるという基本的な構造は解消できた」と答弁している。改革の成果をアピールし、存続を容認する考えを示したわけだ。

自らの「直嶋プラン」では「廃止」と明記していたのだから、大幅に後退したと言わざるを得ない。経産省事務方の御進講が功を奏したのだろう。担当者のほくそ笑む姿が目に浮かぶ。

民主党は検証チームのメンバーが中心となり、5月の衆院決算行政監視委員会の各分科会で特会に関する質疑を集中的に行った。

ほとんどの政務三役は直嶋氏のように官僚答弁に終始し、「役所に取り込まれてしまった」(中堅議員)という醜態を晒した。わずかに社会資本整備事業特会について、前原誠司国土交通相が治水勘定の廃止に前向きな発言をしたのが唯一の成果だった。

行政のムダ削減、増税の大前提だったはずだが・・・

民主党の枝野幸男幹事長、玄葉光一郎政策調査会長、蓮舫行政刷新担当相は6月23日、事業仕分けの第3弾について特会を対象に10月半ばに実施すると発表した。

これに先立ち、新人議員を中心に事前調査を行うプロジェクトチームを参院選後に発足させるという。検証チームの活動は「事前調査の前の事前調査」(玄葉氏)に相当し、今後の議論にある程度は反映されるようだ。

消費税については菅首相が「10%」という税率まで示し、2010年度中に結論を出すと明言した。これに対し、特会改革は「いつまでに何をやるかを言える段階ではない」(蓮舫氏)と曖昧なまま。参院選の公示前日に緊急発表したことからも、「選挙対策」に過ぎないのは明らかであり、どこまで本気で取り組もうとしているか全く分からない。

特会改革は、その統廃合を進めてその数をできるだけ減らすと同時に、全体で毎年度数十兆円規模に達する決算剰余金と200兆円近い積立金の中身を精査しなくてはならない。その上で不要なものを「埋蔵金」として掘り起こし、財政健全化に活用する仕組みを確立すべきである。

これによって消費税増税が不要になると言うつもりはない。だが、増税の大前提として行政のムダ削減が不可欠だと言い続けてきたのは、ほかならぬ民主党である。霞が関の官僚に取り込まれ、白旗を揚げている場合ではない。

(以上、JBpressより転載)


暗黙の民意

2010-07-13 | weblog

参院選で示された「暗黙の民意」

参院選の敗北で、財政再建に向けて動き出した民主党政権の動きは止まりそうだ。「増税の前にやるべきことがあるだろう」というお題目を唱えるみんなの党が躍進したこともあいまって、少なくとも次の総選挙までは消費税は封印されるのではないか。しかし今週の日経ビジネスでもシミュレーションしているように、世界最悪の財政状況で永遠に増税を先送りすることは不可能だ。

プライマリーバランス(PB)を2020年までに黒字化するという政府の控えめな目標を実現するだけでも、名目成長率が1.7%と想定すると21.7兆円が不足する。これを消費税だけで埋めるとすると約10%の増税が必要だが、これはかなり楽観的な数字だ。ここ10年の名目成長率はほぼゼロなので、このままだと消費税を30%ぐらいにしないとPBの黒字化は達成できない。

もちろん歳出を削減すれば財政赤字は減るが、民主党政権の実績をみてもまったく信用できない。かりに10兆円削減できたとしても、消費税は25%にしなければならない。つまり問題は、消費税を上げるべきか否かではなく、いつ上げるかということなのだ。来年上げなければ、そのぶん赤字は積み上がり、10年後に一挙に20%以上も上げることになる。

これは政治的に不可能なので、ロゴフも指摘するように、マイルドなインフレによって実質的な債務不履行を行なう方法が考えられる。しかし池尾和人氏も指摘するように、本当に日銀がそういう政策にコミットしたら、債券市場はただちにインフレを織り込んで金利が暴騰し、円は暴落し、high inflationが起こるだろう。マイルドなインフレにコミットすることは不可能なのだ。

いちばん危ないのは、政府がコントロールできない状態で国債バブルが崩壊することだ。ただ藤沢数希氏もいうように、そういう暴力的な「解決」しかないというのが今回の選挙で示された「暗黙の民意」かもしれない。国民が潜在意識で「焼け跡からの復興」を望んでいるのだとすれば、その費用と便益をまじめに考えてみる必要があろう。

財政が破綻しても人が死ぬわけじゃなし、実質賃金も実質債務も年金の実質受給額も激減し、為替も1ドル=300円ぐらいになれば、輸出産業も元気になるだろう。終戦直後のように数年で立ち直れるなら、ゆるゆると衰退するよりましかもしれない。日本の劣化した政治ではそれが唯一の選択肢だとすれば、外科手術は病気が進行しないうちのほうがいい。

(以上、池田信夫blogより転載)


悪党になれ

2010-07-12 | weblog

小沢一郎は徹底した「悪党」になれ

あわせても民主党106、連立与党の国民新党(3議席)、無所属(1議席)をあわせても110なので、参議院(定数242)において与党は過半数割れした。

マスメディアは、「民主党敗北」、「菅直人首相の責任問題浮上」などと大騒ぎをしているが、参議院選挙の結果によって、天が落ちてくるわけではない。今後も民主党連立政権は続く。しかも、国民新党の比重が落ちるので、民主党の「自由度」が高まったと見るのが妥当である。

そもそも予算と条約について、衆議院の優越が定められている現行制度の下で、参議院が国政に決定的な影響を与えることはできない。もちろん、予算、条約に付随する法律の成立を参議院が徹底的に妨害し、抵抗することは理論的に可能だ。しかし、現在の参議院の野党議員の力量を考えるとそれもできないと思う。

権力は民主党にある。しかも、霞が関(中央官庁)の官僚が、民主党を支持している。予算と法律が通過せずに困るのは民主党だけではない。官僚も職務を遂行できなくなるので困る。それだから、官僚は、意図的、あるいは無意識に民主党を助ける。菅直人体制下の民主党は、霞が関官僚によっては御しやすい与党だ。そもそも消費税率引き上げは、税金によって生きている官僚の悲願である。自らが不利になることを想定した上で、霞が関の悲願である消費税率引き上げを、10%という数字にまで踏み込んで言及した菅総理は、「素晴らしい宰相」なのである。ここでつまらない政界再編などが起きて、「消費税率引き上げに当面、反対する」などいうスローガンを掲げ小沢一郎衆議院議員(前民主党幹事長)の影響力が強まることだけは是非とも避けたいというのが官僚の本音だ。

そもそも、民主党は理念や政策によって結集した政党ではない。権力を奪取するという一点で結集した「権力党」だ。それだから、政策や理念がかけ離れた政治家でも権力を維持するためには団結する。

今回の参議院選挙において、民主党が勝ったか、負けたかについては、基点をどこに置くかで評価がまったく異なってくる。仮に鳩山由紀夫総理、小沢一郎幹事長の体制で参議院選挙に突入していたならば、民主党は30議席・プラス・アルファしか獲得できなかったであろう。このような悪夢と比較するならば、今回の結果はそう悪くない。菅氏が消費税率引き上げに関する発言をしなかったならば、鳩山・小沢退陣後の民主党の支持率がV字を描いて回復した流れが維持されて、民主党で過半数の議席を確保できたかもしれない。そうなると大負けということになる。

ここで、重要なのは、官僚の「仕掛け」と有権者の反応の関係だ。

検察官僚が「政治とカネ」の問題で小沢氏と鳩山氏を徹底的に叩いた。そして、外務

官僚が鳩山包囲網を構築し、米海兵隊普天間飛行場の移設を自民党政権の日米合意を踏襲する辺野古崎近辺(沖縄県名護市)とすることに成功した。その過程でマスメディアが、徹底した反鳩山キャンペーンを展開した。その結果、「小鳩政権」が崩壊した。すると、民主党の支持率がV字回復した。官僚の意向を、マスメディアも国民も支持したことになる。

ところで、菅総理の消費税率引き上げに関し、自民党の主張する10%を参考にするという発言は、財務官僚の意向をそのまま反映したのもだ。マスメディアも概ね好意的反応を示し、読売新聞は社説で欧州並みの15%を基準に考えよとまで主張した。しかし、国民は菅発言に強く反発した。官僚とマスメディアが足並みを揃えても、有権者がそれに激しく反発し、今次参議院選挙で有権者は民主党に対して厳しい評価を下した。筆者はこのことをとても高く、肯定的に評価している。消費税のような国民の生活の根本にかかわる問題について、有権者は、官僚と官僚に親和的な政治家、メディア・エリートの言説を鵜呑みにしないということが示した。日本の民主主義が機能していることが明らかになったと筆者は見ている。

今回の参議院選挙で民主党が圧勝していたならば、菅政権に近い民主党の国会議員と官僚、そして官僚の情報を右から左に流すメディア・エリートと有識者が広義の「権力党」を形成し、この勢力が日本社会をファッショ化する危険性があった。民主党のファッショ化を防ぐために、現下の政治情勢において衆議院と参議院の「ねじれ」は必要だ。

今回、29の1人区中、21議席を自民党が獲得し、8議席の民主党を大きく引き離した。理念や政策をもたない「権力党」としての民主党はこのことを深刻に受け止める。衆議院議員選挙(総選挙)で、与野党逆転がいつでも起きるという危機感に「権力党」員たちは襲われている。民主党は、次の総選挙のタイミングを2013年の衆参ダブル選挙に持ち込むと思う。それまでに、民主党は権力を最大限に活用し、徹底的に自民党を弱体化させる。もちろん官僚は、「権力党」である民主党を支持する。すでに外務官僚は自民党の国会議員に対し、機微に触れる情報を提供することをやめている。検察官僚にとっては、小沢一郎氏さえ消え去れば、民主党はとても御しやすい「権力党」だ。今後、検察が、自民党の「金庫」である国民政治協会の狙うことになれば、民主党と官僚の連携が完全に成立する。いずれにせよ、小沢氏の影響力が二度と政権中枢に及ばないようにし、日本国家の支配者が官僚となる体制を構築することが、官僚の集合的無意識だ。

消費税引き上げは、官僚階級の利益を体現している。11人を当選させた「みんなの党」の勝因は、脱官僚と消費税率引き上げを明確に訴えたからだ。「みんなの党」は、渡辺喜美党代表の個人カリスマに依存する政党だ。渡辺氏は、「小さな政府」、「官から民へ」の新自由主義政策を掲げる。競争社会における強者が「みんなの党」を支持することは、合理的だ。事実、構造的に強い、東京、千葉、神奈川の首都圏の選挙区で「みんなの党」は、それぞれ1人ずつ、計3人の当選者を出している。残り8人は比例区からの当選だ。しかし、この当選は、渡辺喜美氏という党代表のカリスマと結びついて始めて可能になる。強力なカリスマ性と毒舌で有名なウラジーミル・ジリノフスキー氏に率いられるロシア自民党と「みんなの党」を筆者は類比的に捉えている。渡辺喜美氏を欠けば、「みんなの党」は雲散霧消する運命にあるというのが筆者の率直な見立てだ。

渡辺喜美氏の脱官僚という主張は、本気で本物だ。しかし、「みんなの党」の幹事長をつとめる江田憲司衆議院議員が、ほんとうに脱官僚を志向しているのであろうか?

江田氏について、鈴木宗男衆議院議員(新党大地代表、衆議院外務委員長)はこう述べる。

そもそもみんなの党は、二世、官僚出の人が集まって立ち上げられた政党だ。渡辺代表は二世で、江田幹事長は役人・官僚上がりである。真に庶民の代表とは言えない。

特に、官僚上がりの江田幹事長は、橋本総理時代、総理秘書官として国民の税金である内閣官房機密費を自由に使っていた。当時、橋本総理から「鈴木君、何か必要があったら江田に言ってくれ」とよく言われたものである。勿論私は、江田さんに何もお願いしたことはないが。

また江田幹事長は、大宅壮一賞作家の佐藤優さんに機密費を渡していたことが明らかであるのに、今となっては「記憶にない」である。こんないい加減な話をする人が、額に汗して頑張る人のことを考えているだろうか、真に弱い立場に置かれている人の気持ちを理解できるのかと言いたい。

江田さんについては、佐藤優さんが沢山興味深い話を知っているので、今後を待ちたい。(7月4日付「ムネオ日記」)

時期を見て、筆者も江田憲司氏について、もう少し踏み込んだ話を国民の前に明らかにする必要があるいのかもしれないと、考え始めている。

脱官僚というスローガンで、実質的な官僚支配を強める「トロイの木馬」のような国会議員が与党にも野党にもいる。このような政治家に衣替えをした「過去官僚」の動きを厳しく監視する必要がある。

参議院選挙を経ても、「官僚VS政治家」という基本的対立図式は変わっていない。

5月31日の本コラム(小沢一郎が「平成の悪党」になる日)で筆者はこう強調した。

官僚は、国民を無知蒙昧な有象無象と考えている。有象無象によって選ばれた国会議員は無知蒙昧のエキスのようなものと官僚は見下している。そして、国家公務員試験や司法試験に合格した偏差値秀才型のエリートが国家を支配すべきだと自惚れている。自民党政権時代は、「名目的権力は国会議員、実質的権力は官僚」という実質的な棲み分けができていたのを、民主党連立政権は本気になって破壊し、政治主導を実現しようとしていると官僚は深刻な危機意識を抱いている。この危機意識は、実際は官僚が権力を大幅に削減されることに対する異議申し立てに過ぎないのであるが、官僚の主観的世界では「このような輩が国家を支配するようになると日本が崩壊する」という「国家の危機」という集合的無意識になっている。

官僚は、現在、2つの戦線を開いている。第1戦線は、検察庁による小沢一郎潰しだ。第2戦線は外務官僚と防衛官僚による普天間問題の強行着陸だ。特に外務官僚は、「アメリカの圧力」を巧みに演出しつつ、自民党政権時代に官僚が定めた辺野古案が最良であることを鳩山総理が認めないならば、政権を潰すという勝負を賭けた。鳩山総理は、現状の力のバランスでは、官僚勢力に譲歩するしかないと判断し、辺野古案に回帰した。鳩山総理の認識では、これは暫定的回答で、段階的に沖縄の負担を軽減し、将来的な沖縄県外もしくは日本国外への模索を実現しようとしているのであろう。しかし、この状況を官僚は「国家の主導権を官僚に取り戻した象徴的事案」と受けとめている。

しかし、この象徴的事案は、官僚勢力に対する敗北になり、民主党連立政権が政治生命を喪失する地獄への道を整える危険をはらんでいる。筆者は、小沢幹事長がそのような認識をもっているのではないかと推定している。

小沢幹事長が「鳩山総理が平成の新田義貞になった」という認識をもつならば、自らが悪党になり、政局をつくりだそうとする。小沢氏が直接政権を握ろうとするか、自らの影響下にある政治家を総理に据えようとするかは本質的問題ではない。小沢一郎氏が「平成の悪党」になるという決意を固めることが重要だ。小沢氏が「平成の悪党」になる決意を固めれば、官僚に対する決戦が始まる。参議院選挙はその露払いに過ぎない。今後、天下が大いに乱れる。

ここで言う「悪党」とは、犯罪者ややくざのことはない。「悪党」とは、<中世、荘園領主や幕府の権力支配に反抗する地頭・名主などにひきいられた集団。>(『岩波古語辞典』1974年版)すなわち、既成権力に対抗する強い武士の集団のことだ。小沢一郎氏が、数あわせの観点で、政界再編を画策しても、それは実を結ばない。国民不在の永田町での権力再編ゲームに国民は飽き飽きしている。小沢氏が、南北朝時代の南朝の忠臣・楠木正成が「悪党」と呼ばれたことを念頭に置き、徹底して国民に軸足を置き、今後、国民の中で起きるであろう反官僚運動と連携し、民主党政権を国民の側に引き寄せる努力をすることにより、状況が変化する。いま求められているのは、小沢氏が、中途半端ではなく、徹底した「悪党」になり、官僚により半ば支配されている菅政権を内側から揺さぶることだ。

(以上、佐藤優の眼光紙背より転載)


官僚たたき

2010-07-10 | weblog

官僚たたきはもうやめよう 公務員改革が国を滅ぼす

「どこの世界に、社長や役員が、社員のことをボロクソにたたきのめして、世間から喝采を受ける会社があるんだろうね?」

年明け、甘利明・行政改革担当相と谷公士・人事院総裁の激突で風雲急を告げた公務員制度改革。取材を始めていた私たちに向かって、ある霞が関の官僚の一人がつぶやいたのがこの言葉です。

政府は、首相や大臣といった「政」が政策の判断や決定をして、官僚たち「官」が実務を執行するのが本来の構図。政府を会社に見立てるならば、首相が社長、大臣が役員で、官僚が社員といったところでしょう。

政治家たちが「官僚主導の打破」を叫ぶというのは、役員が「社員に(役員を上回る)力があり、社員が主導の企業はおかしいから打破しなければならない」と言っていることに等しいわけです。しかも、その役員たちは、世界に類をみないスピードで毎年のようにコロコロ変わっていくわけですから、社員はさぞかしたまったもんじゃないでしょう。

官僚たたきで制度を改革していいのか

「公務員制度改革」――このなんとも堅苦しい言葉を聞いて、読者の皆さんはどのように感じるでしょうか。「エリート官僚のことなんて、無関係」となるか、「天下りなんて許せない」、「民間は不況でこんなに苦しいのだから、公務員ももっと身を削れ」と怒りを感じるか。いずれにしても感情論に陥りやすい対象であるだけに、「何のために何を改革すべきなのか」を冷静するのは、とても難しいテーマです。

今の官僚のあり方に「天下り」をはじめとする、多くの問題があることは間違いありません。ですが、公務員制度改革について与野党間で合意がなされ、ねじれ国会では稀にみるスムーズさで基本法が成立した昨年6月から約9カ月。この間、メディアを賑わせたのは、「天下り禁止を骨抜きにされた」と怒る渡辺喜美前行革相の姿と、「内閣人事・行政管理局」という長ったらしい名前、「甘利vs谷」という構図、そして「級別定数」という一般の市民にとってはなんだかわけのわからないキーワードでした。

公務員は社会の公器であり、その制度設計は国家百年の大計に属するもののはずです。現在の公務員制度は、戦前の仕組みを源流とした長い歴史を持っていますから、変えるとしてもそれなりの覚悟が必要です。しかし、このところの一連の議論は、政争の具として弄ばれ、単なる「官僚たたき」の色彩を強めています。

公務員へのバッシングが強まった背景の一つに、「居酒屋タクシー」がありました。たしかに官僚がそういう特権的待遇を受けていたことに問題がないわけではありませんが、より本質的な問題はタクシー業界の過当競争であり、霞が関官僚の凄まじい残業実態であったはずです。

しかし、特にその後者について切り込んだメディアはあまりみられませんでした。どのメディアも普段官庁に取材しているなかで、官僚たちの疲弊ぶりは散々目にしているであろうにもかかわらず、です。しかも、取材をしている記者の側こそが、ハイヤーやタクシーを大量に抱えているなんていう笑えない話もあります。実態や本質を知っているにもかかわらず、そのことには触れずに、後に一種のメディアスクラムに突き進むのは、その後の中川昭一・前財務金融相酩酊事件でも同様です。

いま一度、「政治主導」、「天下り禁止」といった、キャッチフレーズに踊らされることなく、冷静に公務員制度を検討することが必要です。

官僚はそんなに悪者か?

国家行政の中枢機関が集まる霞が関。多くの官僚たちは深夜1時を回っても、空調の切れた執務室で、今日も黙々と業務をこなしています。

「残業時間は多い月で約140時間にも及ぶが、人件費の縛りもあり、サービス残業が横行している」と打ち明けてくれたのは、とある入省5年目の係長。「手取りで400万円程度」とお世辞でも高給取りとは言えない年収について、「それは承知の上。それ以上に国の政策立案に携われることにやりがいを感じる」とさらっと言ってのける姿は涙ぐましいとさえ感じます。

入省14年目のある課長補佐は「残業は月200時間を超えることもあります」と言って、手帳にメモした勤務実績を見せてくれました。手帳に記録をつけるのは、いつ過労死しても、労災認定を受けられるようにするため。実際につく残業代は月40時間ほどだというからやるせません。

「民間企業と比較したりしませんか」との問いに、「民間企業で働く同期の給与なんか考えたくもない」とつぶやいた表情は忘れられません。それでも二言目には、自らに言い聞かせるように「キャリアなら当然ですよ」と言ってのけてしまうのです。

厳しい国家財政の下、公務員の人件費は年々抑制されてきましたが、情報公開やパブリックコメントなどの導入で業務量は増える一方。「国家に奉仕したい」と期待を膨ませた若き官僚を待ち受けるのは、調整や議事録作成などに忙殺される毎日です。

さらに「国会待機」や「質問主意書」が官僚を疲弊させています。居酒屋タクシー事件では、タクシー利用実績の調査のために、全省庁で大幅な残業がなされ、しかしさすがにタクシーには乗れないから省内に宿泊するという、なんとも皮肉な事象が発生しました。

「外国と比べて官僚の仕事が多いのは、マルセイ対策があるから」とは某省課長の弁。この「マルセイ」とは、政治家などへの政治的な根回しのこと。その割合は「課長クラスで全仕事量の1割、審議官クラスで5割、局長クラスで7割程度」に達するというから、驚くほかありません。

米国では1人で100名近くの政策秘書を抱える議員もいるくらい、議員スタッフが充実しています。日本ではこうした役割の多くを官僚が担っています。与党間の調整役として局長が奔走することも珍しくなく、取材のなかでは、政党のマニフェスト作りにまで官僚が関与しているとの声すら聞こえてきました。日本の「政」と「官」の役割分担はこれほどまでに不明確です。

今の政治家に任せて大丈夫?

「公務員制度改革の前に政治改革が必要だ」。野中尚人・学習院大学法学部教授はこう指摘します。

公務員制度改革の基本的な哲学は、“政治主導”ですが、そもそも議院内閣制のわが国においては、政治主導は当たり前であり、政治家が政策を立て、有権者に政策を問い、当選すれば覚悟を持って政策を遂行するというのがあるべき姿です。

残念ながら現状は「官僚内閣制」と揶揄されるように、政治主導ではありません。ですが、「官僚のほうが力があるから、官僚の力を殺いでしまえ」という前に、「力のない政治家のほうが問題だ」という声が出てこないのは不思議です。

実は、この政治主導の議論は今に始まったことではありません。自由党党首だった小沢一郎氏が構想を唱え、英国型・政治主導内閣を志向して2001年に実現させた副大臣・政務官制度がいい例でしょう。官僚が国会で答弁する政府委員制度を廃止し、政治主導を実現する仕組みとして期待されたが、成果はあったでしょうか。

官僚任せの政治家が政策立案や政策遂行能力を欠いたまま、政治の権限だけ増やしても、ロクなことにならないでしょう。いま必要なのは、政治と官僚の役割分担を示すことであり、官僚の改革よりも政治自身の改革を進めることのはずです。

まず、やるべきは閣議の改革です。「形骸化した閣議ではなく、英国のように総理大臣が内閣委員会の設置やメンバーを決めることでき、そこでの決定が閣議決定となるような仕組みを導入して政治的な意思決定を強化し、機動力を高める必要がある」(前出の野中教授)。そして、「官僚に代わって政治家自らが利害関係者との調整を行う」(政策シンクタンク・構想日本の加藤秀樹代表)ように追い込んでいく必要があるでしょう。

アメリカでも政治任用の問題点が議論されている

民主党の鳩山由紀夫幹事長は、政権をとった暁には、局長以上を首実検するとも受け取れる発言をしていますが、そのような政治任用の強化には大きなリスクがあります。05年8月に発生したハリケーン・カトリーナに対する、米・連邦危機管理庁のお粗末な対応ぶりは、過度な政治任用に原因があったということが、近年、デイビッド・ルイス・米ヴァンダービルト大学教授によって実証的に明らかにされています。組織内のトップを経験のない政治任用者が占めると、職員の士気も下がり、専門的パフォーマンスが低下する恐れもあるのです。

いま進められていることは、「政治家の役割を果たしていない政治家による政治主導」といえるでしょう。この構図を認識せずに官僚叩きに明け暮れれば、国家の存立基盤が揺らぐことにつながるかもしれません。

天下り根絶だけすればいいのか?

「このままいけば、40歳過ぎると、みんな隠れてせっせと就職活動に励むだろう」ある省庁の30代中堅キャリア官僚はこうつぶやきます。「正直言って、天下りを目指して官僚になる奴なんていない。だけど、40代前後から省内の競争がグッと激化するのは事実。これからは脱落しても面倒見ませんよ、省内には留めてやるけど、ろくな仕事はなくて、給料も民間より安い、最後までいても年金はかなり低い、ということなら、転職も真剣に考えざるを得ない」。

多くの同期入省者から事務次官1人に絞り込んでいく過程で、各省庁の官房(人事担当課)は、ポストに就けなかった者に“肩たたき”を行って、関連する民間企業や独立行政法人、特殊法人などの職を斡旋します。一度天下りした後も、後輩に交代していく必要があるため、2度目、3度目の天下り先が用意されます。これがいわゆる「渡り」です。

麻生首相は野党や世論の非難を浴びて、「渡り」の全面禁止、各省庁による天下り斡旋の猶予期間短縮に踏み込んだ。姿勢転換が遅かったことを除けば、概ねメディアでは好意的に受け止められています。

しかしこの悪名高い「天下り」、単に“禁止”さえすれば事足りるのでしょうか。

制度化されていない慣例とはいえ、官房が全員の面倒をみることで、官僚の安定性や中立性が担保されてきたのは事実です。天下り根絶は、官僚たちが、自分で自分の処遇を獲得しなければならなくなることを意味します。冒頭のコメントにみられるように、競争から脱落した過半の官僚たちが、よりよい処遇を求めて切磋琢磨する状況は果たして望ましいのでしょうか。

現在の公務員法ではよっぽどのことがない限り「降格」が認められていないため、一度局長になってしまえば、審議官には落とせないし、給料も下げられません。その状態のまま政治任用化が進んで、いったんは政治家に重用された官僚が政権交代のたびに次々と放り出されていけばどうなるでしょうか。

天下りは根絶されているし、出世にかかわらず一定の処遇を補償する仕組みもないとすれば、省内にやる気を失った中堅層が大勢滞留し、組織がよどんでいくのは明らかでしょう。

破壊だけでなくシステム再構築を

「内閣に国家戦略スタッフ30人、各省に政務スタッフ5人程度、大胆に民間登用」という方針は見た目は良いですが、これは官僚の世界で頑張るより、うまく民間から登用されたほうが出世できるということを意味しています。米国のウォール街や軍需産業の例を引くまでもなく、特定業界の専門家がロビーイングまがいに行政を牛耳ることの怖さは考えておくべきではないでしょうか。

日本では、人事院が級別定数(ポスト別の人数)を、行政管理局が組織定員(省庁別の人数)をがっちり管理してきたため、諸外国に比べてかなりコンパクトな人員規模になっています。人事院の勧告制度で、給与も民間や諸外国より安く抑えられてきました。年金も、他の先進国の半分ほどしかありません。それなりに効率の良い政府を作ってきたと評価することもできるわけです。

たしかに、天下りと特殊法人の結託による不透明な行政慣行や、6回も7階も「渡り」を続け、80歳近くまで天下りを続けた元官僚の存在など、官僚の側にもやりすぎがあったのは確かです。しかし一方で、天下りシステムで生涯賃金をバランスさせてきたのも事実でしょう。

システムを破壊するだけで再構築しないというのは無責任以外の何物でもありません。慶應義塾大学の清家篤教授はこう指摘します。「労働市場のなかで、優秀な人を採用し、国家に奉仕するプロに育て、能力を十分に発揮してもらうためには、国民はそれ相応のコストを負担する必要がある。敬意と感謝の念を示してやる気を高めるのが人事の上策である」。

その他、「幹部公務員人事の一元化」や「労働基本権付与」といった方針にも大きなデメリットがあります。いまこそ国民が公務員制度改革に関心を払うべき時ではないかと思います。

(以上、WEDGE REPORT-2009/3/20より転載)


気分転換

2010-07-10 | weblog

ここ数ヶ月、ツイッターがメインでブログは気になる記事の転載だけが続いた。

そのツイッターも鳩山政権がコケてから気が乗らない。

で、まあ、何気にフィリピン関連のブログを散策して見つけたのが以下。

 

フィリピンで農業に生きる青年の日記

 

奥さん、これが面白かった、ブログひとつでいい気分転換になったつー話。


分裂選挙

2010-07-04 | weblog

民主党「分裂選挙」で見えてきた「小沢脱党組」は40人

民主50議席台クリア予想でも燻る「小沢ファクター」

先ず、マスコミ各社の参院選挙予測を見てみたい。

(1) NHKの情勢調査によれば、

民主党:選挙区36、比例区17の計53、自民党:選挙区33、比例区12の計45

(2) 共同通信社では

民主党:選挙区35、比例区17の計52、自民党:選挙区34、比例区12の計46

(3) 日本経済新聞社では

民主党:選挙区37、比例区20の計57、自民党:選挙区32、比例区11の計43

(4) 週刊文春では

民主党:選挙区32、比例区20の計52、自民党:選挙区29、比例区11の計40

(5) サンデー毎日では

民主党:選挙区35、比例区18の計53、自民党:選挙区32、比例区11の計43

(6) 週刊朝日では

民主党:選挙区38、比例区20の計58、自民党:選挙区28、比例区10の計38---であった。

民主党は改選議席の54には届かないが50の大台を何とかクリアでき、菅直人首相(代表)体制は首の皮一枚繋がるのではないか。

筆者も編集・発行する『インサイドライン』(6月25日号)でも「54±3」と書いた。そして自民党も改選議席38を上回り、谷垣禎一総裁の当分間の続投は確実視されるという予測となった。蓋を開けてビックリ仰天にはならず、選挙後政局はそれほど面白い展開にならない可能性が高い。

それでもなお、焦点は「小沢(一郎前民主党幹事長)ファクター」である。

依然としてお得意の「川下作戦」を取り続ける小沢氏は、幹事長時代に強行した「複数人区2人目擁立」の各選挙区を回っている。

6月28日には愛媛県今治市、29日は山形県鶴岡市、30日が宮城県七ヶ所町、7月1日も兵庫県朝来市と京都府福知山市で、それぞれ僅か20~30人の聴衆を前に辻立ち演説を行っている。

小沢氏の企図するところは、例えば京都選挙区に2人目の候補として擁立した河上満栄前衆院議員の応援をみれば伺え知れる。

谷垣総裁(衆院京都5区選出)の地元である福知山に入り、比例代表の近畿ブロックで復活当選した「小沢ガールズ」の小原舞衆院議員を同道したことからも分かるように、実は次の衆院選挙を念頭に置いた"事前運動"と見ているのだ。河上候補が仮に敗れても、再び衆院選挙チャレンジさせる腹積もりなのである。

さらに"小沢らしさ"が象徴的な選挙戦を展開しているのが同じ2人区の長野選挙区である。現職の北澤俊美防衛相に次ぐ候補として地元紙『信濃毎日新聞』OBの高島陽子元県議を擁立、同候補に対し物心共に集中応援していることだ。

小沢氏の私設秘書を5~6人張り付かせているだけでなく、沖縄県選出の糸数慶子参院議員(元社会大衆党副委員長)をはじめとする同県県議が高島の応援のため長野入りしている。北澤防衛相の普天間基地移設問題での迷走を「沖縄県民の声」として批判させ、"北澤落とし"のために事実上の分裂選挙を行っている。

新トロイカが考える長期政権戦略

なぜか。菅直人首相・仙谷由人官房長官・枝野幸男幹事長の新トロイカは、54議席前後をクリアできれば、菅政権の存続・長期化のための戦略第1弾を考えている。

当選が確実視される小沢最側近の輿石東・参院議員会長を今月末召集の特別国会での参院議員議席確定時に同院議長に棚上げし、北澤氏を後任会長に起用。小沢氏の権力の基盤である民主党参院執行部を握る腹積もりなのである。小沢氏もまた、そうはさせじと北澤追い落としに全力を挙げているのだ。

小沢氏の複数人擁立が奏功しそうなのが、大阪と愛知の3人区である。大阪の地元テレビの人気タレント、岡部まり氏が選挙戦序盤は泡沫扱いだったのに急浮上中。また愛知の安井美沙子氏も3人目当選の可能性が強くなってきている。つまり「小沢ガールズ」要員3人が当選圏に入りつつあるのだ。こうした読みが現在の小沢氏を強気にさせている。

それでも恐らく、民主党は何とか52か53議席に届き、菅体制安泰となるはずだ。

となると、菅首相が"輿石外し"の参院議長人事と連動させて月末にも内閣改造を断行することになれば、9月の代表選前の小沢氏離党・新党結成もあり得る。その場合、衆参院議員多くて40人前後が行動を共にするのではないか。

(以上、現代ビジネスより転載)


超党派の協議

2010-07-01 | weblog

「重要政策は超党派での協議で」=重要政策は官僚への丸投げで

菅直人の消費税発言のブレについて、マスコミが本格的に追及する様子がない。帰国した菅直人を待ち受けて、ぶら下がり会見で「消費税の争点隠し」に猛然と噛みつくものと期待したが、豈図らんや肩すかしを食わされた。テレビでその場面が放送されれば、確実に内閣支持率が5%下がっただろう。その代わり、菅直人が選挙対策として仕組んだ二つの会議、①新年金制度の会議と②税と社会保障の番号制度の会議について、テレビが宣伝報道をしていた。この二つは、消費税増税のための政策措置で、民主党がアリバイ工作として見せているものであり、同時に消費税増税への手続きとして慌ただしく踏んでいるステップでもある。年金制度の新設計は、昨年の鳩山マニフェストの中で公約されていたもので、消費税を財源とする設計図を国民に示し、4年後に総選挙で信を問うという計画が示されていた。これまで、年金制度について、民主党は最低保障年金を税で賄う二階建方式を唱え、財源に消費税を充てる構想を言い続けていて、制度設計は消費税増税を組み入れた内容になる内容が想定されていた。ただし、鳩山マニフェストに明示されているとおり、当初2年間は年金記録問題を解決するための集中対応期間とされ、制度設計への着手は3年目(2013年)となっていた。思えば、年金問題は、この10年近くずっと選挙の主要な争点になってきて、一元化と最低保証が論議され、その論議は常に野党の民主党がリードしてきた。

政府側にまともな年金政策がなく、それが自民党が選挙で負ける基本要因を作ってきたとも言える。民主党の勢力の拡大は、年金に対する国民の不安を背景にしていた。政府側から年金制度の構想が出なかったのは、竹中平蔵と財務省の政策思想に基づくもので、要するに、日本の公的年金制度は破綻に任せ、国民は米国の401Kを倣って自己責任で老後の面倒を見ろという考え方からだったと言える。国民年金は崩壊、厚生年金も崩壊、共済年金だけを守ればいというのが官僚の本音で、それが「構造改革」の言わざる年金制度の将来構想だった。新自由主義の理想社会は、国家の社会保障負担がゼロになる社会である。その理想社会の実現に向かって、小泉・竹中路線で全力疾走していたのであり、その先頭に立って霞ヶ関を引っ張っていた官僚が、当時は小泉純一郎の秘書官で現在は財務省事務次官の丹呉泰健である。今回、菅直人がバタバタと年金制度の設計に関する会議を開いたのは、本来、新年金制度と引き換えだったはずの消費税増税が、切り離されて一方的に打ち出された点への批判をかわすべく、体裁を整えようとして、アリバイ的にマスコミの前で会議を開き、いかにも年金制度の方も準備していますよという演出をしただけだ。しかし、この会議開催には、どうやら単なるアリバイ工作以上に深い意味がある。菅直人は、民主党の従来の年金政策の方針も放棄する意思を固め、財務省の(新自由主義)路線である「破綻と自己責任」に舵を切っている。

昨日(6/29)の会議での結論は、「超党派で議論を」であり、具体策には踏み込んでいない。毎日の記者は、「衆院選で掲げたマニフェストで掲げた内容より後退している」と批判している。消費税と同様、消費税とセットで、選挙後に自民党に抱きつく気だ。自民党と協議の場ができれば、それを根拠にして、消費税だけを引き上げ、年金制度の方をウヤムヤにできる。これは、財務省の方針である。財務省は、消費税を基礎年金の財源に充当する気は皆無なのだ。社会保障の財源ではないのである。財務省にとって、消費税はあくまで一般歳出の財源であり、今回の増税は法人税の減税を天埋めするためのものである。毎日の記事では、会議で最低保障年金の金額を出さなかったのは、それを出すと消費税の増税幅の具体論になり、それを避けたためだと書いているが、この観測は間違っている。最初から消費税を年金財源に回す気がなく、自民党と抱きつくことで、新年金制度の設計や構築そのものを捨てる布石なのだ。自民党のマニフェストを見ると、やはり年金に関しては具体的な政策は何も提示されていない。苦笑してしまうが、「年金制度については政争の具とすることなく、超党派による協議機関を早期に立ち上げる」とある。菅直人はこれに抱きついたのだ。今週末の政治討論では、この「抱きつき」が話題になるかもしれない。注意するべきは、この「超党派による協議」とか、「党派を超えた議論」の意味である。最近、消費税を含めて、「超党派の協議」が頻繁に言われ、マスコミもそれを翼賛する報道を繰り返している。

昨夜(6/29)の古舘伊知郎も、「国の重要な政策だから超党派の協議は当然」と言った。「超党派の協議」の意味は何なのか。これは、財務省主導で政策の全てを決めるという意味だ。政党は政策の個性を持たなくていいという意味である。「協議」とは、「談合」の意味である。討議や検証を経ない無思考の合意の意味だ。「癒着」の意味に近い。すなわち、渡辺喜美が批判して言っているところの、財務省が書いているから民主と自民の税制公約が同じになるという指摘が正鵠を射ている。そもそも、国会とは国の重要政策をめぐって政党が協議し論争する場ではないか。菅直人が呼びかけている「協議」とは、国会の場での正式な議論ではなく、国会の外(料亭の個室)で政策の中身を固めるという意味であり、議論から社民や共産は外して纏めるという意味であり、消費税や年金で二党で対立するのは止めようという提案である。具体策は財務省に委ねるという意味であり、結論的には自民党の案に乗っかるという意味以外の何ものでもない。民主党と自民党は具体策を検討するのは止め、赤坂の料亭で酒を飲み、制度の具体案は官僚のフリーハンドに任せる。民主と自民の政治家は、それをどうやって国民を騙す言説にしてマスコミに撒かせるかを考えるのだ。酒を飲みながら、国民を騙す知恵を捻るのである。結局、消費税に続いて、年金も自民党に抱きつきとなった。重要政策の大連立が着々と布石されて行く。選挙が終われば、消費税と年金で政策大連立の「協議」が立ち上がる。その「協議」の合意を根拠に、消費税10%増税が決定される。

昨日(6/29)は、年金制度の会議と共に、税金と社会保障の個人情報を一つに纏める共通番号制度の検討会も開かれている。夜のテレビのニュースでも報道されていた。 これは、消費税を増税する際に、低所得者に還付をする措置を講じる上で、個人の所得を正確に把握する必要があり、そのために急に議論が浮上したものである。菅直人が消費税増税を打ち上げて逆に批判を浴び、選挙への影響を回避するべく、6/21に対処策を言い出したときは、低所得者への配慮として、複数税率と還付の二つの方式を言っていた。両方とも口から出まかせの気配が濃厚だったが、この会議を見ると、複数税率の方はさっさと引っ込めた模様である。マスコミの報道は、政府のガイドするままに単に「共通番号」の概要だけ説明し、二つの方式のうち、軽減税率がオミットされた問題について焦点を当てない。先週の報道では、どちらも行政の準備に数年かかり、導入までは2、3年かかると言われていた。ところが、驚かされたのは、今日の朝日の7面で、共通番号制度の政策を紹介する記事の見出しが、「首相『具体案年内めど』」なのである。つまり、共通番号制度の具体案の方針を年内に決めると言っている。無論、この見出しは朝日の編集幹部が菅政権の幹部の意向で撒いている情報で、意図的な政策告知である。還付をするかどうかは別に、先に共通番号制度の導入を決め、消費税増税の環境を整備するという意味だ。おそらく、軽減税率方式だとインボイス制度の導入に時間がかかり、導入を決定すると混乱も生じるので、軽減税率は採用せず、還付だけを「低所得者用の配慮」の候補にしたのだ。

この記事を見て、誰もが直感するのは、菅直人と財務省の決意が固く、今年中に消費税の増税決定を断行し、来年度から引き上げが実施されるという見通しである。共通番号制度そのものの導入までは、3年から4年かかるとなっていて、実際は、それほど簡単には導入されないだろう。グリーンカードの例もあり、必ず資産家の側から妨害が出る。財務省が共通番号制度に本気かどうかも疑わしい。消費税増税の環境整備として「導入」だけ決め、どこかの時点で曖昧に葬り去るのだろう。日本の場合、その政策を「3、4年後に実現する」と言った場合は、1年後には骨抜きにして反故にするという意味だ。いずれにせよ、この共通番号制度についても、菅民主党は選挙後に自民党に連携を呼びかけ、年金・消費税と並んで「協議」の場を設置しようと動いている。重要な政策が、悉く民主・自民の「協議」で合意される。それは、鳩山マニフェストの政策が廃棄処分される裏返しでもある。年金と消費税の次に「協議」の対象となるのは、道州制と外国人移民と憲法改正だろうが、その前に、消費税と年金の前に、真っ先に「協議」で合意するのは、衆院定数の削減である。今度の選挙で、消費税は議論の対象になっているが、定数削減は関心を集める争点になっていない。マスコミやネットで世論調査もされていない。おそらく菅執行部は、選挙終了と同時に、勝っても負けても、間髪を置かず議員定数削減に着手するはずで、その「協議」の場は一瞬で実現するだろう。反対は社民と共産だけで、国新も削減に賛成している。今度の参院選は、有権者としては何が何だか分からない奇妙な選挙になっている。選挙結果がどう出ても、有権者の消費税増税への拒絶感は変わらないだろう。

何が民意かわからぬまま、民主党の代表選と衆院選に縺れ込みそうな予感がする。

(以上、世に倦む日日より転載)