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『小さな雪の町の物語』

2005-12-15 | フレーズ
杉 みき子 文
佐藤 忠良 画    

最初の一説
おしゃれな少女が自分にいちばんよく似合う衣装や身のこなしを本能的に知っているように、
土地というものも、どこの土地にせよ、それぞれ自分の身をかざるにふさわしい季節を持っている。

この町は、自分にもっともふさわしい衣装として、冬という季節をえらんだ。

くもり日の似合う町である。長いがんぎに寄りそわれた木造の家なみは、この町に城のあった数百年のむかしから、少しの変化もなく、低い空の下でまどろんでいるように見えた。

九月の末----家々のきんもくせいがいっせいに匂いはじめるころから、冬の予感がはじまる。
それはいわば短かったまぶしい季節の最後のかがやきで、その高い香りが長くはつづかず雨に散らされ、
がんぎの果てにそびえるいちょうの木が、なまなましいレモンイエローに染まって、暗紫色の空をそこだけあざやかに切りとる頃、
ことしの雪のうわさがひとびとの口にのぼりだす。

大好きな絵本

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