晴れた冬の空に、ちぎれた雲が刻一刻と姿を変えながら流れていく。
青い空にその陰影を輝かせながら、流れていく。
今日の上空の空気の流れは、地上よりも早いのでしょう。
時にちぎれ、ときに繋がり、離され、また固まりになりながら、流れていく雲。
宇宙と、無常の時・・
しばらく空を眺めました。
空は、丸い地球をくるむ優しい大気。
雲は、海を隔てて待っているめぐみさんのところから流れてきたのかもしれないと、ふと思いました。
めぐみさんは、あの雲に、『私は生きています。早く助けてください』というメッセージを託したのではないかと、そう思いました。
昨日見た演劇『めぐみへの誓い』は、劇の中とはいえ、囚われの被害者の苦悩を表し、今も同じように苦しんでいる拉致被害者、強制収容所の人々の過酷な暮らしを想像させてくれました。
今も、田口八重子さんは、引き裂かれた我子、耕一郎さんやお姉さまの事を忘れてはいないはず。
招待所の閉鎖された空間で、生きるために耐えながら、それでも、きっと劇中にあったように、『帰りたい、子供に会わせて!』と悲痛な叫びを漏らすこともあるのだろうと・・
それは、めぐみさんだって、増元るみ子さんだって、市川修一さんも、有本恵子さんも、古川了子さんだって、松本京子さんも、佐々木悦子さんも、松木薫さんも、山本美保さんも・・・
全ての被害者が、何の罪もないのに、何十年も苦しみの中で待っているのだから、気も狂わんばかりの望郷と落胆と、苦しみの中で暮らしているのだろうと思いました。
それは、安穏と日本に暮らす私達の『犯罪』ではないかと・・
『救えないという犯罪』
もう、何十年もたっているのに、『救えない』私達。
もう、何十年もたっているのに、『救わない日本と言う国』。
日本は、何故、救おうとしないのか?
私達は、何故、救えないのか?
暗澹たる思いが体中を包みます。
けれど、
西から流れてくる雲は、『生きています』『助けて!』という被害者の願いを、私達に伝えているように、私は思いました。
石岡さんが、厳しい環境の中、必死に、消息を伝えようとした、あの手紙を思えば、私達が、沈んでいてはいけないのだと、太陽の光に一瞬輝いた雲が、『待っている、助けて』という被害者の思いを私に伝えているように思えました。
諦めない!
忘れない!
衣服も、食糧も、燃料も乏しいあの国で、生きて待っている被害者を、必ず救わなければ・・と声にだしてみました。