天馬空を行く

子どものこと、毎日のこと、好きなこと!を書いています。

『おいでください』

2016年06月09日 | 毎日の何でもないこと
幼稚園の卒園式でもらった花。今はもうすっかり枯れてしまっている。



いつものようにマンションの階段を下りて、鉄の扉を開けて通りへ出ようとすると、その向こうで年老いた女性がさっと扉を開けて、自分が外へ出るのを待ってくれた。

その女性はここのマンションの住民で、たまにお見かけすることがある。

自分は年上の方に、そんなことをしてもらう分けにはいかないと思い、慌てて開いた扉を押さえて、
「どうぞ」と先を譲った。

するとその女性は、
おいでください」と小さな声ではっきりと言った。

おいでください。

この状況において、今日では使わない言い回しだなと思った。
そして決して気取った感じもなく、とても品良く聞こえた。自分には言えないせりふだなと思った。

ここで綱引きなことをしても仕方ないと思い、自分は軽く会釈して、先に外へ出た。
そして「すみません」と一言言った。

そして老婆も軽く会釈して、自分とは反対の方向へ向かって行った。
何だかとっても温かい気持ちになった。

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