「野党共闘」失敗説がマスコミをかけめぐっています。これは事実を見れば「ためにする虚言」だと判ります。289小選挙区のうち野党共闘となったのが214、その中で自民党に競り勝ったのは62です。共闘が無かった前回の2017年総選挙、今回共闘を組んだ5党の前身の立憲・希望・共産・社民の小選挙区当選の合計が38ですから、今回「野党共闘」が大きな成果を上げたのは明らかです。
「野党共闘」失敗説を一番喜んでいるのは自民党でしょう。幹事長だった甘利氏をはじめ閣僚経験者の大物10人が野党統一候補に敗れました。次の選挙で野党共闘が進めば大いなる脅威となりまますから。
立憲民主党は14議席を減らしました。責任を取って役員が辞任し、新役員の選出がマスコミの話題になっています。ここで気になるのがその支持母体の労組・連合の新会長の「共産の閣外協力ありえない」発言です。選挙最中での「野党共闘」に水を差す発言でした。小選挙区制では野党が統一候補を立てて戦わなければ、政権交代など考えられない状況なのに。資本家ではなく、国民多数の労働者の味方であるはずの労働組合のトップが何を考えているのでしょう。実際、議席を減らしたのは小選挙区ではなく比例区でした。
ここでバブルのはじける前の出来事を思い出しました。 日本の高度経済成長を視察しようと、当時世界の労働組合組織でも最も右寄りと言われた全米自動車労組の幹部がトヨタ自動車や日産自動車の労働組合を訪問しました。帰国前の記者会見で彼らは「我々の訪問した組織は『労働組合』ではなかった。それは会社の労務管理の一部門と言えるものでした。彼ら組織の幹部は日常的に会社幹部と交流をもっているようですが、我々の常識ではそれは反組合行為で、発覚すれば追放されます」と述べました。これらの労組は今も「連合」の主要組織です。
日本の選挙制度は大いに問題があります。議会制民主主義の根幹となる国会議員選挙で多くの死票が出ることです。今回の総選挙の比例代表選挙区の各党の獲得率を単純に議員総数465で換算してみました:
政党 ― 得票率 ― 議員数 ―獲得率換算 ―増減
自民 ― 34.66% ― 261 ― 161 ― +100
立憲 — 20.00% ― 96 ― 93 ― +3
維新 — 14.12% ― 41 ― 65 ― -24
公明 — 12.38% ― 32 ― 58 ― -26
共産 — 7.25% ― 10 ― 33 ― -23
国民 — 4.51% ― 11 ― 20 ― -9
れいわ — 3.86% ― 3 ― 18 ― -15
社民 — 1.77% ― 1 ― 8 ― -7
この場合、自公の合計は219で、過半数に届きません。小選挙区制が政権政党に有利なことが見えてきます。狭い地区で政治力を駆使した利権分配で支持を集め、強固な後援組織をつくり、それが選挙で力を発揮します。今回の選挙では、僅差で野党統一候補に競り勝った選挙区が多くありました。負ければ今の利権失うという危機感が組織を一層結束させ、底力が発揮された結果だと推測しています。
利権をきずなにした後援組織は、長年の政権維持によってより強力な選挙地盤を構築させました。利権政治は当然民主政治の敵です。