良い音は、腹筋とタンギングで決まる。

　暑い一日だった。

　クリフォード・ブラウンのウィズ・ストリングスを聴きながら、車に乗って河原へ。途中で５００ｍｌのペットボトルに移しておいたミネラルウォーターを持ってきていないことに気づく。取りに帰るのは面倒だから、そのままアクセルを踏み続ける。
　河原に着くと、日陰を見つけて譜面台を立てる。本当に暑い。この暑さに耐えられるか、しばらくピース・ライトに火をつけて燻らせてみる。すぐに汗が噴き出す。こうなることはわかっていたものの来たこと自体をちょっと後悔する。さてと。。。。、首にかけていたタオルを頭にまきつけてと。
　ツー・ファイブ、ホールトーンスケール、ディミニッシュ・スケールと練習する。スケール練習をきちんとしていないから、ろくなアドリブが吹けない。トランペットが持つ機能を完全に生かすとして、自分の演奏はその３０％にも満たないと思う。でもその３０％は自分にとっては１００％だから、この１００％を少しずつ伸ばしていかなければいけない。もとより、自分が思った音が出ない。ミュートで練習しているだけだと管の鳴らし方がわからなくなる。だから広いところで楽器の響きをあらためて聴いてみなければならない。ロングトーンやタンギングの練習を疎かにしてきた罰で、唇がねらった音を見つけ出せないでいる。譜面を見ながら吹くと唇がより緊張しているのがわかる。Ｅ、Ｅ♭、Ａのキーを使っているだけで緊張してるのがわかる。望んでいるのは、ただパラパラと吹くことではなく、軽くて柔らかな音を出し、きちんとしたタンギングでそれをコントロールすることなのだ。
　１時間半ほど続けていると、虫が寄ってきたり日陰が移動してしまって場所を少しずらしたりといろいろ変化が出てくる。自分の唇や体にも変化が現れる。異常な汗。頭に巻いていたタオルを絞ってみると、ジャーっと汗が滴り落ちた。もう一度しぼると、またジャーっ、またしぼるとジャーっ。結局続け様３回絞っても汗が滴るほど、体はビショビショだった。まいった。まいった。