今日の若い作家達の教養の貧弱さは覆うべからざるものだ。 然し被等が教養の摂取を怠っている訳ではあるまい。 彼等の教養には、 教養を円熟させる何物かが欠けているのである。 例えば一時代前の作家が持っていた古典的趣味という様なものは、 作家の教養を成熟させる或る何物かであった。 以て教養を蓄積し、 以て蓄積された教養の開花を期するという、 言わば教養の根を、 今日の若い作家達は失って了ったのである。
「 若き文学者の教養 」 7 - 一五一 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.53)
「 若き文学者の教養 」 7 - 一五一 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.53)