注:このエッセイは気になっていた友人、Aさんと20年ぶりに連絡が取れたことに触発されて、再校してアップするものです。彼は亡くなったお父様から、朝鮮白磁の大壺を譲り受けたという羨ましい、また、すばらしい話をききました。初稿は2012年4月に書いたものです。
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ミッドタウンのサントリー美術館で素晴らしい展覧会を見てきた。
大阪市立東洋陶磁器美術館が改修工事のために閉館中。おかげで、東京のど真ん中で、安宅コレクションを中心とする「東洋陶磁器の美」展が開かれたのだ。
大阪にも2回ほど見に行っているから、初めてではない物も多くあった。でも、やはり素晴らし物は何度見ても素晴らしい。
実は、最初にこの流れの美術展に出くわしたのは、1960年代の初めに東京上野の国立博物館で行われた「東洋陶磁器美術展」迄さかのぼる。その時受けた印象が、今回、確かなものとして僕自身で再確認できた。とにかくすごい展覧会だ。
何がすごいかというと、東洋の陶磁器の概観が浮き彫りになるからだ。
つまり、作品の質、緊張感、他との比較での順位、正当性、インチキ性、洗練度、オリジナリティ、真似ごと、などが一目瞭然と体感できるからだ。これが僕にとっては、2回目の体験だから、間違いはないと確信している。
今回は、日本のものとしては例外的に唯一、信楽の大壺出ていたが、そのほかは日本のものは全く出ていなかった。しかし確信はゆらがない。
前回同様、今回も確信したのは、東洋陶磁器の順位づけとしては、間違いなく次の順序だ。
1. 朝鮮の青磁から白磁
2. 中国の青磁・白磁
3. 日本の陶磁器
今回は、日本のものは一点だけだったので、自分の中の日本の陶磁器の記憶・印象を引き出したものだ。
何の順位かというと、上にあげた作品の質による順位づけだ。
中国のものにも悪くはないが、どちらかというと、武骨で美しくない。 唐三彩とか、磁器とか、技術的な貢献は大だけれど作品が美しくはない。心に響いてこないのだ。作者の気持ちが、僕に伝わっては来ないのだ。例外は「飛青磁花生」ほか数点だった。
時代が下がって、ヨローッパを意識し始めた景徳鎮にでもなったら、もうこれは商品でしかない。
その点、朝鮮の青磁から白磁への時代を代表する15~8世紀の作品に接すると、そこには、美しさと、僕自身に語りかける作者の緊張感と、人間の手による「作る人」が現れていて、見る人を魅了する。
技術的には、中国で始まり、朝鮮で磨かれ、それが日本にわたってきたわけだが、技術に磨きがかけられたのは、間違いなく朝鮮だ。しかも、もとは雑器だったのだから、素直な姿がより透けて見える。飾りが皆無だ。
日本のものは、今回見られなかったが、僕の知っている限り、朝鮮を超えるものはない。どちらかというと、真似ごとにしか見えない。
唐津、有田をはじめ、九谷、志野なども、どう見ても、作者の「ちょっとこれでどうだ」という心が臭い出してきていやになる。これは茶道具として、もてはやされた特徴が透けて見えてくる。緊張感などみじんもない。
結果としては、われわれ日本人は、つまらない真似事の陶磁器に惑わされているというわけだ。
朝鮮の磁器で、心を打ったものをいくつか厳選してあげると、次のようなものが浮かび上がってくる。
一番は、何と言っても「青花窓絵草花文面取壺」だろう。

何度か見ているのだが、僕の頭の中ではもう少し小ぶりだと思っていたが、どう
して、大きなものだった。面取りが美しい。形が美しい。そして新たな発見もあ
った。僕は、ずっと“楕円形”の壺を記憶していたのだが、今回見ると、真円だ。
これにはびっくりした。温かみと一緒に緊張感がみなぎっている。
二番目は、白磁の「白磁大壺」だろう。

こわされるという不幸にあっているが、ゆたかな、ゆったりとした存在感は偉大。
こんなのを、自分の部屋にでもいておけたら、素晴らしいと思うけど…。
三番目は、「青花草花文面取瓶」だろう。

見たらわかるとおり、面取りといい、染付といい、簡素で、しかし緊張感に満ちている。
ひとつ今回、おもしろい発見をした。
こうした磁器の壺の世界に、物語性を持ったものを発見したのだ。
それは「青い花虎鵲文壺」
カササギガ飛んできて、木に止まり、虎(僕には猫に見えた)に話しかけ、ねこ(虎)は、カササギの話を聞いて体を長~~~くして歩み去る。楽しかった。
安宅の二代目から、伊藤忠、そして住友グループの思慮深い取扱いを受けて、あちこちに散らかることなく、素晴らしいコレクションを、そのまま大阪市に寄贈されたことは尊敬に値する。 大阪人も“商売、商売で、金もってこい!”だけではではないようだ。
ゆたかな気持ちになって、ミッドタウンを出た僕は、その後、三日程、画集をくりながら幸せだった。
P.S.
・もしオリジナルをお読みになっていたら、ゴメンナサイです。
・使用した絵は、展覧会で購入した絵葉書をスキャンしたものです。
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