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蔵馬ウケネタ、日常のことなど思った事を綴る。

小さな手のひらに、花を添える

2023年04月02日 21時41分28秒 | 蔵馬受けblog内小説
少しぶりに蔵馬受けの小説です。サイトではなくブログないで申し訳ないのですが、
あらすじと言うより、こういう場面があってもいいなと思い書いてみました。

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武術会で、決勝が終わった後に、「心配させやがって」みたいに言って
飛影が蔵馬を抱く、そのあとの話です。

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「あっ――――」
激しい風が吹いた。決勝の終わり、その数日後に二人は海辺にいた。
乾いた土ぼこりが舞い、蔵馬の長い黒髪を乱していく。
はっと、飛影が蔵馬を見つめた。人一人分空いた二人の距離が、縮まっていた。
ぐらっと傾いた蔵馬の身体を飛影が抑え込んでいた。

膝をつきそうになった蔵馬の、右手を掴めば二人の視線が交わった。

「しっかりしろ、まだ――」
言いかけて、飛影は口を閉ざした。まだ傷が治っていないだろうと、言いかけてやめたのだ。
鴉との闘いで流した血まみれの身体が、まだ鮮やかに記憶に残っている。
「…大丈夫、ですよ、ちゃんと手当てしてます」
小さく、引かれた腕を見ながら蔵馬が言った。
真っすぐ見つめ返されると、深い碧色の瞳に吸い込まれそうだ。
「痛むなら言え、馬鹿が」
口を開けば優しい言葉が出ないのはなぜだろう。
あの時、いいと言った蔵馬の必死な瞳が僅かに蘇る、けれどそれとは違う……もどかしさの漂う色だった。
「なんだ」
人一人分より近い距離で二人は見つめ合っていた。
「……終わった闘いは振り返らなくていい。今お前が…」
生きているなら、と口に出かけて飛影は続けられなかった。こんな言葉……発したことがないのだ。
「…飛影……あの…魔界に」
そっと、俯きながら口を開いたのは蔵馬だ。
飛影の袖をそっと掴み、そして乱れた黒髪をそのままに口を開いた。
「魔界に、帰るん…」
「だから何だ」
言われ、蔵馬が息を飲んだ、一瞬手を握り、そして遠くの船を見た。
「……魔界の…どこに」
「何が言いたい」
もどかし気に、飛影は返した。
……戸惑うような蔵馬の瞳が、飛影の手に重なっていた。
「……もう…あえないのかと…」


紡がれた言葉に、ため息を隠したのは飛影のほうだった。
あれほど強く立ち向かっていた蔵馬の姿が、小さく見える。
妹である雪菜よりも小さく華奢に見える、力を込めたら潰してしまいそうなくらいだった。
人間の…幽助のそばにいる女よりもずっと小さく見える。飛影を見ているくせに、飛影の瞳から
わずかにそれた部分を見ている。
「誰が、会えないと言った」
「だっ…て」
つん、と触れたのは飛影の指だった。
蔵馬の小さな額の真ん中を、飛影は突いていた。
「…おれが、会いに行ってはいけないか」

はっと、蔵馬が後ずさった。


「お前を抱いたのが……単なる衝動だと思うか」

言われた言葉に、蔵馬ははっきりと視線を逸らした。

「お前が生きていることを、確かめたいと言ったら…駄目か」
蔵馬の手を、今度は両方飛影は掴んでいた。
熱い、飛影の手のひらだった。

「俺が、会いに行く」
母親を慕っていることは分かっている。それは恋でも愛でもないことも。
けれどいつか、母よりも大事な存在になって見せる……。言わないけれど思っていた。

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武術会の最中
蔵馬を初めて抱くのは凍矢戦で復した後(と言う捏造)か
鴉戦の後か、というどちらでもおいしい気がするのですがね。

ラストの日に思い切り熱い告白をして蔵馬を抱くっていうのもいいし…。
でも
二人はすれ違うということもありそうです。

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バレンタイン小説 キスの甘さ /☆通販案内

2023年02月19日 17時08分34秒 | 蔵馬受けblog内小説
お久しぶりです。花粉にも寒さにも負けず、生きていけたらいいなと思っております。
最近ちょっとあまり小説が浮かばず、blog内小説で、という感じになっておりますが。
バレンタイン小説の続きを考えてみました。


バレンタイン小説と統合して載せてみます。

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「キスの甘さ」

静かに、飛影は広い廊下を歩いた。百足の中でも上層部の部屋があるのは上の階なのだ。
何層もの階段を上り、ため息をついて飛影は廊下を歩いた。
今回は僻地への視察で……対して相手にならない部族の討伐に、行った手間の分だけ
無駄だったと、思いながらそれでも口の端を上げる。

知っている。この気配。
部屋の中にいるその人の空気に、気付かないはずがない。

だから、そっと扉を開けた。キイ、と音も立てずに……。

……蔵馬……
声を飲み込み、静かにベッドに近づいていた。
夜になりかけの空が、窓から見えた。
濃い青に染まった空が、ベッドに眠る飛影の肌を照らしていた。
魔界のものより白い肌が、月と空に浮かぶ上がれば、一瞬飛影は息を飲んだ。

起こしたくは、ないけれど……でも、今日は……。
そう思えば、そうっと手を握っていた。座れば、小さく軋むベッドで、飛影は蔵馬を見つめた。
見ていれば、ずっとこのままで……思いながら、それでも瞳が開けばと胸がざわつく。

いるのは、廊下を歩く時から分かっていた。
だから、ベッドのその人に、飛影は近づいた。
百足の、飛影の部屋。

閉じられた瞳が、…知ってはいたが、きれいだ。
深い碧の瞳が見つめるその真っすぐな視線が、愛しい。

口に指を近づけ…差し込んだ小さな塊。
……だから、な

今度は、飛影は言葉を音にしていた。
だから、起きろ、と……。

ん、と開く小さな口。

ゆっくり、瞳が開いた。
……飛影、と言う声が、した。
小さく、蔵馬は笑っていた。

「おかえり…なさい」

甘い、と蔵馬。

「バレンタインだからな」

飛影は、小さな塊を自分も含んでいた。

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ふっと、瞳を開ければ、隣にあったのは飛影の大きな身体だった。
自分を包む様に手を伸ばし抱き込んでいる飛影が、閉じている瞳が美しい。

そっと、頬に手を伸ばせばその指を掴まれた。
「……あ」
小さく声を落とし、蔵馬が青と黒の狭間の飛影の瞳を見た。
深く揺れる飛影の瞳がまだ現実を取られずにいる緩やかな感覚が、優しかった。
「来ていたのか」

言ったのは、飛影だった。
「……うん」
恥ずかし気に言って、蔵馬は飛影の黒衣に顔を埋めた。
「何してる」
振ってくる飛影に、顔を上げて蔵馬が笑った。
「チョコ…ありがとう」
「お前のだけだぞ」
こつん、と蔵馬の額を突くと、ぎゅっと抱きしめた。

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という感じで たまには甘くて素直な飛影もいいかなと思い、書いてみました。

こういう時飛影は素直に言葉を伝える気がします。
飛影は大事な時には言うんだ!!と言う私の主張です。
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2022冬~2023年 1月までに出した本を、 通販しております。
その通販のお知らせを、サイトトップに載せておきます。

サイトトップ➡Pink &Cherry




直接通販サイトに行きたい方はこちら➡
フロマージュ様



🌹R18 鈴蘭の口づけと秘めやかな花の蜜  飛蔵
蔵馬の片思い小説です。

ある屋敷の主人、飛影。世話係蔵馬の話。飛影に恋をして、
その気持ちに耐え切れず主人の部屋に忍び込む。
言葉に出来ず、近くにいればいるほど想いが募る。優しくされればされるほど苦しくなる。

そんな蔵馬に目をつけ、手に入れようと手を伸ばす男がいた……。
(鴉)

SEIさまの綺麗な絵が表紙です!!


🌹月に溶ける花の恋歌 R18

飛影に会いたくて魔界に足を踏み入れる蔵馬。しかし足を踏み入れた街に取り込まれ、
男に襲われてしまう。飛影に見つかり抱きつく蔵馬。飛影を呼び助けを求めていた。

この話はR18が3回入ります。




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翻弄のジュリエット (バレンタイン小説掲載)

2022年09月18日 21時55分02秒 | 蔵馬受けblog内小説
昨日ぶりです。さくらです。台風は皆さま大丈夫でしょうか。
無理はなさらず、おうちの中でゆっくり同人誌でも読んでいるのもいいかもしれないですね。
私はフィギュアスケートとかアニメ見てばかりです。

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少しだけ、スマホのお話をさせてください。

パソコンサイトと同じ内容ですが、スマホが主流の時代、
スマホのほうが見やすいかなと思いスマホサイトを作りました。
まだパソコンサイトの小説全部は移せていないのですが、今月から
速いペースでコピペしていこうと思っています。

それで、スマホサイトを更新しました。


翻弄のジュリエット

2016年のバレンタイン小説ですね。


バレンタイン小説、毎年やっていると何を書こうか悩むのですが、今回はいっそ
躯に悪戯されるものを!!と思い書いてみたんですよね。
私の中では躯様は二人を認めつつ面白がっている感じです。

ちなみに、別に飛影は百足に帰属意識は3割くらいでいいと思っています。
百足は組織としてはしっかりしていて、飛影は頭がいいから、そういうことを把握して、
「ここにいることには意味がある。今の魔界の状況を把握できる。
今の魔界は勢いが強さだけではだめだ」と分かっているからいる、
と言う感じでいいと思っています。

躯様は長く生きていて、そのうち衰退していく…としたら、
そのころ飛影は独立していいかも。
その前にトーナメント優勝してしまいそうですよね。

前の日記でも書きましたが、次のトーナメントで飛影が優勝して
蔵馬を嫁のにするというのが定石で、あり得ると思います!!

と言うわけで、スマホサイトのバレンタイン小説→こちらです。



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それから、パソコンサイト、スマホサイト両方ともQRコードから飛べるようにしました。


ここにスマホを充てると跳べます!!

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月が綺麗だから…飛影と、蔵馬(通販のお知らせ※)

2022年09月06日 22時26分54秒 | 蔵馬受けblog内小説
ちょっとぶりです。さくらです。
最近は、蔵馬と飛影のロマンス小説を書いています。とても嬉しいお知らせがあるので
また改めて告知!します!!(๑→ܫ←)ノ飛び上がるほど嬉しい告知です。

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最近、帰りに月が綺麗だなと思いました。
(夏目漱石じゃありませんよ)

月が、暗い空にふっと浮かんでいて綺麗だな、星も周りになくて、
月だけが浮かんでいるの。
そういうのを見ていたら、蔵馬もこうやって見ていて魔界に思いを
馳せたりするんだろうな、
と思ったのでした。

飛影も同時に魔界で思っていたりしてね。

飛影が、原作3年後くらいにはトーナメントで優勝しちゃったりして。
で、蔵馬のこと引き寄せて公衆の面前でキスをしちゃう。
と言う妄想をね…前にも書いたような気がするけど

飛影なら!!ある!!と思いませんか!

飛影にはそういう感じで強引でいて欲しいんですよね。

→でも、蔵馬もたまには積極的で良いかな…と思ったのが、
前回の日記
マシンガンレインと言う曲のイメージで、小説考えています、と言う話を書いたやつです。

今月中にアップできたら良いなと思います。

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それから、この間フロマージュさまで通販を始めた件です。
※再販した本のお知らせ フロマージュ様
こちらで通販出来ます




ダウンロード販売もありますので、どうぞ読んでやって下さい。

と言うか、本当に、見ていただけたら嬉しいです。
ダウンロード販売の方が読みやすくて楽な方もいると思いますので。
ダウンロードもしてやって下さい。

※アストロゲイション
→ ある避暑地に行く幽助や蔵馬たち。都会とは違う涼やかな景色に癒やされている蔵馬達。
けれど、ある少女に出会い、蔵馬が暗く気持ちを落としていく。
悲しく切ない記憶が蔵馬を苦しめる。
飛影の前でそれを言えない蔵馬の手を取る飛影。
「お前の罪は俺の罪だ」

他、霊界で捕まった頃の蔵馬と飛影のすれちがいの話収録。



※No Way To Say R18※
宮廷での恋の物語。サイトで載せている話と同じですが、本の形で欲しいと
言ってくださる方がいるので再販しました。

宮廷で出会った、笛吹きの蔵馬と、皇族の飛影の恋の話。



ある日出会った二人は恋に落ちる。
けれど飛影の兄の鴉が、二人を引き裂いていく。

甘く幸せなときは長くは続かなかった。

引き裂かれても飛影を想い、飛影は蔵馬を想い続ける。
小さな恋の話です。
R18

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それから。

実は、上の二つ以外に 在庫が出てきた本があります。
Pinky Pinkyと言う本です。



「魔界で二人で暮らし始めた飛影と蔵馬。幸せに、甘く二人は暮らしていた。
二人、仲睦まじい事で街では有名だった。

しかし、あることをきっかけににして、蔵馬は姿を消す。

飛影のほしいもの、それが分からなくなった蔵馬、

蔵馬に伝えたいことをうまく伝えられない飛影。

~~~蔵馬の妊娠未遂の話です注意~~~」

これを通販どうするか迷っています。BOOTH通販にするかフロマージュさまにまた頼むか。迷い中です。

もし希望があればWEB拍手で伝えてくださると有り難いです。

どっちがいいか、「BOOTHがいいです!」とか伝えてくださると有り難いです。
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この傷は鼓動の向こう側 飛蔵小説

2021年08月23日 20時22分08秒 | 蔵馬受けblog内小説
ツイッターで書いていた小説を、しっかりした形にしてみました。
結構気に入っている小説なので
感想とかコメントとか合ったら
ブログ拍手とかWEB拍手でいただけたら嬉しいです。


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武術会…激しい戦闘が終わり、木々のざわめきも、葉がこすれる音だけを、
響かせていた。
ホテルの脇の森…。色々なものの呻きや悲しみを飲んだ森は、何も言わずに
ただ木々をそよがせる。


「…蔵馬」
飛影は、歩を止めた。
夕刻の空が、飛影の黒い服をオレンジに一瞬染める。
どんなときでも、朝は来て夜は又訪れる。…苦しいことがあっても、涙に埋もれても。
そして、誰かが命を落としても。


森の入口…その人はいた。と思ったのは、飛影から見えるその人も…同じだった。

ひとり、蔵馬は歩を止めた。

二人は、手を伸ばせば届くほどの…遠くもない距離で、向かい合った。

「怪我はいいのか」
大木に背を預け、飛影は言った。機嫌が悪く見えるのはいつものことだ。
本当に機嫌が悪いときは言葉を掛けられないと、蔵馬は知っている。
それにそんなとき多分誰にも言葉をかけないのも知っている。飛影のことは…自分が
一番知っているつもりだ。一番近くて一番信じているつもりだ。

「おかげさまで、大分良いですよ
ほら、と腕をまくり…そして袖をまた直す。半分だけ…表面だけ…傷跡が薄くなっている腕。
「もう大丈夫…なおりま…っ!」
袖が擦れた瞬間に…漏れた声。
表面はきれいに戻っても、腕を動かせば皮膚が避けそうな痛みが走る。
チラッとそれを見て、飛影は小さく口を開いた。笑っているようにも思える口が、何を言うのか
分からない。
「人間につきあって、そのザマか」
はっと、蔵馬は飛影を見た。
「飛影?」
「教えろ、なぜ武術会に出た」
刺さるような声だった。乾いた風が二人の間を駆けた。
「なぜ…?」
どういう意味…。
理由は分かっているはずなのに。
「一度人間に関わったから、か」
何が言いたいのか、理解出来ず、蔵馬は半歩下がった。苛立ちのような飛影の言い方。
「人間に…」
突っかかる言い方に、目を丸くした…、どういうつもりか分からないが、
なぜこんなに嫌みな言い方をするのか…。こちらも、自然穏やかには返せなくなる。

「そうですよ、もう、俺達は逃げられない」
ぐっと、拳を握って、蔵馬は言った。
「そう思ったから…!」
蔵馬は続きを言えずうめいた。
ガッと…華奢な身体が、木に押し付けられていた。
ゴツゴツとした木の皮が、蔵馬の背に当たる。腕の奥が悲鳴を上げた。
「なぜ!」
逃げなかった。
グイと、蔵馬の胸を掴みあげて飛影は荒々しく言った。
「にっ…げ…?」
シャツのボタンが一つ、弾け飛んだ。あっと、蔵馬の声にならない音が漏れた。
赤い…まだ消えない…血の跡…。わずかに見える蔵馬の白い肌。
この肌が、あのとき、血まみれになった。
掴みあげたシャツの中…蔵馬の胸から、小さな音がした、生きている証。心臓の音。
「お前だけなら、霊界に媚びれば逃げられた筈だ」
「ひ、えい?」
硬い木にこすれるたびに、背中までがピリピリと、痛みを訴える。
「お前だけ、逃げられた筈だ、そうしたらあんな!」
爆発音とともに倒れ込んだからだを見て、ときが止まったかと思った‥。
「…だっ…てっ…」
苦しげに、蔵馬が言った。
「どちらにしろ…俺は…命を狙われる」
妖狐蔵馬が人間界にいるのなら。
「それに…あなただって…分かっているはず…」 
表面だけの治癒は回復全てではない。蔵馬の背に力が入る…飛影はそれをフンと見た。
強がっても、妖狐の力が戻ってもこの身体が傷ついていないはずはない。

蔵馬は右腕を抑えながら言った。
「逃げられない…こと…」
頬が触れるかと言う距離で、ふたりは見つめ合った。
「あなただって…逃げなかった…」
「俺は!」
違う。
こんなことを言いたいんじゃない。
あのとき…フラフラになりながら鴉に立ち向かった姿は、まだ脳裏に焼き付いている。
叫びたかった。
こんな大会二人で無視すれば良かったと。
そんなこと、できないことは分かっていた。

けれど本気でそう思ったから、今がある。
本気で…鴉に向かっていく蔵馬を浚いたいと思った。逃げたくて逃げたくなくて
そんな負けのようなことは出来なくて。
結局闘うしか無かった。知っているつもりだ。
悲しいのか苦しいのか分からない自分がいた。
「違う!お前が…」
ふっと、飛影は手を離した。
シャツが弾けたボタン以外、きれいな形に戻った。
「…お前が!命を賭けるから!」
どうしようもない想いが胸を焼いた。
「…じゃあ…」

小さな、蔵馬の声だった。
「じゃあ…負けて…好きにされても…良かったんですか…」
責めるように、蔵馬は言った。
「あなたに会えないくらい、傷つけられても…?」
シャツの、ボタンが弾けたところを庇いながら、蔵馬は俯いた。
飛影は、なにも、言えなかった‥。
遠くで鳥が鳴いた。
沈黙は、小さな声に破られた。
「俺は…」
飛影は、傍らの剣を見た。
「お前がいないなら意味がないと、思った」
だから、蔵馬がシマネキ草を植えたあの時も、全て燃やすつもりだった。
「…飛影」
冷たい風に肩を震わせ、蔵馬は消えそうに、言った。

「ごめんね」
ごめんなさい…。

「あなたが…好きです」

・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・

なんか…こういうやりとりがあっても良いのではないかなと思うので。
飛影には色々な葛藤があった頃だと思うし…

蔵馬と共にいるには

人に流されそうで人に騙されそうな蔵馬のそばにいないと
心配だからだし、
強くなりたいし…→だから躯のところに行った(と思ってる飛蔵脳))
なので、
このころから伏線があったんじゃないかな…。


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