ブログ内小説続きます。今回はちょっと甘ったるい飛蔵です。
このあと、いちゃつきが始まりますが…ブログ内小説でどこまで書いていいのか分からないので、
二人が素直な感じもいいかなと思いました。…と言いつつ、蔵馬は躯さまに遊ばれた感じになっていますけどね。
私、躯さまの手の上で転がされる蔵馬、好きなんです。
ちょっかい(本気じゃだめ、ちょっと可愛い子をいじりたいみたいな)を出してもいいかな……。
☆:::::::::::::::☆:::::::::::::::☆::::::☆:::::::::::::::☆:::::::::::::::☆::::::
バサッと、書類が手渡され、呆れた顔で女王は相手を見た。
「また随分と無愛想な報告だな」
「これで充分だろうが」
何枚も重なった書類を見つめ、躯は机の向こうの飛影を見た。
バンと、執務室の扉を閉じて飛影は背を向けた。
おい、と躯の声が聞こえたが、黒衣を翻して飛影は廊下を歩いた。
荒れているわけではない、ただ苛立ちの混ざる妖気。
穏やかさのかけらもない、グレーの妖気を纏う飛影に、すれ違う誰も声を書けることができない。
は、と息を吐いた。
腕に残る傷も、今の飛影にはかすり傷でしかない。
『これで全部だ』
躯に書類を押し付けて、そのまま背を向けて部屋に向かう。
ここ10日……大して面白くもないパトロールに飛影は苛まれていた。
遠くの森に、次々と落ちた人間たち……落ちた衝撃で記憶が混乱し、傷を負った者までいた。
時雨を呼び出し『早く来い!』と言霊で怒鳴り散らした。
帰りに降った雨が飛影の服を濡らし、魔界の空を飛びながらいら立ちだけが募っていった。
木々に擦れた腕に、かすり傷がついた。チッと舌打ちをしたのは何回か……。
沁み込んだ水が、黒い服を重くしている。
廊下を歩き、飛影は傷だらけの腕を見た。
『この薬塗って、ほら……』
腕を出して、と瞳を揺らしてさすってくる存在が、ふと浮かぶ。
「蔵馬……」
そっと呟き、窓の外を見る。
百足の外では、何組もの親子がはしゃいでいた。新しい年の始まり…子供たちは祝いの花束を
もらい、外を駆け巡っていた。百足の中でも、始まりの日には花火があがり酒を酌み交わす。
一年の始まりの日から、数日経っていた。飛影はその日、ここにはいなかった。
ふと、その人の笑顔が浮かんで、消えた。
「もっと気をつけて……」
小さな傷でも、顔を暗くしてそういう蔵馬を、飛影は何度も見た。
「仕方がないだろうが」
このやりとりも、何度も繰り返した。何度も会えるわけではない、一年の数回に、飛影の小さな傷も、
蔵馬は見逃さなかった。
……声が、聴きたい。
妖怪は数日眠らなくても身体を壊すことはない。それでも……襲ってくる妖怪とやりあうほうがずっと楽だ。
殴り合い妖気を爆発させる、一日それでつぶれても、そのほうがずっとましだ。
高めた妖気をぶつけ合った後の、身体から嫌なものが抜け落ちたような感覚のほうがずっといい。
疲れが、確実に飛影の神経を苛んでいた。刺激にもならないパトロールの日々。
……会いたい。
こんな風に思うのはきっと向こうも同じで……。
ハッと、飛影は指先を見た。心配そうに蔵馬が握ってくる指先。会いたかったと抱き着く腕。
唇の温かさを、思い出す。
「蔵馬……」
こんな寂しさを、蔵馬も味わっているのだろうか。腕を伸ばしてもそこにはいない存在に、
飛影はぐっと腕を握った。
☆:::::::::::::::☆:::::::::::::::☆::::::☆:::::::::::::::☆:::::::::::::::☆::::::
荒々しく部屋の扉を開けた。ガン、と剣を壁に押し付けるように投げた。
カラーンと、剣の鞘が壁にぶつかる音まで神経に触る。
笑い声が、部屋の窓の外からも聞こえた。何がそんなに楽しいのか、ただ1年が始まるだけだ。
悲しいのか何なのか……自分でもはっきりと分からない衝動に駆られ、飛影はベッドに近づいた。
ベッド脇のチェストに置かれた瓶をとり、ぐいと飲み干した。
喉の渇きがおさまらなかったのだ。水を飲み干し……ベッドを見た目が留まった。
なにか、白いシーツが少し盛り上がっている。
子犬か何かがいるようなほど小さく、シーツが少しあがっている。小さな山を作っている形が、
そっと動いた。
少しずつ、飛影の妖気が揺らめいた。
そっと、そっと手が伸び…シーツをずらした。その瞬間、飛影の息が止まった。
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シーツの端から見える、長い髪……。覚えのあるこの気配。
「んっ……」
小さな声がして、シーツが剥がれた。ゆらゆらと、夢の中にいたように丸い瞳が転がり、飛影を見た。
「蔵馬……」
言葉をなくした飛影の、手が伸びた。小さな肩にそっと触れ……顔が近づいた。
「おかえり、なさい」
花のような笑顔で、蔵馬は身体を起こした。
グレーに染まっていた部屋の空気が、蔵馬が名を呼んだ瞬間に、春の綻びのような輝きに満ちた。
「躯に、呼ばれて……それで」
「はっ…?」
ベッドに座り込んだ飛影の肩が上がった。
「百足の人に使う薬届けてくれって…昨日…」
言いながら、それでも蔵馬は、はにかんでいた。
『おお、今日暇だろ!ちょっとこっちへ来てくれないか』
躯から通信が入ったのは昨日のこと。
『最近隣の国の国境でもめ事が多くてな。けが人が出ているんだ、薬届けてくれよ』
ブツッと、そこで画面が切れた。
「え、ちょっと…躯!」
言ったけれど、通信を返しても躯から返事はなかった。
―――飛影は…
聴こうとしたけれど、出来なかった。
百足に来るしかなかった。いいように使われている…いつまでパトロールか、教えてもくれない。
でも、気が付いたら足が向いていた。魔界の穴をくぐると、躯がそこに立っていた。
『わ!!っ――…』
即座に抱えられた身体…躯は、蔵馬の身体を抱えていた。
『一人で魔界をうろつくよりいいだろ』
執務室で、蔵馬は小さな袋を渡した。
「薬、これです」
おずおずと、蔵馬は言った。小さな袋を渡し、そして唾を飲んだ。
その瞳が、扉の外をうかがうように彷徨うと、躯は笑った。
『…飛影に、会いたいんだろ』
そして言ったのだ。
『ベッドで、待ってろよ。あいつ、ずっと会いたがってるんだぜ』
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「ごめん……なさい」
肩を落とし、蔵馬が飛影を見た。
「勝手にこんな…ところに――」
続きの言葉が、消えていく。『だって…』その言葉の裏は、わかっている。
『だって、会いたかったから、ここに来たら会えるかと……』
☆:::::::::::::::☆:::::::::::::::☆::::::
ベッドの中に隠れていたら喜んでくれるだろ、と言って笑ったのは躯だった。
『そんなこと』
赤くなり俯いた蔵馬の顎を上向かせ、躯は耳元で囁いたのだ。
「最近ストレス溜まってるみたいだぜ。お前がベッドで待ってたらあいつも機嫌よくなるだろ』
街にでも出かけて来いよ、と……蔵馬に握らせたチケット。
魔界に出来た、繁華街の奥にある、観覧車のチケット。
☆:::::::::::::::☆:::::::::::::::☆::::::
「いきなり来たら、どんな顔するなって…思って…」
言った瞬間に、手が伸びた。
飛影の腕だった。
強く、抱きしめられていた。
「よく……来たな」
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このあと、いちゃつきが始まりますが…ブログ内小説でどこまで書いていいのか分からないので、
二人が素直な感じもいいかなと思いました。…と言いつつ、蔵馬は躯さまに遊ばれた感じになっていますけどね。
私、躯さまの手の上で転がされる蔵馬、好きなんです。
ちょっかい(本気じゃだめ、ちょっと可愛い子をいじりたいみたいな)を出してもいいかな……。
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バサッと、書類が手渡され、呆れた顔で女王は相手を見た。
「また随分と無愛想な報告だな」
「これで充分だろうが」
何枚も重なった書類を見つめ、躯は机の向こうの飛影を見た。
バンと、執務室の扉を閉じて飛影は背を向けた。
おい、と躯の声が聞こえたが、黒衣を翻して飛影は廊下を歩いた。
荒れているわけではない、ただ苛立ちの混ざる妖気。
穏やかさのかけらもない、グレーの妖気を纏う飛影に、すれ違う誰も声を書けることができない。
は、と息を吐いた。
腕に残る傷も、今の飛影にはかすり傷でしかない。
『これで全部だ』
躯に書類を押し付けて、そのまま背を向けて部屋に向かう。
ここ10日……大して面白くもないパトロールに飛影は苛まれていた。
遠くの森に、次々と落ちた人間たち……落ちた衝撃で記憶が混乱し、傷を負った者までいた。
時雨を呼び出し『早く来い!』と言霊で怒鳴り散らした。
帰りに降った雨が飛影の服を濡らし、魔界の空を飛びながらいら立ちだけが募っていった。
木々に擦れた腕に、かすり傷がついた。チッと舌打ちをしたのは何回か……。
沁み込んだ水が、黒い服を重くしている。
廊下を歩き、飛影は傷だらけの腕を見た。
『この薬塗って、ほら……』
腕を出して、と瞳を揺らしてさすってくる存在が、ふと浮かぶ。
「蔵馬……」
そっと呟き、窓の外を見る。
百足の外では、何組もの親子がはしゃいでいた。新しい年の始まり…子供たちは祝いの花束を
もらい、外を駆け巡っていた。百足の中でも、始まりの日には花火があがり酒を酌み交わす。
一年の始まりの日から、数日経っていた。飛影はその日、ここにはいなかった。
ふと、その人の笑顔が浮かんで、消えた。
「もっと気をつけて……」
小さな傷でも、顔を暗くしてそういう蔵馬を、飛影は何度も見た。
「仕方がないだろうが」
このやりとりも、何度も繰り返した。何度も会えるわけではない、一年の数回に、飛影の小さな傷も、
蔵馬は見逃さなかった。
……声が、聴きたい。
妖怪は数日眠らなくても身体を壊すことはない。それでも……襲ってくる妖怪とやりあうほうがずっと楽だ。
殴り合い妖気を爆発させる、一日それでつぶれても、そのほうがずっとましだ。
高めた妖気をぶつけ合った後の、身体から嫌なものが抜け落ちたような感覚のほうがずっといい。
疲れが、確実に飛影の神経を苛んでいた。刺激にもならないパトロールの日々。
……会いたい。
こんな風に思うのはきっと向こうも同じで……。
ハッと、飛影は指先を見た。心配そうに蔵馬が握ってくる指先。会いたかったと抱き着く腕。
唇の温かさを、思い出す。
「蔵馬……」
こんな寂しさを、蔵馬も味わっているのだろうか。腕を伸ばしてもそこにはいない存在に、
飛影はぐっと腕を握った。
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荒々しく部屋の扉を開けた。ガン、と剣を壁に押し付けるように投げた。
カラーンと、剣の鞘が壁にぶつかる音まで神経に触る。
笑い声が、部屋の窓の外からも聞こえた。何がそんなに楽しいのか、ただ1年が始まるだけだ。
悲しいのか何なのか……自分でもはっきりと分からない衝動に駆られ、飛影はベッドに近づいた。
ベッド脇のチェストに置かれた瓶をとり、ぐいと飲み干した。
喉の渇きがおさまらなかったのだ。水を飲み干し……ベッドを見た目が留まった。
なにか、白いシーツが少し盛り上がっている。
子犬か何かがいるようなほど小さく、シーツが少しあがっている。小さな山を作っている形が、
そっと動いた。
少しずつ、飛影の妖気が揺らめいた。
そっと、そっと手が伸び…シーツをずらした。その瞬間、飛影の息が止まった。
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シーツの端から見える、長い髪……。覚えのあるこの気配。
「んっ……」
小さな声がして、シーツが剥がれた。ゆらゆらと、夢の中にいたように丸い瞳が転がり、飛影を見た。
「蔵馬……」
言葉をなくした飛影の、手が伸びた。小さな肩にそっと触れ……顔が近づいた。
「おかえり、なさい」
花のような笑顔で、蔵馬は身体を起こした。
グレーに染まっていた部屋の空気が、蔵馬が名を呼んだ瞬間に、春の綻びのような輝きに満ちた。
「躯に、呼ばれて……それで」
「はっ…?」
ベッドに座り込んだ飛影の肩が上がった。
「百足の人に使う薬届けてくれって…昨日…」
言いながら、それでも蔵馬は、はにかんでいた。
『おお、今日暇だろ!ちょっとこっちへ来てくれないか』
躯から通信が入ったのは昨日のこと。
『最近隣の国の国境でもめ事が多くてな。けが人が出ているんだ、薬届けてくれよ』
ブツッと、そこで画面が切れた。
「え、ちょっと…躯!」
言ったけれど、通信を返しても躯から返事はなかった。
―――飛影は…
聴こうとしたけれど、出来なかった。
百足に来るしかなかった。いいように使われている…いつまでパトロールか、教えてもくれない。
でも、気が付いたら足が向いていた。魔界の穴をくぐると、躯がそこに立っていた。
『わ!!っ――…』
即座に抱えられた身体…躯は、蔵馬の身体を抱えていた。
『一人で魔界をうろつくよりいいだろ』
執務室で、蔵馬は小さな袋を渡した。
「薬、これです」
おずおずと、蔵馬は言った。小さな袋を渡し、そして唾を飲んだ。
その瞳が、扉の外をうかがうように彷徨うと、躯は笑った。
『…飛影に、会いたいんだろ』
そして言ったのだ。
『ベッドで、待ってろよ。あいつ、ずっと会いたがってるんだぜ』
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「ごめん……なさい」
肩を落とし、蔵馬が飛影を見た。
「勝手にこんな…ところに――」
続きの言葉が、消えていく。『だって…』その言葉の裏は、わかっている。
『だって、会いたかったから、ここに来たら会えるかと……』
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ベッドの中に隠れていたら喜んでくれるだろ、と言って笑ったのは躯だった。
『そんなこと』
赤くなり俯いた蔵馬の顎を上向かせ、躯は耳元で囁いたのだ。
「最近ストレス溜まってるみたいだぜ。お前がベッドで待ってたらあいつも機嫌よくなるだろ』
街にでも出かけて来いよ、と……蔵馬に握らせたチケット。
魔界に出来た、繁華街の奥にある、観覧車のチケット。
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「いきなり来たら、どんな顔するなって…思って…」
言った瞬間に、手が伸びた。
飛影の腕だった。
強く、抱きしめられていた。
「よく……来たな」
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