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蔵馬ウケネタ、日常のことなど思った事を綴る。

桜にはまだ早き恋 blog内小説 

2023年03月02日 22時49分31秒 | イベント、同人誌関係
お久しぶりです。皆様お元気ですか。暖かいとか言われても夕方「寒いじゃん!」とぶつぶつ言いながら
帰っています。
毎年「冬の存在意義とは!!なんだーー!!」と文句を言いながら過ごしています。

という、いくつになっても変えられない主張でした。

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最近、文章が浮かばないというか、新しいあらすじが浮かばなくて立ち止まったりして
しまっていて
更新が遅くって申し訳ないです。

ちょっとした話は浮かぶんですけどね――――。
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ですが、何も書かないのもよくない、余計に書けなくなるなと言う感じで、
そろそろ蔵馬の(非公式)誕生日なのでちょっとだけ書いてみました。

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ため息をついて、ゆっくりと蔵馬は歩いていた。もう、街灯の時計を見ても22時を過ぎていた。
「――ふ、うっ……」
重い息を吐けば、冷たくなった手をこすり合わせた。
冬も終わりに近づき、なのに暖かさは夕刻を過ぎればどこかへ消えていた。

白い手のひらも、寒さにさらされ続ければ、乾いた感触ばかりが伝わってくる。
立ち止まり空を見上げれば、遠い月が見えた。

重い足を動かし始め、コートの上から、つい笑っていた。
…疲れていても、人間なんだな……

昼から何も食べていない。
今欲しているのは……睡眠と、空腹を満たすものだった。

こんな一人の夜にも、明るい場所があるのは一つ……。


「よお、いらっしゃい。今日も遅いねえ」
明るい声で蔵馬を迎えたのは、幽助だった。暖簾をくぐり、屋台を見渡すと、端に一人だけ、お客がいた。
「幽ちゃん、これね」
支払いを終えるところの様で、お札を渡しその客が立ちあがっていた。

「あいよ、毎度!」
幽助の声は、この暗い夜にもさわやかに蔵馬の耳に響いていく。
胸の前で手を重ねて、蔵馬はゆっくりと座った。
「いつものでお願い」
鞄を置き水を飲めば、すうっと、心地よい冷たさが喉に広がる。
ねぎを切る幽助を見つめて、蔵馬は力を抜いた。……夜のこの時間、蔵馬はたまにここへ来る。
マンションに帰っても一人……。
作る気にもなれず、自然に足が向くのはなぜかこの屋台だった。
夜風の冷たさと、出来上がるラーメンの熱さが混ざり合い、器を手に取ればほんのりとした温かさが伝わった。

「おいしい」
ゆっくりとれんげを動かしながら蔵馬が言った。
「お疲れだねえ、おやじさんの会社結構大変なの」
身を乗り出して、幽助が問いかければ、蔵馬は小さく頷いた。
「…取引が今、進みかけたところなんだ、色々調べて、相手の要望に応えたくて」
……母を、早く安心させたい。
とは蔵馬は口にしなかったけれど。

「お前も、倒れたりしないようにしろよ」
少しだけ混ざる、幽助の憂いた様な響きに蔵馬が顔を上げた。
「大丈夫……だいじょうぶだよ。いま忙しいだけだから」
「大丈夫じゃねえだろ」

屋台越しに、差し出されたものに、蔵馬が目を見開いた。

「幽助……」
「こんなことも忘れてんの」
小さな箱だった。
リボンのついた小さな箱を、幽助が後ろの棚から差し出していた。
「お前。誕生日だろ」
ほれ、と渡された箱に、蔵馬が目を丸くして、幽助と箱を何度も往復した。
「こんな大事な日に来るくらいだから、忘れてたんだろ」
開けて見ろ、と幽助が言った。

ぱさぱさと、箱を開ける音がした。
「あ……」
それは、最近の話題のものだった。
これは、……蔵馬は、知っている。外国から輸入されたという、最近人間界ではやっている紅茶だった。
甘い香りの品のある茶葉のセット……。
「疲れたときに、いいらしいぜ」
ニヤっと笑う幽助に、蔵馬がはにかむような笑いを返していた。
「ありが、と、幽助……」
そっと、伸ばされた手が、蔵馬の頭を撫でていた。
「それ食べたらちゃんと帰りなさい」
日付を超える前には……帰って寝なさい、と幽助が呟いた。
「顔色悪いぞ。紅茶、帰ってから飲んで寝ろ」
「幽助……」
じんわりと広がる暖かい響きに、蔵馬が箱を握りしめた。
「お迎えもきてることだしよ」

えっと、振り向いたのは蔵馬だった。
深い碧の瞳に映った、振り向いた先の人……。
「飛影……」

屋台の椅子のすぐ後ろに、その人はいた。

真っすぐに蔵馬を見つめ。漆黒の瞳が二人を映していた。
「飛影っ」
瞬間に浮かんだ蔵馬の色は、ごまかせなかった。
飛影を見つめる瞳に輝きが戻り、頬が赤くなっていた。
「かじかんでいる」
握った蔵馬の手を見つめ、飛影が口を開いた。

「あっ……」

はっと、蔵馬が声を出していた。
その身体が、抱えられていた。黒衣の中に、蔵馬はいた。
蔵馬は飛影の腕に抱かれていた。
「ご苦労だったな、幽助」

トンっと、飛影は足を地につけた。

「飛影っ……」
抱えられ、目におえない速さで走る飛影の中で蔵馬が声を出した。
「どうしっ……」
どうして突然。……暫く、討伐続きで来られないと言っていたのに。

飛影は、応えなかった。


空いている窓に足をかけ、入っていったのは見慣れた風景だった。
人間界の、蔵馬の部屋……。
いつも空いている窓に足をかけ、慣れた足つきで飛影は入り込んでいた。

「……明日になる前だ」

小さなベッドの上で蔵馬を抱きしめ、飛影は囁いていた。

「明日に…?」
あの、と言う蔵馬の唇を、飛影は塞いでいた。
「明日…覚えているだろうが」
明日は……桜にはまだ少し早い――…南野秀一の……。

「あした、お前の」

ゆっくりと、飛影は蔵馬を抱きしめていた。

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飛影に、ハッピーバースデーと言わせるか悩んだのですが、このくらいでいいのかなと思いました。

誕生日小説というのを書いたのは初めてなのですが、
飛影はこのくらいの温度の言葉で蔵馬の誕生日を祝ってあげる、
その日(の前日から、ちゃんと傍にいる。で、当日お祝いの言葉を言う)に蔵馬のそばにいたいっていうのも
ありなんじゃないかなと思います。


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