12/4 Kornstad&Wiik @ PIT INN

 もう何年も前から心待ちにしていたノルウェーのサキソフォニストHakon Kornstadの来日公演。今回は、私が愛してやまないWibuteeを率いる彼と、Atomicのピアニスト、Havard Wiikとのデュオでのステージ。4,5日と二日にわたって行われる今回のライヴ、1セット目は、それぞれのソロを見ることが出来るというのが今回のイベントの目玉。

 彼独特の、あの鳥の羽ぶれのように細かく震え響くサックスの音色を、そしてそれとは打って変わって力強く、それでいてしなやかにブロウするあの音が、いったいどうやって出るのかをこの目で確かめてみたかったのです。

 ステージに現れた彼は、Tシャツにジーンズ(パンツ見えてるし)というごくごく普通のあんちゃんな感じでした。けれど、いったんサックスを吹き始めると、彼独特の世界が一気に会場を呑み込んでしまったのです。

 たった1本のサックス(とサンプラー)でぐいぐいと観客を引き込んでしまう、それは彼にしか作りえない世界なのでした。得意の奏法でフロアをハッとさせ、そしてかすれ消え入るような小さな音も、バリバリと響く低音も、そのどれもがとても丁寧に愛おしむように吹くのが彼の奏法の最大の魅力です。マッツ(グスタフソン)のように、サックスを吹き壊してしまいそうな強攻スタイルではなく、とても柔軟に、音の響き一つ一つを活かし、会場の空気に波紋させていくのです。

 横に置いたサンプラーで、吹いたフレーズを少しずつ重ねていく。ある場面では自分のリズムにのせて、奥行きのある展開を披露してくれる。また違う場面では、吹いたフレーズを少しずつひずませていき、サックス、コルネット、そしてメロディカの順にサンプリングしていく。一人多重録音をその場でやってのけてしまったのです。次の曲につなげていく場面では、少しWibuteeを思わせたりして。

 後半からは十二弦箏の八木さんを迎え、サックスと箏のコラボレーション。お互いに美しいフレーズをなぞったかと思えば、お互いにせっかく築いた世界を壊し始めたり。かと思えば、再びサンプリングを始めた彼が、その場で音をひずませ、あらぬ展開にもっていったり。たった二つの楽器なのに、音がぶつかりあって響きあう、映像が浮かんでくるような幻想的な世界を作りだしていました。

 Hakonは、エレクトリックなWibuteeでも、スタンダードを踏襲するトリオでも、そしてもちろんソロの時にでも、全く違う音の表情を見せてくれるのです。けれど、完璧なまでに作りこまれたもの、それだけをさしてよしとするのではなく、あくまで彼はインプロ、その場の直感やひらめきを大切にしつつ、クールにプレイすることを忘れないのです。そしてそれは、決して難解なものではなく、とても繊細で美しい響きを持ち、まっすぐに私たちのもとに伝わってくるのです。

 そんな素晴らしい演奏を見せてくれた彼のステージを、もっと多くの人に見てほしかったのだけど・・・あまりの観客の少なさにがっかりしたのは私だけ?

 でも、次の来日を楽しみにしています
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