ノルウェー旅行記2011 テキスト後半

♪9月28日
起きたら8時前。のんびりするのももったいないので身支度を整えて、とりあえず食事に。一階のレストランが朝食場所になっていて、行ってみるとカントリーな感じのお店でした。昼食の待ち合わせが11時半なので、軽くすませる。
朝食を終えて、身支度をのんびり整えて通り目の前にある書店「norli」に行ってみる。オスロで買うのを躊躇したジェイミーの本は買ったほうがいいと昨晩オーゲさんに言われたこともあって即買い。ジェイミーはノルウェーでも人気なのだそう。ユニークなパフォーマンスも相まって、オーゲさんも彼の本を2冊もっているそう。加えて、nrk監修のノルウェー料理本と写真が奇麗なレシピブックを購入。結構重い。あっというまにオーゲさんとの待ち合わせの時間になってしまったので、ホテルのロビーに戻ることにする。
オーゲさんと合流した後、明日のATOMのチケットをホテルのネットで調べてみることに。ビレットサービスは、海外からの購入が出来なかった(2004年に痛感)こともあり、オーゲさんに代行してもらうも、カードの不具合で購入出来ず。仕事の合間に手配してくれるとのことで、まずは昼食へ。通りから少しオーゲさんの働く市庁舎方面に向かうとあるtelegraffnへ。ここは昔の電報電話局だったそうで、その名前が今も使われているそう。中は奇麗に改装され、お洋服などのショップが入っていて、その真ん中のスペースがカフェになっている。そこでランチ。私はかためのライ麦パンの中に丸いオムレツを挟んだサンドとオレンジジュース。オーゲさんはフォカッチャのプレート。お昼を食べながらいろんな話をする。ベルゲンの建物は半円状のものが多く、それが私のイメージだと伝えると、そうかもしれない、と。世界遺産の街として知られるベルゲンは、建物の基準も厳しい。オーゲさんの仕事は、新しく改築や建築への申請を判断すること。一つの仕事をしていても、どんどん申請案件がくるので、忙しいときはなかなか仕事が前に進まず、7人のグループでやっているが、イライラしてくるメンバーもいるそう。ストレスのケアなどもメンバーとしての大事な仕事とか。メールでも一日20件以上申請案件がくるので、たとえば今冬にオーゲさんが日本への旅行を計画しているとすると、休みの間にたまる案件は……考えただけでため息が出てしまう。日本人並みに仕事をしているオーゲさんだ。ノルウェーの人たちの勤務時間はやはりスタートは早くて、オーゲさんのボスは遅くても7時から勤務開始なのだそう。終わりも早いのかと思いきや、公務員ではあるけれど、部署が特殊なだけに残業も7~9時になるのはざらなのだそう。普通のノルウェー人だと、4時半~5時には上がって街に繰り出すか家で家族と過ごすそうなのだが、オーゲさんの勤務は9時~18時。これはまた特別なのだそう。「僕は夜型、日本型ですから」と笑う。でも、仕事をしていてありがたいことは、残業した分はキチンとお金が出るところ。たとえば昨年オーゲさんがユニバーサルデザインの仕事でポーランドのワルシャワに行ったときに聞いた話では、ポーランドではいくら残業になっても固定賃金なのでサービス残業になるとか。
ついでにオーゲさんの仕事の話だけど、以前は自分のデザイン事務所を持って建築の仕事を手掛けていたが、2005年に会ったときに「公務員になりました」と言っていたオーゲさん。自分の事務所と公務員を両立していたが、公務員一本に絞ったのだそう。「毎月決まった金額が振り込まれるのはありがたいです」と。決してフリーでデザインを請け負っていたときも普通に食べる分の収入はあったそうだけど、その月によって手掛けた仕事で入る金額の違いはあったと。何事もきちんとしているオーゲさん。きっとどちらの仕事でもきちんとこなしていくことは出来るんだろうけど。「でも、公務員になってから、ユニバーサルデザインやバリアフリーのプロジェクトに携わることが出来るようになったので、それは基調な経験です」と。日本の浜松でのユニバーサルデザインプロジェクトでは、日本語通訳としても力を発揮したそう。どのノルウェー人よりも日本に詳しいオーゲさん、観光や食スポットのアテンドもこなしたそう。食事後のお酒も、20人のノルウェー人を小さなバーに連れて行ってオーナーをびっくりさせたそう。回転寿司や日本酒、抹茶のカクテルなど、20人のノル人たちは大喜びしたそう。
ポーランドでのユニバーサルデザインの視察でもポーランドの文化に触れ、貴重な体験をしたそう。まじめで働き者のポーランド人。EUに加盟して5年経つが、成果が出るのはこれからではないかと。ちなみにノルウェーへの移民が最も多いのはポーランド人なのだそう。やはり賃金が高いというところが大きいよう。決して国が嫌だからとか理由ではないんだなぁ。
ノルウェー人の昼休みはだいたい30分。気づけば1時間以上オーバーしていることに気づいたオーゲさん。今日はちょっとさぼってますが、2時半から中国との大事な会議があるそうで、その準備には行かなければならないと。買った本を郵便局から送るため、Postenのある場所を教えてもらって、そこで別れる。今日はお友達と夜会食があるとのことで、今日はこれでお別れする。



そのまま少し街歩きをすることにする。久しぶりのベルゲンの街は、あまり変わっていないようで、ちょっと変わったような気もする。昨年6月に出来た路面電車は、今昼食をとったtelegraffnの前が終点。ピカピカの車両が街の入り口まで乗り入れている。古い建物の中は、日々新しいお店が入れ替わる。H&Mはここでも大きなスペースを占めていて、WEEKDAYなんかもある。オスロで見たCUBUSなんかも日本でいうユニクロみたいなものなんだろうなぁ。大通りには相変わらずベルゲンッ子がいっぱい。昼間から超元気。
荷物を入れる箱を郵便局で買った私。大きいのでひとまずホテルに置きに戻る。少し一息ついてから、いざオーゲさんおすすめのデザインショップを見に行ってみることに。
まずは、ホテルから一番近い「inside」へ。ショーウィンドウに見える家具はなんだか素敵。中に入ってみると、ちょっとびっくり。入って右手にはカルテルの段ボールと家具が。目の前の階段を下りると下もお店なのだがこれまた家具と段ボールが混ざり合っていて、これでいいのかはたまた準備中なのかよくわからない感じ。左手奥に行くと、大好きなカルテルのスツールがいっぱいのスペース。と思ったら右手にはランプがぼんぼんと床置きされている。ねじまわしなんかも転がっていて、はたして……と見つめていたら、お店の人がやってきて、何か聞きたいことがあったら声をかけてね、と言われた。きっとこれがこのお店のスタイルなんだろうなぁ。みるだけにしてお店を後にする。
次にまわったのが「TIT」というインテリアショップ。途中工事中の空き地があるとオーゲさんに言われたとおり、豪快に石畳の工事が行われているエリアを抜けた先にカラフルなスツールがお店の前に数店レイアウトされている。中に入ってみると、お店の人は一人。さっきのinsaideよりもずっとゆったりレイアウトされている。中はデンマークやフィンランドの家具がいっぱいだけど、ノルウェーのブランド「mooto」の商品も前面にレイアウトされている。お店の人に少し訪ねてみると、mootoではノルウェーでもベルゲン出身のデザイナーも在籍していて、これがそうよ、と見せてもらったのが、カラフルなダンベルか木のおもちゃのようなスパイス見る。ノルウェーセイズのものだったけど、メンバーは今それぞれの活動になっているそう。せっかくなので、そのスパイスミルを購入。お店自体は、開店して10年になるそう。私は6年前に来ているけど、気付かなかったなぁ。ま、そのときはデザインやインテリアに興味なんてなかったし。そんなお店を後にして、せっかくなのでブリッゲンまで歩くことに。久しぶりのベルゲン。魚市場は変わってないけど、手前が工事中で何か道路か建物が出来るらしく、景観が少し微妙。魚市場は夕方なので閉店準備中。そんな魚市場を抜けてブリッゲンへ。ここはあまり変わっていない。中に入るお土産屋さんはいろいろ変わるけど、大きくは変わってないかも。Tingはもう一つ子供向けのショップをオープンさせ、大きくなっていた。通り沿いにはお薦めの一つ「ROST」もある。ここにはアーキテクトメイドというこれまたオーゲさんお薦めの木の小物があったり、日本の+dや、マリメッコなんかもあった。Tingでお土産を買ったあと、ブリッゲンの先まで歩いてみる。ホーコン城を歩いたり、港沿いを歩いたり、裏の通りを歩いたり。アンティークショップもあったけど、開いてなかった。下に降りてきてスーパーでお土産用のチョコを購入。大量買いなので、少しお兄さんに悪かったけど、ま、許してちょうだい。チョコを抱えて魚市場を通り過ぎる。今日の夜ご飯は一人だし、どうしようかな~と思っていたところ、テイクアウト用のお寿司を売っていた。お兄さんのレコメンドを購入し、ホテルに戻る。
今日はずいぶん歩いた。靴ずれがひどくなり、けっこうつらい。お寿司の味はと言えば、酢飯ではなく、ご飯も堅い。醤油も今ひとつでやっぱり日本の寿司がいいな~と思いつつ、ベルゲンの魚介類を堪能したのでした。その後レコード屋とデパートをちょっとまわり、そのまま眠ってしまった。



♪9月29日
朝、ゆっくりめに起床。だいぶくたびれてきたみたいだけど、身支度を整えつつ朝食に行く。昨日より早めに来たためか、結構にぎわっている。朝食のレストラン「EGON」は、ガイドブックにも掲載されるチェーン展開のレストラン。夜はワイワイ飲んで騒いでるみたいで、朝ここを利用する者にとっては、なんだかソファやらテーブルやらがちょっと汚かったりもして、あまり落ち着かない。お料理はといえば、もちろんいろいろ。ノルウェーのホテルの朝食スタイルは、パン(自分で必要な量をスライス)、温かいもの(卵、ベーコン、豆のトマト煮、ソーセージ、スクランブルエッグ)、サラダバーには生の野菜(きゅうり、トマト、パプリカ、ビーツ、ピクルス、玉ねぎ)、チーズ(ヤギのチーズ、ナチュラルチーズ)とハムいろいろ、にしんいろいろ(マスタード、酢漬け、和えたもの)、サワークラウト、マヨネーズの玉ねぎ和え、シリアル&ヨーグルト、コーヒー&ティー、フルーツジュース、などなどだ。食べる量もスタイルも泊まる人によって様々。私は今日もオーゲさんと11時半待ち合わせなので、またしても軽めに調整。昨日と同じ場所で食事を済ませる。
食事のあとは、ちょっと散歩。段ボールの隙間を適当なもので埋めたい(10キロまでなので、これ以上本は買えないし・・・)のもあって、このへんにマリメッコがあれば、布か何かでいいかな~と思い、ショップを検索。ブリッゲン近くにある……らしい。住所を控えて歩いてみることに。が、歩いてみるも、しるしをつけた場所にはそれらしきお店はなく、ぐるぐるまわってもやはりなし。なくなってしまったのかもしれないな~とそのまま通りを散策。オーゲさんのお薦めのお店「Black&White」を発見。まわりをうろうろしてみたけど、開いてない様子。外から眺めるだけにして、そろそろ時間になったので、ホテルに戻ることに。途中以前オーゲさんとお茶したカフェ「ミスター・ビーンズ」は、おなじ黄色を基調にした外観の雰囲気はそのままにレストランになっていた。
ホテルにもどり、オーゲさんと合流。食事は公園内のカフェを案内してもらった。前はなかったこのカフェは、2~3年前に出来たそうで、中でも外でも美しい公園の景色や散歩する人たちを眺めながら食事の出来る気持ちのいい場所。オーゲさんは、フォカッチャ、私はエビつきのサラダバーをオーダー。サラダはベビーリーフのほか、パスタやドライトマト、バルサミコ酢を使ったトマトとたまねぎのマリネ、フェタチーズ、などなどいっぱいあって迷いそう。大きなオリーブはギリシャから輸入したもので、オーゲさんもよく食べるそう。私も大好きなのでいっぱいとったりして。ガラス越しの日当たりのいい場所でランチする。まわりも家族連れや若い子たちでにぎわっている。普段着の人が多いことを話したら、ノルウェーではサラリーマンもスーツを着ないそう。着るのは不動産業かクリスマスパーティーのときぐらいで、わりとかちっとした格好をするオーゲさん。しばらくの間スーツで出勤したら、職場の人たちに「これからお葬式なの?」と聞かれたそう。アルマーニなんかも好きなオーゲさん、なかなかベルゲンでは着る機会がないそう。
「でも、スーツやブランドものにお金をかける感覚がないノルウェー人ですが、アウトドアウェアには同じくらいのお金を費やしてるんです」と。国民性が出ていて面白い。
しばし話をした後、1時から打ち合わせがあるそうで、その前にマリメッコアイテムが置いてあるらしいお店を案内してもらう。お店はツーリストインフォメーション横の手工芸のお店。残念ながらそこにはもうマリメッコを売る権利がなくなったらしく、もしかしたらRostに少しあるかもと。とりあえずオーゲさんとはそこで別れ、2時半にまた合流することにする。そのままRostに行って、マリメッコのクッションをとりあえず購入。大量になったので、いったんホテルに戻って段ボールに詰めてみる。きゅうきゅうなぐらいいっぱいになったので、とりあえずこれで送ることにする。
再びオーゲさんと合流し、ブリッゲン近くのお店や工房を散策。前にはただの空き家だったところにショップやデザイナーのお店、工房などが出来ている。ブリッゲン横の細い通りにあるガラス工房。ここも最近出来たそうで、中で制作できる仕組みに改築されている。吹きガラスを作る女性アーティストの姿が見えた。入口部分ではちょうど企画展が行われていて、ガラスからインスパイアされた作品や映像などが照らし出されている。左側にはショップが併設されていて、かわいいマグやオブジェが売られている。不思議な形、不思議な色の作品が並ぶ中、紙をクシュっとしたようなマグを購入。オーゲさんもお薦めでした。
ブリッゲン裏にはセラミック工房が。小さな入口から入ると人や動物、中世の作品を思わせる不思議なものがいっぱい。ノルウェー刺繍のお店、皮細工のお店、ヴァイキングの店、若手染物アーティストのショップなど、ずいぶん以前とお店が入れ替わっている。
ブリッゲンは300年ものの建築物。土台が崩れていたり、傾いてるものが多い。オーゲさんの日本のお友達は、以前この建物を見たときに、「これは全然だめだ~」とかなり驚いたそう。確かに、土台の部分がぷかぷか浮いていて、ブロックや石をかませているところもかなりあるので……、日本の建物からみたらそうだろうなぁとは思うのですが。補強はそれなりにしてあって、年々老朽化は進んでいることも実感。できるだけ長くみんなの目に触れてほしいと思った。
といってる間にまたしてもオーゲさんはスケジュール満載。17時半から中国語の授業を受けに行くとのことで、また19時に待ち合わせすることにして別れる。
その間、またまた一人で街を散策。ここに居られるのもあとわずか。しばらくの間はまたこの街並みを見られなくなるので、出来るだけ歩こうと思いつつ、アポロンに行ってないことを思い出し、逆方向へ歩く。アポロンは、最初に私がここを訪れた時に泊まったリカホテルのそばにあるレコード屋。いつも開いてなくて、でもなかなか面白い品ぞろえなことはいつも来ていたレコード屋。初めて中に入ってみると、かなりコアな雰囲気。手前がジャンル別に分かれたCDコーナーで、段差を昇った奥がレコード売り場になっている。手前のジャズコーナーで探してみるも、なかなか魅力的な品には出会えなかったけど、キャプテンカリバーのCDやソンドレ君(今はニューヨークに住んでるらしい。ちなみに彼の従弟はヒップホップアーティストとして活動中)の新作を探してもらい、購入。お店の人にノルウェージャズのアーティストを探してもらうも、それ以上は残念ながらなかった。品ぞろえ的にはやはり北欧メタルやパンク、ロックなどがお店の大部分を占めている感じだった。でも、ずっと来たかったレコード屋。入れてうれしかった。で、レコードバッグを見ると、もう一店舗の住所が記されている。そこには「ジャズ、プログレ」の文字。別にもう一店舗あるのかな?と思い、いったんはホテルに戻り、段ボールの荷物を郵便局に運び、(ここでもさらに領収書は?と聞かれる始末。中にはどんなものが、何冊、いくら分入ってるのか、と事細かに聞かれ、ちょっとイラっとしてしまう。本当に何回でも確認するのね。)郵送の手配をし、そこから住所を頼りにもう一つあるらしいアポロンまで歩いてみた。
すると、初日に食事をしたNABOENの隣だった。でも、中はからっぽ。ガラス窓にはアポロンのロゴはうすく残っているものの、閉店したようだった。なんだか残念だけど、知らないまま後悔することがなくてよかったわ。
そしてホテルに戻って、オーゲさんを待つことに。間もなくオーゲさんがやって来て、今日のATOMのライブがあるスタジオベルゲン方向へ歩く。途中、国立劇場を探検。ここでイプセンの劇などが行われたそうで、建築様式も●●様式を初めて用いた歴史あるもの。今も現役の劇場として使用されていて、今夜もここで劇が行われるところだった。チケットをチェックするスタッフもシャキッとしていて、なんだかかしこまった感じ。建物内のアールヌーボーだかゴシック様式だか忘れちゃったけど、オーゲさんにいろいろ解説してもらいながら見学。そして移動。
そこから下り坂は、ベルゲンの昔からの街並みが残る場所。かわいらしい建物が連なる通りは、古くからの店が多く、のどかな雰囲気。ただ、目の前の道路は大工事中で、開発と歴史が入り組んだ今のベルゲンを象徴しているみたいだ。ちょうどそこの通りでアンティークショップを発見。中をのぞいてみると、キャサリンホルムのお鍋やプレートが見える。オーゲさんに声をかけると、「これは60~70年代に流行ったキッチンウェアブランドですね。私のお母さんも、よくこのお鍋でジャガイモを茹でていました」と。葉っぱをさかさまにしたシンプルだけど可愛らしいデザイン。一つ買いたいなぁと思いつつ、この時間では開いてないのでまたの機会に。
そのまま坂を下り、住宅地に入る。古くからのアパートメントや玄関まわりにかわいらしい花がたくさん育ててある家がいっぱい。窓辺にはかわいい置物やキャンドルが見える。「ここは僕の友達の家です」とオーゲさん。通りに面した白くて可愛い一軒家は、お医者さんをしているというオーゲさんのお友達が暮らしているそう。
そんな話をしながらさらに先へ歩いて行くと、工場地帯のようなエリアに着いた。ここはもともとはイワシなどの缶詰を作る工場だったそう。工場としての機能を終えてからは、改築して、陶芸やガラスデザインなどのアーティストの工房がたくさん入るアーティストヴィレッジのようなものとして活用されているそう。その手前にはテレビ制作会社のビル。その向こう側には港を挟み、もうひとつのベルゲンの街並みが広がっている。夕焼けが濃くなってきて、空はとてもきれい。海に光が反射して、さらに幻想的なベルゲンの秋を表現しているよう。しばし眺めた後、USFホール内のカフェで少し食事をすることに。中は若い学生やアーティストたちでにぎわっている。テラスは風が強くて寒そうだったので、海に面した窓際の席で食事をする。オーゲさんはカモ肉のグリル。私は、あまりおなかは減っていなかったので、お薦めのムール貝のスープとパン。
お料理が来るまで、またしばし話をする。オーゲさん、中国語はもう十年以上勉強を続けていて、その他にも日本語、英語、ドイツ語など、本当に素晴らしい。
お料理が来てからは、時間もあまりなくなってきたので、急いで食べて会場のスタジオベルゲンへ。
スタジオベルゲンは、このホールの一つ隣の建物。普段は、コンテンポラリーダンスなどの発表する場所やアーティストのパフォーマンスを表現する場として使用されているそうだ。チケットを受け付けで見せたところ、チケットには9時~と書いてあるが、実はもう始まっているとのこと。音を立てないようにして会場内に入ると、すでにパフォーマンスは始まっていて、静かな盛り上がりを見せているところだった。8×8=64コの白いバルーンに光を当てて、コンピューターで指示出しして上下運動をさせるというユニークな仕組み。その動きと音が織りなすパフォーマンスは、クラフトワークを彷彿させるサウンドと相まって、とてもクールでかっこいい。真っ暗な会場の真ん中に設置された巨大な64コのバルーン。たったこれだけのシンプルな構造なのに、音に合わせてまるで生き物のようにさまざまな感情を表現するかのよう。無機質的でありつつ、とても有機的。クールなのに、実はとてもホット。会場を埋め尽くしたベルゲンっ子たちも、みんな息をのんでそのパフォーマンスに見入っていたし、私もオーゲさんも「ほ~っ」という感じでその表現力のすごさに圧倒されていた。パフォーマンスが終わった後も、みんな興味深々でATOに仕組みについて質問ぜめにしていた。サービス精神旺盛な彼は、終わった後もバルーンを動かして音を出してくれたり、今度は赤いスポットを照らして新しい表現を見せてくれたりした。初めて見るATOMのライブは、ここまで来て見る価値のあるものだった。



帰り道、ちょっとお茶しましょう、ということで、駅の隣にある歴史あるホテルのカフェに向かってみる。とてもモダンな建物のホテルの1階には広々としたホールのカフェがあった。が、タイミングの悪いことに、今日は学生たちのパーティーが開催されていた。「普段はこんなことはなくて、静かで雰囲気がいいんですけ」とオーゲさんも残念そう。私は素敵な建物の作りが見られただけでもよかったので、十分満足。
私の泊まるホテルのロビーでしばし話をする。今の仕事のこと。私は老人ホームの栄養士をしていて、認知症の高齢者の栄養ケアを仕事としている。食べることを忘れてしまった人たちに、いかに栄養を維持してもらうためのアプローチができるのか、それが最大の課題なんだけど、なかなかうまくいかないのが現状だ。スプーンを持ってもどうすればいいのかわからない。口に入れても咀嚼や嚥下が出来ず、ただの上下運動になって何時間もかみ続けて飲み込めない人。おなかが空いた認識がないため、何も食べたいと感じない人、または食べたことを忘れ、朝から何も食べてないといいはる人。食をつかさどる意識が壊れている状態の人に食べさせるという行為が果たして自然なことなのか、虐待にならないのか、食べさせないことが虐待になるのか、取り方ではどうともとれる課題が常に頭の中にある。答えはいつまでたっても出ないけど、目指すことはただ一つ。「ここで暮らす利用者さんが幸せであればそれでいい」ということ。そんな話をたくさんオーゲさんにしたような気がする。オーゲさんのお姉さんは現在、訪問看護師として仕事をしていて、日々いろんな患者さんのケアにあたっている。難しいこともいっぱいあるそうだ。
オーゲさんが、今年の冬に5週間ぐらいお休みをとって日本に来ることを考えているそう。チヨコさんは、ちょうど私がベルゲンに来る前の日に日本に帰ってしまい、12月15日まで日本にいるそう。それに合わせてオーゲさんも奈良や京都、三重の友達に会ったり、安藤忠雄さんが手がけた直島を見たい、それと秋葉原も、と言っていた。日本中にお友達がいるオーゲさん。きっと5週間の滞在もあっという間に過ぎてしまうんだろうなぁと思ったり。5週間一度に取れないときは、3週間と2週間に分けてとって、別のときに来る、とも言っていた。
東京に来たときには、ぜひ一緒に散策しましょうと約束する。そして、またベルゲンに遊びに来ることも。
時間も遅くなり、明日もお仕事のオーゲさんとお別れ。いつまでも手をふってくれる優しいオーゲさん。ベルゲンを訪れるゲストに対して、心からのおもてなしをしてくれるところ、私も見習いたいなぁと深く深く思ったのでした、
部屋に戻り、帰る準備をしようと思ったものの、どうにもこうにもやる気が起こらない。結局、顔を洗い歯を磨いただけで何もせず眠ってしまった。荷造りは明日だ。



♪9月30日
曇り空。昨日一日だけは晴天だったけど、やはりベルゲンは雨、どんより空の街だ。ゆっくり道行く人を眺めながらEGONで朝食をとったあと、部屋で荷造り。昨日けっこう荷物を送ったのでスーツケースに入れるものはあまりない。早めに出て、昨日見つけたアンティークのお店をチャレンジしてみようと思った。
ホテルをチェックして、そのままアンティークのお店へ。途中の石畳が行く手を邪魔する中、とりあえず時間はまだまだあるので頑張って坂道をスーツケースを引きずって歩く。なんとかお店の前まで来てみて、看板をのぞいてみる。オープンは11時~と書いてあるが、それ以上のノルウェー語はわからない。これがこのシーズンのことなのか、今日は金曜日だけど、この表示のままオープンするのかもわからない。とりあえず、待つ。11時になっても、やっぱり開かない。とりあえず、思い切ってガラス越しのメモに書かれた電話番号にかけてみた。電話の向こうで「ハロー」と声がする。とりあえず、店の前でオープンするのを待っている、と伝えてみると。「今日は店を開けないんだ」と残念な返事。シーズンオフってことなのかもしれないなぁ……と、それ以上は粘れず、バイバイと電話を切った。残念だったけど、これが今回の旅のご縁だったのかもしれないし。
そのままスーツケースを引きずり、空港行きのバス停まで歩く。今度は下り坂。道行くベルゲンっ子を眺めながら、公園そばのバス停までてくてく歩く。
街は賑やか。どんよりとした曇り空は、やっぱりベルゲンらしくて、なんとなくさびしい気持ちになる。しばらくするとバスがやってきて、スーツケースを下の荷物入れに入れて、乗り込む。空港までは95NOK。片道約30分の道のりを途中途中でお客さんを乗せてバスは空港まで登っていく。森の中。緑もどんどん紅葉していて、緑というよりもどことなく茶色い感じ。ちょっとさびしい印象の森を抜けて、6年ぶりのベルゲン空港に到着。
久しぶりなので、なんとなく緊張しつつ、帰りの飛行機の手続きを無人のKLMの機械で行う。……と、オランダまでは取れるものの、オランダ→成田の席の予約が出来ない。「オランダ到着後、再度行ってください」の表示が出るばかりで、正直かなりあわててしまう。とりあえず、どうしよう!と思い、まだ営業してるであろう旅行会社に国際電話で問い合わせてみる。つながったものの、こちらでは原因はわかりません、の一点張り。席はとれませんが、予約は出来ているので乗れるはずです、って、意味がよくわからない。どうにもこうにも話しが進まないので、かなり切れ気味で電話を切り、荷物を預けるため、チェックインカウンターへ。そこで係の人に席が取れなかった旨を伝えると、チケットを発行してくれて、これをオランダの成田行きのゲートで渡して、と渡される。これでかなり安心した。なるようにしかならない。でも、なんとかなる、という微妙な保障を約束してもらったので、ゲートがオープンするまでの間、ちょっとだけベルゲン空港での時間を楽しむことにした。
6年前は、ここで偶然チヨコさんに会ったけど、今回は会えるはずもなく、コーヒーと最後のスイーツを頼んでみた。チョコレートピーナツブラウニーって、予想通り相当甘い。カプチーノとともに食べ終え、そのまま2階のゲートへ。手荷物検査で見事にひっかかり、靴とジャケットを脱ぐはめに。なぜ?と思いながら、いろいろと調べられ、そのまま乗り場ゲートへ歩く……も最後の最後で入口のドアがあかない?なぜ?と思い、向こう側の人にアプローチすると、よその国に行くんだから、海外行きの入り口をぐるっと回るんだと指示される。そんなだったっけ?と思いながら、ぐるっとまわってゲートに到着。そしていよいよ最後の時間をちょっとだけ過ごす。



さよならベルゲン。次はいったいいつ来れるのかなぁと思ったり。
ゲートオープンのアナウンスが流れたので、機内へ。ここへ来たときと同じサイズのcity hopperに乗り込み、ベルゲンを発ちオランダへ。あっという間の1時間半。お茶している間にオランダに着いてしまった。
オランダ着から成田行きの便が出るまでは1時間ちょいしかない。その間にチケットの手続きでやり取りなんて出来るのかしら?と思いつつ、せっかく来たんだから見たいという思いもあり、方向は乗り換えゲートに向かいつつ、いろいろ寄り道。ミッフィーのお店もあるし、空港図書館もある。オランダらしい木靴や風車をモチーフにした陶器の置物を見たり。と言ってるうちにいよいよまずいと思い、パスポートコントロールをしてゲートに向かう。
ゲートはすでにオープンしていて、たくさんの日本人が機内に乗り込もうとしている。とりあえず私はゲートにいるスタッフに手持ちのチケットを出して、どうしよう?とエクスキューズ。すると、日本語が話せるスタッフが「この飛行機はオーバーブッキングが発生しているので、なんとかするから少し待ってほしい」といわれる。隣でも同じような状況になっているカップルが落胆している。
仕方ないので少し待つことにする。どっちみちこれから10時間以上この飛行機に乗るのか……ということでちょっと不安になってることもあったので、座って落ち着くことに。
しばらく人の流れをみてぼーっとしてると、先ほどのスタッフから呼ばれる。すると席の確保が出来たとのこと。それもエコノミーじゃなくてビジネス席とのこと。思わず「ありがとうございます」と言ってしまうもそのまま手荷物検査をして機内へ。
いつもはエコノミーのぎゅうぎゅうの席につくはずが、今日は前方の席に案内され、その広さに驚く。席と席が広いし、見晴らしもいい。しかも窓側!席につくもなんだか落ち着かない中、ウェルカムドリンクをいただき、そうこうしているうちに離陸準備の案内がされる。あっという間に離陸してオランダを出発。
機内での待遇は、エコノミーとビジネスではやっぱり違うんだな~と実感。お茶のサービスもこちらの状況で対応してくれるし、(エコノミーだと有無を言わさず、という感じ)朝食も自分でいろいろ選べるみたい。その前の夕食も、オランダにある日本料理のお店のオリジナル(またはレストランの洋食)がチョイスできる。なにより、その快適な空間。圧迫感がないので、座っていても、あまりしんどくない。
特に見たい映画等もなかったので、景色を見たり、食事をしている間にあっという間に就寝時間になったみたいで電気が消えていく。そのまま楽に倒せるシートに身を任せて眠ってしまった。飛行機に乗って、こんなに楽に眠れたのって、きっと初めてかもしれないな~と思った。
あっという間に起きる時間になったみたいで、周りの人たちが動き出した音で目が覚めた。もうすぐ成田に着くみたい。昨晩自分で用紙に書き込んだ内容の朝食が出された。これもまた素晴らしくびっくり。ジャムやヨーグルト、温かいおかずかシリアルかなど、いろいろ選べただけあって、色とりどりで見た目にも美しい。いろいろ食べている間に、いよいよ到着の時間が迫ってきた。
飛行機がたって、着陸するまでがこんなにも早く感じたのも、きっとこれが初めてだったと思う。

といってる間に、成田着。ビジネスなので早く出ることが出来て、スーツケース受け取り場へ。なかなか私のスーツケースが出てこない。
待ってる間に結局遅くなってしまう。そして税関へ。機内で用紙を貰い損ねてしまい、さらに記入せずに並んでしまったため、記入して再度来るように言われる。記入台で荷物を送ったことを思い出し、それには別に記入用紙が必要と書かれているので、通りかかったスタッフに聞いてみるも、この1枚でいいといわれる。
そのまま再度並び、一枚のみ渡すと、「もう1枚書いてください」と言われ、再度戻るよう言われる。ちょっとイらっとしてしまい、先ほど通りかかったスタッフがいらないといったことを伝えると、めんどくさいと思ったのか、「荷物を送らなかったことにしてください」と送った荷物の個数をゼロに直した。何なのかしら・・・と思いながらも税関を通り、はれて日本帰国。
あっというまに終わってしまった今回のノルウェー旅行。
帰りのバスは3時間近くも来ない。なので、空港内のカフェでこれを少し書いている。
次はいつまた再び訪れることが出来るのかなぁ。帰ってきて早々にそんなことを考えている私。
また近いうちに必ず!
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