6/24,25 Havard Wiik Trio @ PIT INN

 私的ピアノ・トリオ、前期三部作の完結編です。ノルウェーのホーヴァル・ヴィーク・トリオの来日公演@ピットイン。

 アトミック、フリーフォールなどでもお馴染みの彼。どんなグループのどんな場面においても決して自分のスタイルを崩さない。というか、それは決して頑ななまでに自分のスタイルを貫く、という風ではなくて、なんというか飄々としている。大きな身体で小気味よいタッチ、楽しい時には身を乗り出したり(表情までニコニコしていたり)足を投げ出したり、メンバーのソロを聴き入る時にはピアノにもたれかかってじっと見つめたり・・・といった具合。今回は、自身のトリオということで、さらにやりたい放題な感じが、今までに見た彼のどのステージよりも彼の魅力を最大限に出し切ったものだったと思います。

 このトリオ、他のメンバーのパフォーマンスもかなり見物でした。

 まずはドラムのホーコン。昨年の東京JAZZでのトロンハイム・ジャズ・オーケストラの記憶も新しい彼。ステージではいたってクール。タイトにリズムを刻み、与えられた仕事に最善を尽くす・・・という今までの印象だったはずが、
「こんな彼は見たことない!」と思ってしまうほどに、自由でアグレッシブなドラミングを披露してくれたのです。きっと、ホーヴァル・ヴィークに触発されたのでしょう。今までの彼の演奏では見たことのない、他の装飾楽器を巧みに操りながら、叩くだけではないドラムセットでの音を聴かせてくれました。シンバルのかすかにすれる音が波紋となって、ベースが、そしてピアノの音へとつながっていく様は、彼の新たな一面を見た感じ。と思えば、アップテンポな曲ではいつもどおりまるで機械じかけのロボットみたいに的確なリズムを繰り出してみたり。こんなに手数の多いドラマーだったとは・・・と思ったからこそ、これまでの彼のタイトなドラムのよさも引き立ってくる、そんな印象を受けました。特筆すべきは、めちゃくちゃ自由にやった後も、メンバーの音の気配を常に感じ、引き際に細心の注意を払う様。これには深く感心しましたし、相手を思いやるシャイな彼らしさを見たような気がしました。こういうところが多方面でひっぱりだこな理由なのかもしれません。

 ウッドベースのヴォーガンもまた、そんな兄さん格の彼らに触発されてか、二年前に来日公演を行った自身のグループ、Motifの時よりも一回り成長したパフォーマンスを見せてくれました。彼はまるで歌うようにベースを弾くのです。大きな身体を活かして、弾いた音をまるで包み込むように、再び自身を委ねるように。そのスタイルから生み出される音は、トリオにおけるリズム隊というよりも、ピアノが奏でるメロディーに奥行きを持たせる弦楽器。歌におけるソプラノとアルトのような場面も見せてくれるのでした。かと思えば、ホーコン同様に、いつもの新・伝承派のように正確なリズムを弾き出す場面も十分に見せてくれました。

 これまでの彼らのイメージをがらりと変えてしまうほどのプレイを引き出してしまったのは、やはり彼、ホーヴァル・ヴィークのトリオだったからなのだと改めて思ったのです。こんな高速で軽快なインタープレイを目の前で繰り広げられたんじゃ、自分たちだって今までどおりをやるわけにはいかないもの!

 というわけで、展開がどうなってしまうかも見えないままにヒートアップしていくステージに釘付けになったまま、二日間のステージはあっというまに幕を閉じてしまったのでした。これは今年度上半期のライヴで一番面白かったかも!


 終演後、ホーコンと少し話しを。顔を見た瞬間「September!」と。東京JAZZ(2006の東京JAZZを参照してください)の事を覚えてくれていたようです。「あの時のオレはクレイジーだった」と、何も言ってないのに話してくれた姿に思わず大笑い。今回のパフォーマンスは今までと全く違って自由だったのは何故?と聞いてみたところ、「オレにもわかんねーよ」といった具合。でも、きっとそれは、
「ボクの好きな楽器はピアノです」と自己紹介してしまうほどに、ピアノをプレイすることを愛している彼に触発されてのことなんでしょうね
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