5/13 Vit Svec Trio @ PIT INN

 チェコのピアノ・トリオ、Vit Svec Trio(ヴィート・シュヴェツ・トリオ)の二日目を見ました。

 ライヴのフライヤーを目にしてから、ずっと気になっていたこのトリオ。ピアノ・トリオという私の引き出しから出てくるのは、北欧・スウェーデンのe.s.t。メンバー構成も彼らと同じ、ピアノ、ベース、ドラムとくれば、どうしても比較してしまうのです。e.s.tはジャズ・トリオでありながら、多様なジャンルを上手く取り入れて、見た目マッチョなのに、曲はとてもドラマティック。その美しさは、聴く人の心をわしづかみにしてしまうのです。そしてよくない影響として、先日のクラシックのエキスポ「La Folle Journee au Japon」で聞いた青島さんの話 “東欧は男性的で、北欧は女性的な印象の音が多い”ということが鮮明に記憶に残っていたりして。果たしてそれはジャズにも当てはまるのかしら?という点を自分で確かめるためにも、今日のライヴは興味津々でした。

 ステージに現れた3人。リーダーを務めるベースのヴィート・シュヴェツのアフロヘアー?にまずびっくり。で、柔軟な口調で全てのMCと進行を務めるのは、一番若いピアノのマチャイ・ベンコ。リーダーがしゃべるものだと勝手に思い込んでいた私は軽く驚きました。

 彼らのステージを見ての第一印象は、インプロ的要素が強いトリオだなぁ。
けれど、ショーが進むに連れて、スウィングもあれば軽快なラテン調のものまで次々と繰り広げられる。と思いきや、ややマイナー気味の旋律は、まだ行った事のない街、プラハの美しく少し物悲しげな印象までをも連想させてくれるのです。途中でテンポダウンする曲も沢山あり、一つの楽曲の中でいろんな表情を見せてくれ、楽しくて全く飽きないのです。軽快で力強いタッチのピアノ、変則するリズムを軽快に叩くヤン・リンハルトのドラムからも目が離せない。そしてリーダー、ヴィート・シュヴェツのベースもとてもリズミカルで心地よい。そして何よりメンバーそれぞれの自然な連帯感がすごくいいのです。それぞれがソロでは本当にハチャメチャな程にプレイするというのに、上手く他のメンバーはそれに合わせて来る。そして最後は本当に息のあった見事!としかいいようのない演奏で曲を締めくくってくれるのです。最後はアルバム『Keporkak』からの曲、鯨の鳴き声をベースで上手く表現した音からスタートするちょっとマイナーでドラマティックな展開の曲で幕を閉じました。本当に多様なジャズを表現できるトリオなのだと感じました。

 すごく個人的見解ですが、彼らのような演奏スタイルって、男性特有のものなのかなぁと、ふと思いました。女性だと、こうはいかないのでは?たとえば日常において、女性っていくら仲良しだったとしても、自分と他人とをクールに分けている、悪く言うと、あわよくば・・・みたいなところがあると思うのです。男性はそうじゃないような気が。どれだけメチャクチャ喧嘩をしてしまったとしても、最後には、「俺たちやっぱり仲間だから!」みたいな、そんな感覚を彼らのステージを見ながら覚えたのです。

 買って帰ったアルバム『Keporkak』(=チェコ語でザトウクジラなのだそう)を聴き返してみて、ステージで見せてくれたハチャメチャな部分は影を潜め、その美しい仕上がりに、ライヴでの印象とは多少のずれを感じたのですが・・・、最初に音を耳にしたのがライヴでよかったと思いました。冒頭で自分に課した疑問(男性的か女性的かというところ)は、ライヴで受けた印象の方がはっきりしていたからです。答えはYes!彼らの男気のある自然な連帯感はとても羨ましく思いましたもの。

 男性的か女性的か・・・どっちが好きか、ということでなく、どちらも魅力的だということ。そういうところを表現する力を与えてくれる、改めて各地域が育む音楽性の面白さを感じました。

 さて、来月には3トリオ目の刺客、Haavard Wiik Trio(from Norway!)が来日します。今年のピアノ・トリオ三つ巴戦の最終章です。


Thanks:T.Ohsawa
Office Ohsawa

 

 
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