私的音楽雑記帳
FOLK ETYMOLOGY
11/4 天のしずく / 愛することは生きること
スープではなく、味噌汁。
宙に浮いた暮らしが、地に足をつけます。
料理家で作家の辰巳芳子先生の映画「天のしずく」を見ました。
御年88歳になる先生の手仕事は、スクリーンの中でも実にさわやか。
一つ一つの仕事が、丁寧に紡がれる言葉と共に
心にしっかりと伝わってきました。
まだまだ頭の整理が出来ていませんが、とりあえず書き連ねます。
先生の講演会を聞きに行ったのが2年前。
そのときに感じた、「私の暮らしは宙ぶらりん」という感覚。
それから数年たった今も、私の暮らしはやはり宙に浮いていて、
食の分野で仕事をしているにも関わらず、
自分のこととなると、週1回の味噌汁がやっと。
ご飯だって、週末に1週間分まとめて炊いて、冷凍庫にストック…という始末。
手間ひまかけて、食事の支度をすることは、
昔だったら当たり前なこと…と、今の時代に甘んじて
言い訳する暇があるんだったら、
だしの一つぐらいしっかりとらないと、
と、改めて思いました。
今回の映画のキーワードは、「スープ」。
病に倒れ、固形のものが口に出来なくなったお父さんのために
辰巳先生がこしらえたのが、さまざまな食材で作ったスープ。
いろいろな食材を目、鼻、口で楽しむことが出来るのは、
元気な証拠。
そうでなくなったとき、どうやって食を楽しんでもらうことが
出来るのか。
考えた結果生まれたのが、先生のスープ。
食が生死を分かつ。
一口の大切さ。
命の現場に直面している、その状況を支えるのが、人と食事。
ターミナルの現場に寄り添う家族もそうですが、
終末期医療の現場でもまた、その大切さを改めて感じ、
先生のスープをケアに取り入れているのだそうです。
食べることは、生きること。
よりよく生きるために、私たちは食べます。
その食べ物を育むのは、土。
土と命は一つ。
土と離れて、人間の存在はあり得ない。
土を感じない暮らしは、弱い。
土は、一握りの宇宙。
土は、宇宙の命が具体的に表れたものだと
先生は言いました。
私たちの暮らしは、意識しないと
どんどん土から離れていきます。
昔、実家に暮らしていた時には、家の裏には田が広がり、
ばあちゃん家の裏には、椎茸栽培の丸太があり、
きのこも野菜も、それを育む土もものすごく身近だったのに。
今は、土はどんどん離れてしまい、
それを求める暮らしは、余裕のある人の贅沢、
という感覚さえ覚えます。
それだけ、毎日の(食すること以外の)暮らしに
振り回されているのかもしれません。
講演会から数年経った今でも
残念ながら、そう感じます。
誰かのために、食事をこしらえる。
大切な自分のためにも、こしらえる。
食することは、命への敬意。
食べ物を用意することは、命への祝福。
先生の言葉は、当たり前のように紡いできた人生を、
きちんと見直すきっかけを与えてくれます。
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