積ん読の部屋♪

本棚に積ん読な本を読了したらばの備忘録

カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』あらすじと感想

2022-04-27 10:12:41 | 紙の書籍
新潮文庫 カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
PART ONE
PART TWO
PART THREE
訳者解説

【あらすじ】
この街を出て、永遠にどこかへ行ってしまいたい―むせかえるような緑色の夏、12歳の少女フランキーは兄の結婚式で人生が変わることを夢見た。南部の田舎町に暮らし、父や従弟、女料理人ベレニスとの日常の倦み、奇矯な行動に出るフランキー。
狂るおしいまでに多感で孤独な少女の心理を、繊細な文体で描き上げた女性作家の最高傑作。


【感想】
兄の結婚式の前後を淡々と描いている。舞台は第二次世界大戦中のアメリカ南部の田舎町。夏は気狂いな緑色をしている。
思春期に入りかけた12歳、身長は伸びすぎ不器量な容姿で怠け者、おまけに意地悪な性格のフランキー。この少女には共感できるところがほぼほぼない。珍しい主人公だと思う。
フランキーはいらいらするほど自己卑下と妄想に憑りつかれている。突拍子もない行動を起こしては、自らの首を絞めている。何度も何度も。

読みながらフランキーを不快に感じつつ、胸の奥底がちりちりとする感覚に襲われる。これはなんだろう…?
自分も同じ年頃に感じていた感覚があることに気づいた…。行き場のない感じ、世界や人と繋がりたいという欲求。おそらく、ほかの人たちにも大なり小なりある感覚なのではないだろうか?

この物語は「人生とは思うようにならない」ことを教えてくれる。それは哀しいけど真実なのだと思う。


【余談】
この本はどこかの書評かなにかでおすすめされていたので読んでみた。作者の傑作とされていて、自伝的要素が強い作品だという。納得。訳者の解説を読むと、作者の背景も知ることができておもしろい。
《村上柴田翻訳堂》シリーズ、作家 村上春樹が翻訳している作品のひとつ。
翻訳ものは読みづらいものが時折あるけど、この作品はするすると読める。おすすめの一冊。



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西條奈可・宮部みゆき 他『なさけ<人情>時代小説傑作選』あらすじと感想

2022-03-17 15:37:40 | 紙の書籍
PHP文芸文庫 西條奈可・宮部みゆき 他『なさけ<人情>時代小説傑作選』細谷正充 篇を読了しました。


あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
善人長屋 西條奈可
抜け殻 坂井季久子
まぶたの笑顔 志川節子
海の紺青、空の碧天 田牧大和
地獄染 村木嵐
首吊り御本尊 宮部みゆき
解説 細谷正充


【あらすじ】
善人長屋 西條奈可
お縫は千七長屋の差配の娘。巷では善人長屋といわれているここは、実は住人たちはみな訳ありだった…。

抜け殻 坂井季久子
向島に住まうおくめは50すぎの市兵衛の囲い者。おくめはかつては金栄堂という金つば屋の嫁だったが、息子の栄太と浅草ではぐれてしまい離縁されてしまった。

まぶたの笑顔 志川節子
芽吹長屋のおえんは、かつて松井屋の嫁だった。向島で息子の友松とはぐれ離縁された。

海の紺青、空の碧天 田牧大和
長太郎の姉お芳が安芸から江戸へ嫁ぐことになった。長太郎はこれがおもしろくない。なんとしても縁談をこわしたいのだ。

地獄染 村木嵐
新吉と奉公先の一人娘お文、佐吉とお袖。この二組の若い男と女は実は…。

首吊り御本尊 宮部みゆき
捨松は上総屋の奉公人でまだ十一。奉公が辛くて実家の長屋に逃げ帰ったが、母親は自分を見ようともせず、ただ泣くばかりだった…。


【感想】
善人長屋 西條奈可
長屋の住人がみな悪人という設定に吹き出す。加助だけは本当に真人間だったのに、長屋を追い出されずおいてあげることにするのがほっ。。とする。

抜け殻 坂井季久子
息子を失って抜け殻になってしまったおくめが痛々しい。最後はほんのりと元さやに戻れそうな予感に希望を感じる。

まぶたの笑顔 志川節子
息子を失ってしまったが、喪失と悲しみを乗り越え、前にすすもうとするおえんに幸あれと思う。

海の紺青、空の碧天 田牧大和
シスコンの長太郎がおかしくて苦笑もの。最後はふふっとなる。

地獄染 村木嵐
このアンソロジーの中で唯一、胸が悪くなる話。悪党の新吉(佐吉)に腹がたつ。お袖もお文もこんな男に惚れて哀れだ…。

首吊り御本尊 宮部みゆき
貧乏人の性がどうしようもなく辛く悲しい…。子は親を選べない。暮らしが苦しいのになんで子を次々とつくるのだろう?
土蔵の壁の折れ釘にぶら下がっていた捨松の母親が、いろんな意味で恐ろしい…。


【余談】
首吊り御本尊 宮部みゆき は、新潮文庫『幻色江戸ごよみ』に収録されていて読了していた作品だった。どうりで既視感があると思ったよ~。
今、ブログ内を検索してみたら、読了して記事をアップし損ねてた。あらら。








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カレル・チャペック『園芸家12カ月』内容と感想

2022-03-05 15:16:33 | 紙の書籍
中公文庫 カレル・チャペック『園芸家12カ月』小松太郎訳 を読了しました。

内容と感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
庭をつくるには
園芸家になるには
1月の園芸家
 種
2月の園芸家
 花つくりのコツ
3月の園芸家
 芽
4月の園芸家
 労働の日
5月の園芸家
 恵みの雨
6月の園芸家
 野菜つくり
7月の園芸家
 植物学の一章
8月の園芸家
 シャボテンつくり
9月の園芸家
 土
10月の園芸家
 秋のうつくしさについて
11月の園芸家
 準備
12月の園芸家
 園芸家の生涯について
訳注
解説 小松太郎
新装版解説「愛好家」礼賛 阿部賢一
参考地図


【内容】
われわれ園芸家は未来に生きているのだー。
草花をこよなく愛したチェコの作家、カレル・チャペックが描く、園芸家愛好家の幸福な熱狂に満ちた一年。そのユーモラスな筆致で世界中の読者を魅了し続ける、無類に愉快な名エッセイ。


【感想】
園芸あるある♪な文章が延々と綴られている、とても楽しいエッセイ。カレル・チャペックの実兄が描く挿絵も可愛い♡
ただ、どうしても全編、田口トモロヲの顔が浮かんでくるのには困った~。NHKのドラマ『植物男子ベランダー』好きだったからね。


【余談】
文庫の帯には、園芸王子の三上真史が爽やかなお顔で文章を載せている。彼がNHK『趣味の園芸』のメインMCから外れた頃から、番組があまりおもしろくなくなってきたので、最近はもうほとんど観ていない。
いや、別に村雨辰剛 はいいんだけれども、氷川きよしはこの番組向きなんだろうか?とか思ってしまうし。バラエティ色が強くなってどうもね…。


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別のgooブログからお引越し中です♪

2021-12-31 11:26:09 | ご挨拶
私の別のgooブログ「つれづれな日々のつぶやき♪」から、カテゴリー「読書」だけをこちらにお引越しします。結構な量なので、ぽちぽちと作業していきたいと思います。


「つれづれな日々のつぶやき♪」を始めたのは、2008.10.20でした。早いもので、もう13年目に入りました。我ながらびっくりです。まさかこんなに続けているとは…。
日々思うこと、空模様、読書やドラマ、観劇の感想などを思うままに綴っていったら、いつの間にかこんなに続いていたという感じです。
投稿記事が多くなってきたこともあり、このカテゴリーだけをこちらに移して、新規投稿もこちらにしていきたいと思います。今まで、フォローやコメント、「いいね♪」などをしてくださった方々には感謝しております。残念ながら、こちらにはコメントなどが移動できないので、その旨はどうかご容赦ください。有料ブログ(アドバンス・フォト)はバックアップやインポートができるのですが、こちらは無料版を使用していますので、ご理解のほどをお願いいたします。

完全に記事の引っ越しが終わるまで、こちらをトップにおいておきます。
これからもよろしくお願いいたします。


chibineko56

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和田はつ子・宮部みゆき他『なぞとき〈捕物〉時代小説傑作選』あらすじと感想

2021-10-20 10:00:50 | 紙の書籍
PHP文芸文庫 和田はつ子・宮部みゆき他『なぞとき〈捕物〉時代小説傑作選』細谷正充編を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
五月菓子 和田はつ子
煙に巻く 梶よう子
立花の涼 浮穴みみ
人待ちの冬 澤田瞳子
うき世小町 中島要
鰹千両 宮部みゆき
解説 細谷正充


【あらすじ】
五月菓子 和田はつ子
商家の妾が主夫婦の息子を柏餅で毒殺した疑いをかけられる。料理人の季蔵は独自の捜査を進めると…。

煙に巻く 梶よう子
弥太郎と弥二郎の兄弟は煙草屋吉田屋の看板息子。実はこの兄弟には、本人たちも知らないある秘密があった。

立花の涼 浮穴みみ
茶漬屋夢見鳥のお蝶はきっぷがよくてお節介。またぞろ面倒なことに首をつっこむことになり…。

人待ちの冬 澤田瞳子
幕府直轄の御薬園で働く真葛は、薬種屋から消えた女中の行方を探ってほしいと頼まれるが…。

うき世小町 中島要
一膳飯屋のたつみの看板娘お加代は器量よし。三崎屋の「江戸錦絵小町比べ」に絡んで、幼なじみのお八重、お志乃と思わぬ成りゆきに…。

鰹千両 宮部みゆき
棒手振りの魚屋角次郎に、鰹を千両で買いたいという奇妙な申し出があり…。


【感想】
五月菓子 和田はつ子
お大尽な商家の妻と妾というだけで、もういろいろと想像できてお腹いっぱい。妻のお加代は悋気が強い、妾のおいとは心優しい。
結局、死んだ息子の弥太郎は今でいう、小麦アレルギーのアナフィラキシーショックで亡くなったのだった。一件落着したが、家庭内はこの後どうなるやら…。

煙に巻く 梶よう子
弥太郎と弥二郎の兄弟は実は双子。生まれたときから兄弟として育ててきた。
双子は畜生腹、陰と陽がふたつに分かれたとされ、子の命を絶つことさえあった。人はなんて身勝手な生きものなのだろう…。勝手な理屈をつけて、それに振り回されて。

立花の涼 浮穴みみ
茶漬屋夢見鳥のお蝶は、珍しい朝顔の鉢を持っていた、女の子の格好をした男の子と関わることに。その子は高田屋の寮に住む兎一郎。義母のおつた恋しさに、おつたが喜ぶと思って朝顔を大切に育てている。
兎一郎が薬といって飲まされていたのは、心臓を弱らせる毒薬。拝み屋善治と女中のお松の仕組んだことだった。
兎一郎の健気さに泣ける…。みなそれぞれに、いろいろな事情や人に言えない過去を抱えて生きている。切なく哀しい…。

人待ちの冬 澤田瞳子
元岡真葛は肉親の縁に薄い生い立ち。それでも、健気に御薬園での仕事に励んでいる。薬種屋成田屋の悪い噂を確かめようとするうちに、思わぬ事件に巻き込まれる。
薬種屋成田屋の当代は入婿で、色男だが仕事もいい加減、女癖も悪いし、妻のお香津に手をあげることもある最低の男。なんでこんな男を好きになって婿に迎えるのか…。理性を失う「好き」ほど厄介な感情はないとつくづく思う。
一番哀れだったのは女中のお雪。夫を殺してお店を守りたいお香津に頼まれ、手伝うことになったうえに、無理強いされた末に身ごもらされて…。自分ではどうしようもない、弱い立場のお雪が哀れで仕方がない。

うき世小町 中島要
一膳飯屋のたつみの看板娘お加代は器量よし。増田屋の娘のお八重は不器量、貧しいが器量よしのお志乃。三人は手習い時代からの幼なじみ。
お志乃を殺したのはお八重だった。お志乃の放ったひとことが、お八重のコンプレックスのスイッチを押してしまった…。
三人三様、みな愚かだ。お加代は器量を気にかけないことで、お志乃は器量を鼻にかけることで、お八重を傷つけてきた。みんな仲良し♪幼なじみ♪ そんな無邪気が人を傷つけるのだ。無邪気は邪気がないからいいのではない。無邪気と愚かはイコールでもある。人間関係の難しさ、無情を感じる。

鰹千両 宮部みゆき
棒手振りの魚屋角次郎に持ちかけられたのは、鰹を千両で売ってくれという妙な話。言い出したのは大店の呉服屋伊勢屋の主人。
実は本当に欲しいのは鰹ではなく、角次郎の娘のおはるだった。実はおはるは伊勢屋の双子の娘。「双子は畜生腹」と言い張るきつい母に逆らえず、橋のたもとに捨てた子だった。手元に残した娘が疱瘡で亡くなり、その娘の代わりとばかり、おはるを千両で渡してもらうつもりだった。
伊勢屋夫婦のあまりの身勝手さに腹がたつ。娘が亡くなったのは気の毒だが、亡くならずにいたらそのまま知らん顔なのだろうか? もっといえば、母親に意見も言えず、自分の妻を守ることもできない、伊勢屋の不甲斐さが元凶だが…。
いろいろと腹がたちつつ、最後はほっとできる話。落語の人情噺のよう。


【余談】
捕物話はそれほど好きなわけではないが、嫌いなわけでもなく。作品にもよるし。
どの作者の作品でも、世間知らずのはねっかえり娘が出てくるのは苦手。事件によって成長していくーというのも苦手。正直、イライラしてしまうので。
実年齢に関係なく、人の世や心がわかっている、十手もちや同心が捜査にあたる捕物話が安心して読んでいられる。

「煙に巻く」と「鰹千両」はどちらも、たまたま双子が生まれたことから起こる悲劇。時代とはいえ憂鬱な気分になる。本当につい先頃まで、人の命は軽かったのだろうな…。
関係ないけど、私の弟も双子。二卵性の。この時代に生まれなくてよかったね…。しみじみと…。

収録作のうち、宮部みゆき『鰹千両』は読了していた作品。新潮文庫『初ものがたり』だった。アンソロジーはよくあるね、読了作品がかぶること。
「あれ~?これ読んだことあるよ?」みたいな。













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