積ん読の部屋♪

本棚に積ん読な本を読了したらばの備忘録

夏目漱石『こころ』あらすじと感想

2009-07-17 16:42:52 | 紙の書籍
新潮文庫 夏目漱石『こころ』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。




【目次】
上 先生と私
中 両親と私
下 先生と遺書
注解 大野淳一
漱石の文学 江藤淳
『こころ』について 三好行雄
年譜


【あらすじ】
書生の身であった私は、暑中休暇を利用して海水浴に行った友達から誘われ、鎌倉へと出かけて知り合ったのが先生だった。
私と先生の短いながらも濃密な交流を描く長編。


【感想】
学生の頃に読んだ作品には、大人になってから再読したいと思うものも少なくない。この作品もその中のひとつ。改めて読んでみると、当時とはまた違った感じ方をしていることに気がつく。
例えば、「先生」の「私」に対する振る舞いや言葉に、当時はただただまどろっこしく苛々していた。大人になり、「先生」の心情に共感はできないが理解できるようになった。
同じことが「K」にも当てはまる。やたらと「道」にこだわり、最終的に自殺という道を選んでしまう彼を、当時の私は全く理解できなかった。今は何なくわかるような気がする。
Kの「御嬢さん」に対する失恋は切っ掛けにすぎないのではないか?自分の生い立ちや将来のこと、二十代前半のモラトリアムをどうにかやりすごしてしまえば、もしかしたら、自殺せずに生きていけたかもしれない…。
中学生当時に感じていた、とても暗く重苦しいものはなくなり、むしろ人が生きていくことの難しさを感じた。


【余談】
中学生の頃に一度読んでいるので再読。








エドガー・アラン・ポー『黒猫/モルグ街の殺人』あらすじと感想

2009-07-09 16:26:11 | 紙の書籍
光文社文庫 エドガー・アラン・ポー 小川高義 訳 『黒猫/モルグ街の殺人』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
黒猫
本能 vs. 理性ー黒い猫について
アモンティリャードの樽
告げ口心臓
邪鬼
ウィリアム・ウィルソン
早すぎた埋葬
モルグ街の殺人
解説 小川高義
年譜
訳者あとがき


【あらすじ】
パリの架空の街に無惨な母娘殺人事件が起こる。由緒ある名門の末である探偵デュパンが、警察も見落としていた証拠を探し、推理を組み立て、見事に事件を解決していく。
捕まったあまりにも意外な犯人とは‥?


【感想】
八編の短編集だが一番面白いのは、『モルグ街の殺人』(1841) The Murders in the Rue Morgue だと思う。推理小説の元祖として名高く、後の作家に多大な影響を与えた作品だといわれているし。
サー・アーサー・コナン・ドイル『唇のねじれた男』(シャーロック・ホームズの冒険)に似たシュチュエーションがみられる。
推理小説のクラシックとして楽しめる作品。


【余談】
中高生の頃に読んでいるので再読。読んでいると内容を思い出す。それまではわりと忘れているんだが。




北原亞以子『深川澪通り木戸番小屋』あらすじと感想

2009-07-07 16:30:32 | 紙の書籍
講談社文庫 北原亞以子『深川澪通り木戸番小屋』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
深川澪通り木戸番小屋
両国橋から
坂道の冬
深川しぐれ
ともだち
名人かたぎ
梅雨の晴れ間
わすれもの
解説 縄田一男

【あらすじ】
江戸・深川中島町、通称澪通りにある木戸番小屋に住む笑兵衛、お捨夫婦とここを訪れる人々の姿を描く。
木戸番小屋の夫婦なのに妙に品がある笑兵衛とお捨。日本橋の大店の夫婦だったとか、京の由緒ある家の生まれで江戸に駆落ちしてきたとか、結局誰も二人の身の上は知らない。
しかし、いつも明るく穏やかな二人には、実は人様に言えないような重い過去があったのだった。


【感想】
市井の人が生きていくことの辛さ、悲しみ、憤り、そしてささやかな幸せ。作品中に流れる、現代にはないゆったりとした時間と空気。人が人らしく生きている実感と重み。
失われたものを目の当たりにしたようで、軽い目眩を感じてしまった。大切なものを思い出させてくれる、江戸の風情溢れる作品。


【余談】
95年9月から96年3月まで、NHK「金曜時代劇」の枠で「とおりゃんせ~深川人情澪通り」としてドラマ化されている。
笑兵衛:神田正輝、お捨:池上希美子、主題歌:おおたか静流「水の恋唄」。
本放送当時に観ていたが、改めて原作を読んでみて原作の雰囲気を壊すことなく映像化されていたと思った。
エンディングの映像に「水の恋唄」が流れると切なく、哀しい気持ちになったことを思い出した…。


上田和夫訳『小泉八雲集』内容と感想

2009-07-06 11:43:19 | 紙の書籍
新潮文庫 上田和夫訳『小泉八雲集』を読了しました。

内容と感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
『影』(Shadowwings)
『日本雑記』(A Japanese Miscellany)
『骨董』(Kotto)
『怪談』(Kwaidan)
『天の川物語その他』(The Pomance of the Milky Way and Other Studies and Stories)
『知られぬ日本の面影』(Glimpses of Unfamiliar Japan)
『東の国より』(Out of the East)
『心』(Kokoro)
『仏陀の国の落穂』(Gleanings in Buddha-Fields)
『霊の日本にて』(In Ghostly Japan)
 注・解説・年譜 上田和夫


【内容】
小泉八雲ことラフカディオ・ハーン(Lafcadio Hearn)が来日後に収集した怪談・奇談の作品集。


【感想】
今は失われてしまった、かつての日本独特の文化・風習・精神性がそこにある。この何ともいえない感じや匂いのようなものに、私は心惹かれてしまう。
「耳なし芳一のはなし」、「ろくろ首」、「青柳のはなし」、「安芸之助の夢」などが面白かった。


【余談】
確か中学生の頃に、学校の図書館で借りて読んだ記憶がある。また改めて読んでみたいと思い、本棚に加えてみた。
やっぱり私は、何だかよくわからないけど不思議な話ーというのが好きなんだと思う。特に人が描かれているものに。