積ん読の部屋♪

本棚に積ん読な本を読了したらばの備忘録

戌井昭人『すっぽん心中』あらすじと感想

2016-09-29 17:02:42 | 紙の書籍
新潮社 戌井昭人『すっぽん心中』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
すっぽん心中
植木鉢
鳩居野郎


【あらすじ】
変化を求めず、目の前で起こることをやり過ごすのが人生だと思っていた休職中の田野と痛い目に遭いつづけながら、あっけらかんとしているモモ。不忍池で出会った二人は霞ヶ浦にむかう(「すっぽん心中」)。スイッチの入った男の狂騒と暴走(「植木鉢」)、屋上の狂人のバトルと本心(「鳩居野郎」)の三本立て。


【感想】
この本もどこぞの書評でお薦めされていたので読んでみたもの。どうも文庫が出ていないようなのでハードカバーを購入した。文庫が出ていたらほぼそちらを購入するから。
結論から言ってしまうと外れだった。文庫なら数冊購入できるのに~。最近、読書の外れが続いていて軽く凹む。

さて、本題。
表題作は2013年芥川賞候補になり、第40回川端康成文学賞を受賞している作品。
先に言ってしまおう。あくまでも個人的な感想でしかないが、どの辺が受賞に値したのか私にはわからなかった。ただ単に、自分には合わない作家だということなのだろう。

文章はするっと読みやすいけど、引っ掛かりがないというのか薄っぺらい印象。心情も描けてない気がするし。
私は文章を味わい、その情景を想像しながら読むほうなのだが、これはそうしたい気分にならなかった。
文章から立ち上る匂いが鼻につき、薄汚れたものを見せつけられている感じで不快だったから。美辞麗句を並べ、綺麗ごとの世界ならいいというのでは決してない。どんな醜いことや闇を描いていてもなにかしら心を動かすものがあればいいのだが…。登場人物に全く共感も感情移入もできなかったし。

『すっぽん心中』は、どこにでもいそうな駄目な男と男運が悪い(選んでいるのは本人だけど)モモという若い女がすっぽんを探しに霞ヶ浦をめざす話。
『植木鉢』は妻とまだ赤ちゃんの息子を連れて、週末恒例行事になっている自分の実家へ出かけたときに遭遇した殺人事件の顛末。
『鳩居野郎』はこれもなんとも駄目な男が、大嫌いな鳩の回想と自宅兼仕事場の屋上で繰り広げられる鳩とのバトル。

3作品に共通しているのはストーリーの既視感と、どの主人公も駄目な男で強欲でエロくてイライラし、大して能力もないのに努力もせずにいい思いだけがしたいと思っていること。ダメだ~全く受けつけない。そして、全く笑えない。『植木鉢』はまるで2サスの展開。これ、本当に似たような2サスを観たことあるんだが。
結論、私は一見普通に見える人間から、突如吹き出す狂気が生理的にだめなんだと思う。


【余談】
できるだけ傾向が偏りすぎないようにいろいろと読もうと思っていて、雑誌や新聞の書評を参考にしつつ、アンテナに引っ掛かったものを選んでいるのだが…。
最近は外れが多くてね~。以前は当たりが多かったんだけどな~。
また、おもしろい本に出会えますように♪


【リンク】

泉鏡花『外科室・海城発電 他五篇』あらすじと感想

2016-09-18 17:28:27 | 紙の書籍
岩波文庫 泉鏡花『外科室・海城発電 他五篇』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
義血侠血
夜行巡査
外科医
琵琶湖
海城発電
化銀杏
凱旋祭
解説(川村二郎)
初出一覧


【あらすじ】
一度目をかわしただけで恋におちた学生と少女が、歳月をへだてて、それぞれ外科医師と患者の貴婦人として手術室の中で再会し、愛に殉ずる。鏡花文学の原型をもっともよく示すこの「外科室」をはじめとする初期の代表作集。


【感想】
どこかで泉鏡花の『外科室』と川端康成の『片腕』が、エロティックで美しいというような書評を読んだ覚えがあり読んでみた。書評を書いたのは作家(名前は失念)だったと思う。

どれも古い作品なので文体と字体が読みづらかった。これは初出が明治27年~30年ということを考えれば、しかたがないと思う。全体に流れる時代の空気感と人生観は、現代ではは疑問に思うことも多いが、生きていくうえで感じる苦しさややりきれなさは同じなのではないだろうか?
読みづらいな、、と思ったとき、「これは昼ドラだ」と思い直してみると、不思議とするすると読めた。荒唐無稽なストーリーや若く美しいヒロインの苦難は、昼ドラなら納得できるというもの。

表題作の『外科室』は荒唐無稽なストーリーではあるが、昼ドラならOK!だし、漫画なら木原敏江さんや大和和紀さんの明治ロマネスクものだと思えなくもない。前述のとおりエロティックで美しいと感じた作品。
貴船伯爵夫人は麻酔剤の作用で胸に秘めた想いを、無意識のうちに吐露してしまうのではないかと恐れ、手術に際しても麻酔なしで行って欲しいと懇願する。この胸に秘めた想いとは、執刀医の高峰が昔まだ医学生だった頃、一度見ただけで抱いた恋心のことだったのだ。
これはもう明治ロマネスクものの漫画だ。木原敏江先生の作品には似たような切ないお話が幾つもあるし。
麻酔で思い出したのだが、映画版『空中庭園』で絵理子の母が秘密を暴露してしまうのを恐れて、手術の麻酔を嫌がるシーンがあった。どうも本気でそう信じていたらしい…。昔からそう信じられていたのだろうか?


【余談】
明治・大正期の古い作品を読むときに「読みづらいなぁ、、」と感じたときには、昼ドラや漫画などに脳内変換すると、不思議とするする読めるのでこの方式はオススメ♪
お偉い専門家の方からはお叱りを受けそうだけど、読むのを止めて本を放り出すよりはず~っとよいはず。


【リンク】