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ブロンコスから学ぶ

2021-10-18 20:29:17 | バスケットボール
【B3】さいたまブロンコス、ナゼ強い?

10/18(月) 17:17配信・バスケットボールスピリッツ


スタートダッシュに成功したブロンコス「もう別のチームだと思ってください」新川敬大
「もう別のチームだと思ってください。メチャクチャ楽しいです」と新川は満面の笑顔を見せる

2005年に6チーム(仙台、新潟、埼玉、東京、大阪、大分)からスタートしたbjリーグ。ラストとなった2015-16シーズンには24チームへと膨れあがった。初年度から参戦した通称オリジナル・シックスの中で唯一、プレーオフ進出を果たせなかったのが埼玉ブロンコスである。あまりに勝てなかったため、ついつい「埼玉ブロンコス、ナゼ弱い?」という記事まで書いてしまったのが2014年のことだった。

2016年、Bリーグ誕生とともにB3リーグに振り分けられる。昨シーズンからチーム名が「さいたまブロンコス」に変わり、チームカラーもグリーンから燃えるレッドへと一新した。しかし、5シーズン目はB3最下位に終わり、ブロンコスはあいかわらず弱いままだった。

「やっぱり勝てないとおもしろくなかったです」と、昨シーズンを振り返るのはキャプテンの新川敬大だ。迎えた2021-22シーズンは、ここまで5勝1敗(10月16日現在)と見違えるような快進撃を続けている。昨シーズンは一度も勝つことができなかったベルテックス静岡と横浜エクセレンスに早くも白星を挙げた。天皇杯では昨シーズン2位のトライフープ岡山を相手に、新川の3ポイントシュートブザービーターで競り勝った。開幕から好スタート切った今シーズンは、「もう別のチームだと思ってください。メチャクチャ楽しいです」と新川は満面の笑顔を見せる。

2020年2月23日の岐阜スゥープス戦以来、600日ぶりとなるアウェーでの勝利を飾った10月15日の横浜EX戦。「昨シーズンはアウェーで勝利したことがなかったので(0勝20敗)、まずはこの試合にフォーカスし、全員で試合に入ろう」と新指揮官の泉秀岳ヘッドコーチは選手たちを送り出す。その言葉どおり、第1クォーターは21-7と一方的な展開となった。第2クォーター、新加入のブラクストン・ハギンズの活躍で横浜EXに流れが傾きはじめる。「試合の入りはすごく良いんですが、その後のセカンドユニットがスターターと同じマインドやエナジーでプレーできない時間帯があります」と新川がいう課題が浮き彫りとなった。

横浜EXに追い上げられる中、泉ヘッドコーチが「リバウンド!」「ディフェンスから」と大きな声で、選手たちを鼓舞する。全員がアグレッシブにリバウンドに飛び込み、ボールへの執着心を見せた。「まずはリバウンドで負けないこと。リバウンドを取って、その後のチャンスをいかに増やしていくことを突き詰めています。今シーズンのブロンコスはリバウンドのチームです」と泉ヘッドコーチは明言する。

長島蓮や野原暉央など学生時代に名を馳せた選手ばかりであり、「B2経験者も多く、みんな基礎がしっかりできているので、チームルールを徹底すれば負けないという手応えを感じています」という新川も、京北高校時代は世代別日本代表に選ばれている。全員が自信を持ってプレーできており、課題の克服も時間が解決してくれそうだ。

平均年齢26.8歳、まもなく30歳の誕生日を迎える泉ヘッドコーチも含め、全体的に年齢が近い。「遠慮せずに、思ったことを練習中から言い合えています。その中で、ベテランの佐藤(文哉)選手が全体を見ながら、足りない部分をズバッと言ってくれます」と新川が言うように、試合中も率先して声を掛け合っていた。チームコンセプトとして、先に挙げたリバウンドの上に「コミュニケーション」を泉ヘッドコーチは掲げている。「選手同士で話さなければいけないことが浸透しはじめています」と手応えを感じるチーム力こそが、今シーズンのブロンコスの強さだ。

ルーズボールを追っている姿を見せるところからはじまるプロ意識
プレー面だけではなく、昨シーズンから一番大きな変化が見られているのがプロ意識である。「格好つけるということではなく、子どもたちが見たときに、まずはルーズボールを追っている姿を見せなければいけないし、それができなければそもそもお客さんを呼べないよね」と泉ヘッドコーチは選手たちに説いている。勝利への執念が、会場に足を運んでくれた方々に感動や勇気として伝わる。根本であるプロ意識がこれまで以上に芽生えたことで、選手たちのプレーも上向きはじめた。その姿を見たファンや他のチームからは、ブロンコスの変化が評価されはじめてもいた。

「地元埼玉県のバスケをよくしたい、盛り上げたい」と自ら懇願し、昨シーズンは選手として泉ヘッドコーチはブロンコスにやってきた。現役を引退したわけではないが、ブロンコスのために一番良い形を模索していったところ、コーチ経験が一切ないにも関わらず、「気付いたらヘッドコーチになっていました」。

昇格を目指しているが、狭き門であるとともに、クラブライセンスの問題もある。「このチームの勝利を第一に考えています」という新川だが、B2やB1でプレーするチャンスを欲しているのも当然だ。U16日本代表としてともに戦った馬場雄大を筆頭に、同世代の活躍に「かなり刺激を受けていますし、置いて行かれているなという危機感もあります」というのも原動力となっている。「B3でバスケ人生を終わらせたくないですし、上のレベルでプレーしたいという目標があります。1年ずつステップアップしていきたいです」と覚悟を決め、チームとともに這い上がらねばならない。

まだはじまったばかりだが、すでに活躍を見せる「長島や佐藤、新川あたりは、昇格できなければ来シーズンは引き抜かれそうで怖いです」と泉ヘッドコーチは吐露する。しかし彼らの活躍も、選手たちのポテンシャルを引き出しているヘッドコーチの手腕である。選手たちの選択を尊重しつつ、「他のチームから声をかけられたとしても、今後もブロンコスの組織の一員になりたいと思えるようなクラブ作りを、この1シーズンを通して僕もがんばらなければいけないです」とコート上で戦うチームだけではなく、クラブ全体の成長を見据えていた。

今シーズンの目標は「全チームに勝つこと」であり、最初の1周目でクリアすべく照準を合わせる。B1経験者も多い話題の新規参入チームであるアルティーリ千葉や長崎ヴェルカは、天皇杯を含めて無敗を誇っている。「11月には両チームとの対戦があるので、僕らが最初に倒したい。1周目を終えたあとに、今シーズンのブロンコスは期待できる、と思ってもらえるような順位にいることを目指しています」という泉ヘッドコーチは、これまでの弱いイメージを払拭するチャレンジが続く。昨シーズン、B2だった群馬クレインサンダーズから移籍してきた新川は、「B3のレベルは正直言ってなめていました」。しかし1シーズンを戦い終え、今では「なめられている印象があるB3を変えたい」と自らの考えをあらためるとともに、まわりにも認められるように底上げしていく。

かつてのブロンコスを応援し、B3となったことで疎遠となったファンがいるならば、もう一度グリーンのウェアなどを身につけて、今シーズンの変化をその目で確かめていただきたい。共感できる部分があれば、1つでも新しい赤いウェアやグッズを手にすることで新たなブロンコスとの歴史が動きはじめる。それがチームを支え、選手たちのさらなる力を引き出すはずだ。