中国ドラマ「ミーユエ 王朝を照らす月」を観ている。
この物語の台詞の中に「函谷関」という関所の名がよく出てきて
思わず「箱根八里」という古い唱歌を思い出した。
「 箱根の山は天下の険 「函谷関」もものならず
万丈の山 千仞(せんじん)の谷
前にそびえ 後方(しりえ)に支う(さそう)
雲は山をめぐり 霧は谷をとざす
昼なお暗き 杉の並木
羊腸(ようちょう)の小径(しょうけい)は 苔滑らか
・・・・・・」
何十年も前の中学生のころ、学校から与えられた小さな薄い歌集に
この唱歌が載っていて、「函谷間」の言葉があった。
その後、中国の史実にもよく出てくる関所の名前だと知った。
そしてまた、ずいぶんの月日が経って、2014年「女声合唱団風」のコンサートで
宗 左近氏の詩に林光さんが作曲した<いつも風 流れる川>(1986年)を歌った。
曲集の中の4曲目に取り上げられている清少納言の和歌は
「中国の故事」にまつわるものだった。
この曲集は、宗さんが、百人一首の中の和歌から
インスピレーションを感じて作詩された詩に
林光さんが作曲された女声合唱曲。
1 ながめ
花のいろはうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに
『古今集』小野小町
2 若かった
わすらるる身をば思はずちかいてし人のいのちの惜しくもあるかな
『拾遺集(しゅういしゅう)」右近
3 水のなかに
玉の緒よ絶えなば絶えねながらえば忍ぶることの弱りもぞする
『新古今集』式子内親王
4 夜 (よる)があけない
夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ
『後拾遺集』清少納言
むかし中国の斉の孟嘗君(もうしょうくん)は、深夜なのに鶏の鳴き声をたてて
「函谷関」の関守に関所を開けさせたけれど
これを真似たある人が、思いを寄せる?女性に
「夜が明けるよ 愛してるよ」という声をたてて
女性の部屋に入ろうと試みた。
わたしと夜を明かしたいとおっしゃるけれど、好きなお人でない。
だめ、それくらいのことで女の関所があけられるものですか。
「夜があけない 心がくらい
とても関所は 開けられない
でも昔中国に 頭のいい人がいた
鶏の鳴き声まねた 夜があけたよお
あわてて関守 関所をあけた
でも今この国に 頭のよくない人がある
頭のいい人の真似したつもりで
恋する人の真似して鳴いた
愛してるよお
あわてて関守 関所をしめる
ここは日本 わたしは女
好いたおかたでない限り
夜があけないこころがくらい
開けた関所も あわててしめる」
5 空が低く
難波潟みじかき蘆のふしの間もあはでこの世をすぐしてよとや
『新古今集』伊勢