7月16日(金)からの緊急全国公開が決まったサスペンス映画『共謀家族』。昨年の「2020 東京・中国映画週間」では『誤殺〜迷える羊の向かう先〜』という邦題で上映された作品なのですが、何と! こちらでもご紹介したように、コロナ禍の昨年、中国映画の年間興収第10位に食い込んだヒット作なのです。しかも、愛国映画や青春映画、香港スターの主演作が並ぶ昨年のトップ10の中で、唯一、地味な配役のサスペンス映画という、どうしてこれが? と思ってしまう作品なんですね。ところが『共謀家族』は、中国の映画マニアを熱狂させ、2019年末に公開されて以降3月まで上映されている間に何度か「今週の興収ランキング」の1位を獲得、コロナ禍で一時映画館が休館になったあと、再開後の7月に再び上映されているのです。きっと、2回、3回と見た観客がいたに違いありません。まずは、作品のデータをどうぞ。
『共謀家族』 公式サイト
2019年/中国/北京語・タイ語/112分/原題:誤殺/英語題:Sheep Without a Shepherd
監督:サム・クァー(柯汶利)
主演:シャオ・ヤン(肖央)、タン・ジュオ(譚卓)、ジョアン・チェン(陳沖)、フィリップ・キョン(姜皓文)、チョン・プイ(秦沛)
配給:インターフィルム/アーク・フィルムズ
※7月16日(金)より新宿バルト9ほか全国順次公開
© 2019 FUJIAN HENGYE PICTURES CO., LTD, WANDA MEDIA CO., LTD
ストーリーは、公開情報リリースで送られてきたものを引用します。
東南アジア、タイ。幼き日に中国からこの地に移り住んだリー・ウェイジエ(李維傑)は、今は妻のアユー(阿玉)、高校生の娘ピンピン(平平)、まだ幼い娘アンアン(安安)の一家4人で幸せな毎日を送っている。インターネット回線会社を経営しているリーは、信心深く穏やかな人柄で、地域の誰からも好かれていた。『ショーシャンクの空に』が大好きなリーは、暇さえあれば事務所で映画ばかり観ている映画マニアでもあった。
そんなある日、サマーキャンプに出掛けたピンピンが、そこで出会った不良高校生に睡眠薬を飲まされ、暴行の様子をスマホで撮られてしまう。ネットに動画を上げると脅されたピンピンは、自宅にやってきたその不良スーチャットと揉み合いになり、誤って彼を殺してしまう。スーチャットは、地区の警察局長の一人息子だった。
出張から帰り、妻から全てを知らされたリーは、愛する娘と家族を守る為、完璧なアリバイ作りに着手する。常々「映画を1000本も見れば、世界に分からないことなどない」と考えていたリーは、それまで観てきた映画のトリックを応用し、捜査の先の先まで読み尽くした完全犯罪を計画。警察の事情聴取に備え、妻子に想定尋問を繰り返すリーと家族との「共謀」の先にはしかし、予想もつかない結末が待っていた―。
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このストーリーを読んで、ピンと来た人は110番――ぢゃない、もうおわかりですね。インド映画ファンなら、即、『Drishyam(ドリシャム/光景)』だとわかると思います。そうなんです、『共謀家族』は中国語題名を『誤殺瞞天記』という、マラヤーラム語映画でモーハンラールが主演した『Drishyam』(2013)と、そのヒンディー語リメイクでアジャイ・デーウガンが主演した『Drishyam』(2015/ネットフリックスでは『ビジョン』というタイトルで見られる)を元にしたリメイクなのです。そのため、『共謀家族』のクレジットの中には、英語版Wikiのように「Jeetu Josephの2013年作品『Drishyam』に基づく」と言及されているものもあります。2本の『Drishyam』では、いくつも印象的なシーンがありましたが、中でも忘れられないのがヒンディー語版で警察署長を演じたタッブーの怖さ。パッツンパッツンの警部服にも仰天しましたが、あの怖さは語り草になるレベルでした。そして『共謀家族』では、『ラストエンペラー』(1987)にも出演したジョアン・チェンが、タッブーに負けないぐらいの恐怖の存在感を放っています。
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このように、リメイクではありますが脚色、新たなるトリックの設定、そしてキャスティングなど、目を見張らされる緻密な仕上がりが『共謀家族』の大きな魅力となっています。中国語圏映画がお好きな方はもちろん必見ですが、インド映画ファンならぜひぜひ見比べてもらいたい作品です。本日はまず公開の第一報だけですが、あとでまた、興味深い点などをご紹介しようと思いますのでお楽しみに~。