1916年12月ベーデンパウエル卿はカブスカウト世代の子供達の為に「ウルフカブ・ハンドブック」という本を出版しました。以下はその本の中に記載されいる一説です。冬休みの時に、時間があったら読んで見てください。
●グッド・フェローズ
森の中には、大きい黄色の眼と、耳みたいに小さい毛を2本たてた年よりのフクロがいました。この鳥は、夜にだけきて、幽霊のような気味の悪い「ホウ、ホウ」という鳴き声を出すので、おろかな子供たちは、たいへん怖がっていました。けれども、森が好きな少年たちは、このフクロは賢くて、みんなに親切なことを、よく知っていました。この村に1けんの、仕立屋があって、そこに、トミーとジョニーという2人の息子が、いました。お母さんは、もう亡くなっていましたので、2人は、仕立屋とおばあさんとで暮らしていたのです。おばあさんは、この2人をかわいがってはいましたが、2人とも怠け者で忘れん坊でだらしがないので、しょっちゅう小言を言っていたのです。2人は、いっも泣きわめいたり、働かないで遊んだり、家具をひっくり返したり、皿をこわしたり、服をだめにしたりして、うるさがられていました。自分さえ、面白ければそれでよい。人に迷惑をかけることなんか、何とも思っていませんでした。
そこで、おばあさんは、昔この家にグッド・フェローがいたころは、家の中がきちんとして、今と大ちがいだったと、2人に話しました。
「グッド・フェローってなーに?」
と、子供たらは、聞きたがりました。
「グッド・フェローというのはね、小人です。いつも、誰もまだ起きないうちにやってきて、お台所を掃除して、火をたきつけたり、水をくんだりして、朝ごはんの支度をしてくれるのです。また、お部屋の中を片づけたり、庭の草をむしってくれるのですよ。このようにいろいろの仕事をしてみんなを助けてくれるのですが不思議なことに、誰もその姿を見た者はないのです。みんなが起きてくる前に、そーっと家から抜け出して行くからです。けれども、みんなから非常に感謝されましたね。みんなは幸福だったし、家の中はきれいでぴかぴか光っていたんだもの。」
と、おばあさんは言いました。
それをきいたトミーとジョニーは、なんとかしてそのグッド・フェローに会って、家にきてもらうならば、お父さんや、おばあさんが、いつも自分たちにいいつける仕事を、助けてもらうことができる。どうしたらグッド・フェローに会えるかなと思いました。
2人は、おばさんにグッド・フェローを見つけに行くにはどうすればよいか、と尋ねたのです。するとおばさんは、賢い年よりのフクロウをさがして、そのフクロウに尋ねるのが一番良いやり方だと言いました。そのフクロウは、たぶん妖精のことなら、何でも知っているはずだから、グッド・フェローのいるところを教えてくれるだろう、と言うのでした。
そこで、兄さんの方のトミーは、日が暮れてから、探しに出かけました。そのうちに、年よりのフクロウの鳴き声が耳に入ってきたので、トミイは鳴き声の真似をして近づきました。そして、フクロウと話しました。まず、自分がたいへん困っている訳を話しました。例えば遊びたいのに仕事をやらされる辛さなどを話しました。そして、もしグッド・フェローを見つけて、呼んできて一緒にに住みさえすれば、面倒な仕事をする必要はなくなって楽しい、楽な日々を送れるのに、と言いました。
年よりのフクロウは、
「オウウ!ホウーホウーホウ! ホウ、ホウ、フウウウウ!」
と頷きました。そして、
「向こうの方に池があるでしょう。知っていますか? きれいな月夜の晩に、その池の北がわに行きなさい。そして、池の周りをを3回まわってからこう言うのです・・・・。『私をひねって、私をまわしてエルフ(小人)に会わせろ、 お池の水見りゃ、見えたぞ見えた・・・・が見えた』とね。そして、この歌のおしまいの言葉を、唱えてから、水の中を見ると、グッド・フェローが見えてきます。その小人の名が知りたかったら、この歌のおしまいにありますよ。」
と言いました。
それで、トミーは、月がのぼる頃その池のほとりへ行きました。池の周りを、3回まわってから、
「私をひねって、私を回してエルフに会わせろ、お池の水見りゃ、見えたぞ、見えた・・・・が見えた」
と、大声でさけびました。
そして他の中を覗いたのですが、自分の姿が写っているだけで、小人は見えませんでした。
そこで、彼はフクロウのところへ戻ってきて、見えたのは自分の影だけで、家へ呼ぼうと思っていたグッド・フェローは見えなかったと言いました。
すると、フクロウは、
「わたしがお話したあの歌を歌って出てくる名前の人を見ませんでしたか?」
と言うのです。
「ええ、見ませんでした。」
と彼は答えました。
「では、水の中に誰を見ましたか?」
と、フクロウは尋ねます。
「私のかげだけでした。」
と、トミーは言いました。
すると、フクロウが言うには
「歌のおしまいの言葉は、“セルフ(私)”ではありませんの?」
と答えるのです。
そこで、トミーはよく考えてみました。私をひねって、私をまわして、エルフに会わせろ。お池の水見りゃ、見えたぞ見えた、マイセルフ(私)が見えた。・・・・
「だけど、ぼくはグッド・フェローではありません。」 と、トミーが、言いました。
すると、フクロウは
「いいえ、そんなことはありません。あなただって、グッド・フェローになれるのですよ。なろうと思えばね。あなたは、強い子供です。床を拭くこともできるし、火をたきつけたり、火を灯したり、やかんに水を入れて沸かすこともできます。お部屋の掃除も、朝ごはんの支度も、寝床を作ることも、服をたたむこともできます。そういう仕事は、まだみんなが起きてくる前にできます。そうすれば、お父さんやおばあさんは、起きてきて。きっとこれは、妖精の仕業にちがいないと思うでしょう。」
グッド・フェローというのは、家の中に住んでいる小人で、良いことをします。
ある家では、グッド・フェローのかわりに、ボッガードが住みます。これは、小さい悪魔です。みんなが静かにしたい時とか、読んだり書いたりする時だとか、体の具合がよくなかったり、疲れている時とかに、このボッガードたちは、大声でわめいたり、そこいらを駆け回って騒ぎます。
家の中をせっかくきれいにして、片づけておくとやってきて、ひっくり返したり、家具や食器を壊して、そのままに放っておくものですから、また掃除をしなければならなくなるのです。彼らは、自分の体をきたなく汚し、怠けて、親たちの手伝いなんか、ちっともしません。
実にポッガードは、いやな小人で、グッド・フェローとは大ちがいです。
けれども、グッド・フェローは、本当は妖精ではなくて、あたりまえの少年や少女なのです。家の中で暮らして、自分をグッド・フェロー(良い子)にしているのです。それは、朝早く起きて、良い行ないをすることによってです。ボッガードみたいに朝寝なんかしません。
グッド・フェローは、お礼を言ってもらうためや、ご褒美をもらうために働くのではありません。それが、お父さんやお母さんへの、また家族への「つとめ」だからするのであります。時によっては疲れたため、または遊びたいために、辛いこともありますが、彼らは「つとめ(デユーティ)」だということを思い出し、つとめは何ものよりも先にしなければならないことを、忘れないからであります。
ですから、この話の中のトミーとジョニーは、年とったフクロウに、教えられてからは、朝早くから起きるようになりました。
彼らは、部屋を掃除して、火をつける。朝ごはんを作ってから、そうっと寝床に戻ります。ですから、お父さんとおばあさんが、これから仕事をしようと起きてきて、もうすっかりできているのを見てびっくりしました。これはきっと妖精たちがやってきたに違いないと思うのでした。
こんなことが次の日も、またその次の日も続きました。そうなると、子供たちは面白くてたまりません。くだらない遊びにふけるよりも仕事をする方が、ずっと愉快になったのです。いったい誰がグッド・フェローになったのだろうか、それが解るかるまでにはずいぶん長いことかかりました。
これと同じように、カブは誰でも自分の家のグッド・フェローになることができるのです。それは毎日、お父さんお母さんに対して良いことをすることです。しかも、大騒ぎしてするのではなく、黙ってします。
カブは、決してボッガードにはなりません。
これは、家の中でだけ良いことをするのでなく、家の外でも、どこかへ行ったときでもします。学校では友だちや校長先生に良いことをします。デンにおいては、仲間のカブたちや隊長に、また道でもバスの中でも村の中でも、そこにいる人々によいことをいたします。
誰に対しても良いことをするチャンスを見つけたならば、どこであろうと良いことをします。何故良いことをするのか? それは、自分の「つとめ」だからするのです。お礼をあてにしてはなりません。
以上 ウルフカブハンドブック転載。
誰でも、グッド・フェローになれます。いたずら好きのスカウト達!
良いいたずら、皆が喜ぶいたずらをして、お父さん・お母さんをビックリさせて上げて下さいね。
写真は、1924年当時、ボーイスカウトアメリカ連盟のオフィシャル雑誌「ボーイズライフ」の12月号の表紙です。海賊の手下が船長に贈り物をしてる様子です。絵の中にちゃんとメリークリスマスって書いてありますよ。探してみて下さいね。