知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「チェルノブイリ 再生の歴史」

2012年01月01日 19時42分12秒 | 原発
 Eテレで「日本賞」受賞作品として紹介・放映されました。

~番組紹介文~
 教育コンテンツの国際コンクール「日本賞」の受賞作品を紹介する。チェルノブイリの原発事故から25年、周囲の生態系への影響を検証するフランスのドキュメンタリー番組。
 教育コンテンツの国際コンクール「日本賞」の受賞作品を3夜連続でノーカット放送する。2夜目は、生涯教育カテゴリーで最優秀作品に選ばれた「チェルノブイリ 再生の歴史」(カメラ ルシーダ プロダクション/フランス)。原発事故から25年。チェルノブイリ周辺は、悲劇の結果ではあるものの、予期せず手に入れた重要な野外実験場となっている。現地で調査を行う専門家の長年の研究結果をもとに、放射能汚染の脅威を描く。


 以前、チェルノブイリの特集番組で「現在のチェルノブイリは野生動物の天国となっている」というコメントがあり、ずっと気になっていました。この番組は、その現象を多角的に捉えた内容です。

放射能汚染の影響
 まず、チェルノブイリ原発事故による放射能汚染の影響。
 事後直後の周辺は、放射能の直接の毒性により動物は死に絶え、植物も枯れました。
 しかしその後、徐々に動物が増え、植物も勢いを取り戻してきたのでした。
 放射能汚染は続いているのになぜ?
 現在も半径30km以内は立ち入り禁止地区のままです。

 研究者達は、植物・動物の種類により放射能への抵抗性の違いを証明しました。
 例えば、マツは枯れてしまったが、シラカバは生き残った。
 この違いを遺伝子DNAの太さの違いで説明していました。
 マツのDNAは太いので、放射能により傷つきやすい一方で、カバのDNAは細くて傷つきにくいということ。
 ネズミは傷ついたDNAを修復する能力が高いが、ツバメは低い。これは渡り鳥という習性を持つツバメはDNA修復に重要な抗酸化物質を長距離飛行の際に使い果たしてしまうから、と説明していました。
 ネズミは立ち入り禁止区域外から複数の種が入りこみ増えている一方で、鳥類は入ってきても死んでしまうので総数は減っている。

 動物の種により、放射能への抵抗性が異なるのですね。
 ヒトはどうなんでしょう?

化学物質汚染からの解放
 次に、本来の自然の再生という視点。
 チェルノブイリ周辺の自然は、人間が住むことにより化学物質汚染を被ってきました。材木を作るための植林とそれに伴う殺虫剤、農作物を作るための農薬散布。
 そして原発事故後は人間がいなくなるとともに、化学物質汚染からも解放されたのです。
 すると、処理されない朽ち木に虫が住み、それを食べる鳥や哺乳動物が増えて昔の食物連鎖が復活し、多様性が育まれるに至りました。
 つまり、人間の手が入らない、原初の豊かな自然に戻ってきたわけです。

 人間って、自然にとってはストレス以外の何者でもないのですね。
 いや、自然と共生する「里山」システムは良かったはず。農薬(化学物質)を使うようになってからは「敵」に変化してしまいました。
 皮肉にも、現在のチェルノブイリは放射能毒性の研究者や食物連鎖の研究者には貴重な宝の山になっていると番組は締めくくりました。
コメント
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