知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「彫刻家・籔内佐斗司流 仏像拝観手引」 by NHK

2012年01月22日 17時44分02秒 | 寺・仏教
 仏像にはあまり興味はないのですが、いつの間にか関連本が手元にたまってしまいました(苦笑)。
 でも読んでも「フ~ン」で終わってしまい、記憶に残りません。そんな折にNHKでこの番組が始まりました。映像で見れば少しはインパクトが違うかな、と期待して視聴しました。

番組紹介文
 空前の仏像ブームです。京都・奈良では今日も、仏像ガールたちが古仏を求めて巡り歩いています。人はなぜ、仏像に魅せられるのでしょうか?
 今回、私たちを仏像のふしぎな世界へ誘ってくれるのは、仏像修復の達人・籔内佐斗司さん。「寄せ木造り」「乾漆造り」などの複雑な古典技法を実演をまじえながらわかりやすく解説します。


第1回 ほとけさまの長い長い旅路
第2回 籔内流 仏像拝観の基本
第3回 仏像の原点 大仏さまめぐり
第4回 漆でできたほとけさま
第5回 一木造りのほとけさま
第6回 寄木造りのほとけさま
第7回 運慶・快慶 慶派仏師の仏像ルネッサンス
第8回 岡倉天心を知っていますか?
第9回 若者が受け継ぐほとけの遺伝子


 よく話題になるけどなかなか覚えられない「印相」や「仏像の種類」の話は「フ~ン」と聞き流しました。仏様が「如来・菩薩・明王・天」とビラミッド型に格付けされていることはたけしの正月番組と同じ説明でしたね。
 それより、仏像の歴史が面白かった・・・材料や様式の変遷など縦のラインに沿った解説に引き込まれました。

 意外な驚きだったのが、藪内先生は東京芸術大学に「仏像修復」の講座を持っているのですね。20前後の若手が仏像相手に悪戦苦闘している姿が妙に新鮮でした。

 素材に関して。
 飛鳥時代の木材(樟:クスノキ)、奈良時代の銅と漆、そして奈良時代後期にまた木材(榧:カヤ)となり、「一木造り」や「寄せ木造り」へと発達していったのでした。
 法隆寺の百済観音像が代表作であるクスノキは香りはよいけど目が荒く細かい加工ができません。鑑真が中国からもたらしたカヤは目が細かくて加工しやすい材質。クスノキ時代は衣紋(着衣のドレープ)が直線的で荒かったものが、カヤの時代には流麗なラインへ発展する様が素人の私にもよくわかりました。

 一時期のみ流行した漆製の仏像の代表は興福寺の阿修羅像。乾漆法と呼び麻布と共に何回も重ね塗りする手法なので、何となくふっくらと仕上がるのが特徴です。
 この興福寺の阿修羅像は仏像人気ランキングの常連としても有名です。ふつうはいかつい姿をしている阿修羅像が、優しい少年のような表情をしているのは例外的だそうです。作成を命じた光明皇后が、無くしたわが子を偲んだためそのような造形になったとも伝えられています。



 はじまりは、布教の手段として、あるいは崇拝の対象・偶像として作成された仏像が、いつしかその時代の文化を纏い、仏師の切磋琢磨により芸術の域まで達していった歴史・・・ちょっと仏像を見る目が変わりそう。

 行ってみたい、見てみたいと思った仏像が二つ。
 一つは奈良の飛鳥寺の「飛鳥大仏」。日本最古の寺である飛鳥寺にこれまた日本最古の大仏が鎮座しているのです。大仏と云っても3m弱ですが。1400年の年月を感じてみたいですね。



 二つ目は東京上野の「上野大仏」。上野公園の中の盛山にあります。江戸時代に建立されたものの、関東大震災や戦災により崩落して顔だけが残っているのです。「もう落ちるものはない」ことから受験合格祈願の御利益があるそうです。



※ 解説の籔内佐斗司さんは奈良のキャラクター「せんとくん」の考案者です。専門家なのでしょうが、あの美的センスはちょっと・・・。

コメント
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