知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

日本人とネコ

2021年03月04日 15時01分48秒 | 原発
日本人がどのように動物と関わってきたのか・・・ちょっと興味があります。
今回はネコを取りあげます。

日本にネコが中国から輸入されたのは奈良時代、というのが通説です。
※ 諸説あります(近年、2000年以上前の遺跡から猫の骨が出てきたという報告も)。

目的は「仏教の経典をネズミから守るため」だったそうです。
そのため、飼われていたのはお寺中心でした。

平安時代になると、「ペット」という新たな役割が発生、
貴族の間でネコをペットとして飼うことがブームになりました。

清少納言の『枕草子』にもネコをかわいがる一条天皇のこんな描写があります;
「天皇のおそばに飼われている御猫は
位を授けられて“命婦のおとど”と名付けられている」

紫式部の『源氏物語』にもネコが登場します。
そのネコは首輪を付けられ、ヒモが結ばれていました。
当時はまだ数が少なく、貴重な動物だった故。



平安時代のネコは自由ではなかったのですね。

そんなネコを窮屈な生活から解放したのが徳川家康。
彼は徳川幕府を開く際に、
「ネコをつなぐべからず」
というお触れを出しました。

これには理由がありました。
戦国時代が終わり、平和な江戸時代が始まると、
江戸は急速な都市化により、ネズミの食害が社会問題化したのです。

家康はネズミ対策として紐でつながれていたネコを解き放ったのでした。
自由を得たネコは、本来のネズミ退治という役割を担うと共に、
爆発的に繁殖しました。

数が増えたため、庶民の間でもネコを飼う習慣が広まりました。

京丹後市にある金刀比羅神社境内の摂社「猿田彦神社」「木島神社」には眷属のところに狛犬ならぬ狛猫がいます。
京丹後市は昔からのちりめんの産地で、ちりめんの原料は生糸、そして生糸はネズミの大好物。
生糸を齧られると売り物になりません。
それを防止するためにネコを飼ってネズミを退治してもらい、
ネコを大事にするようになったそうな。

江戸時代にネコをこよなく愛し、仕事にも役立てた人物がいます。
それは浮世絵師の歌川国芳。
ネコを擬人化した浮世絵を数多く発表し、
江戸後期にネコブームを巻き起こしました。
代表作は「流行猫の曲手まり」


国芳がネコの絵を描き始めたのはキャリアの後半でした。
庶民の文化を描く浮世絵は大人気でしたが、
水野忠邦による倹約令「天保の改革」により娯楽や文化的なものが取り締まりを受け、
歌舞伎役者の他に遊女も扱った浮世絵は「風紀を乱す」と禁止されてしまいました。

そこで国芳はネコを擬人化して幕府を風刺する絵を描き始めたのでした。
代表作は「猫の百面相」。



当時の人気歌舞伎俳優の顔を模したネコたちですが、
庶民はひと目見てそのネコが役者の誰だかわかったそうです。
このような国芳の猫絵は、政治に不満を持つ庶民に人気を博し、
停滞していた浮世絵界を救う大ヒットとなりました。

直球勝負ではなく、変化球勝負をしたのですねえ。
猫を使った風刺というと、明治時代に有名な文学作品があります。
『吾輩は猫である』(夏目漱石著)は国芳の猫絵の延長線上にあるのかもしれないですね。

昭和時代はペットと云えばイヌがメインだったでしょうか。
平成、令和ときて、ネコが人気で上回った感があります。
世間では「イヌ派」「ネコ派」と分かれるようですが、私はどちらかなあ・・・。

ここからは私のネコに関する経験談・思い出です。

私はペットを飼ったことがありません。
母親が大の動物嫌いだったので。

幼少期によく捨て猫とか捨て犬を拾ってきた私。
そのたびに母親に叱られて、拾ってきた場所に戻すことを繰り返しました。

少年期には“猫屋敷”化している親戚の家がありました。
野良猫を餌付けしている内に居着いてしまい、
10匹弱のネコが出入りしていました。
個性があって、中には人なつこいネコもいました。

そうそう、大学生時代に居候していた家庭教師先にもネコがいました。
ブルーペルシャという、あまり見かけない種類。
かわいいと云うより優雅でゴージャスな雰囲気をまとったネコでした。
雪の降る寒い夜、換気のために窓を少し開けておくと、
いつの間にか忍び込んで私の蒲団に潜り込んできたので湯たんぽ代わりになりました。
写真は残っていないなあ。
ネットで見かけた写真ではこれが雰囲気が似ているかな;


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