巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

「奇跡の牛乳ーカリスマ酪農家、三友盛行」

2009-10-10 19:29:58 | 農業
NHKの「プロフェッショナル・仕事の流儀」という番組で自然酪農を続ける三友さんが取り上げられました。
40年前に北海道に開拓民として入植したときと同じ自然に寄り添う酪農方法をかたくなに守り続けるカリスマ酪農家。

一般の酪農は時代と共に大規模化し「質より量」を求めて発展してきました。牛のエサは牧草ではなく、いつの間にかアメリカから輸入したトウモロコシを中心とした穀物に取って代わりました。牛乳の量は多くなるけど、牛のからだが受け付けず、やり過ぎると胃が熱を持って穴が開くと他の番組で聞いたことがあります。

一方、三友さんの牛は牧場の草をムシャムシャと食べています。カモガヤとオオアワガエリが映っていました。
一頭の牛に1ヘクタールの牧場が必要とのこと。
朝の乳搾りを終えた牛たちが小走りに牧草を食べに行く姿が印象的でした(なんだかうれしそう)。

三友さんの牧場では自然が循環しています。
牛の糞が虫や微生物の働きで分解されて土に還り、その土が草を育み、その草を牛が食べることで牛乳が生まれる・・・彼らの活躍のおこぼれを頂戴して人間は生きていくのさ、が彼の信条です。
自然相手だからうまくいかないこともある、天を呪ったことも一度や二度ではない、その時はそれを受けとめて歯を食いしばってまた頑張るだけ。
「質」を高める姿勢は酪農規模をむしろ縮小することになり、時代に逆行してきましたが、近年の世界的な穀物価格高騰により牛のエサも高騰し、彼の自然酪農法がスポットライトを浴びたのでした。

人工的なエサではなく牧草を、機械で乾燥した乾草ではなく天日干しした乾草を。
牛と向き合い、草と向き合い、自然と向き合い、自然の循環の結果生み出される恩恵こそが農産物であり、それを大切にすることが農民の矜持である、と。

リンゴ農家の木村さんと共通する「農民のプライド」を感じました。

「りんごは愛で育てるー農家 木村秋則の仕事ー」

2009-08-05 22:22:05 | 農業
NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」シリーズの一つです。
DVDを購入して見ました。
先日本屋さんに行ったときに売り上げランキングをふと見たら、この木村さんの本がなんとベストセラー!
驚きました。

木村さんは農薬も肥料も使わないでおいしいリンゴを作る人です。
奇跡だと言われてます。
「リンゴ農家」ではなく「りんごお助け人」と呼んで欲しいと言ってます。
リンゴが喜ぶ環境を提供してじっと成長を見守るのみ。

きっかけは、夫婦の「農薬アレルギー」。
「無農薬農業」を本で知り、方向転換したけれど全くうまくいかない。
農薬・肥料を使わないと雑草が茂り放題、害虫が繁殖し放題。
リンゴの木は衰弱して瀕死状態。

起死回生のヒントは「土」にありました。
無農薬農業が失敗続きで途方に暮れ、死に場所を求めて岩木山を一人放浪しているときに、自然の中で実を結ぶ樹に目が止まりました。
「農薬を使わないのになぜ実がなるんだろう?」
夢中で木の根元の土を掘りました。
そこには柔らかい、命を育む土がありました。

リンゴ畑に農作業用の重機を入れると・・・土が硬くなり雑草が死ぬ、昆虫が死ぬ、生態系が死ぬ。
「土」を大切にするため、消毒もすべて手作業に替えました。
すると雑草が根を張り、土が軟らかくなり、生態系が復活して自然のバランスの中でリンゴの木が息を吹き返したのでした。
そして害虫がいれば、害虫を食べる益虫もいることに気づきました。
木村さんの仕事は「害虫と益虫のバランス」を注意深く見守り、崩れそうになると補正することに変わりました。
そこには「自然の中にムダなものはない」と慈しみの目で見守る木村さんがいます。

これって、そのまま「子育て」に通じますね。
子どもに適切な環境を与えて見守るのみ。
「何かあったら守ってやるから自由に命を謳歌しなさい」というスタンス。
「これをやっちゃダメ!」「勉強しなさい!」という子どもをコントロールしようとする言葉は、さしずめ「農薬」「化学肥料」に例えられるでしょうか。
過剰な干渉は生命力をつぶしかねません。

物事の真理って、共通しているんですね。

私は学生時代を青森県弘前市で過ごしました。
木村さんのリンゴ園がある場所です。
「津軽富士」と呼ばれる岩木山を毎日眺めて過ごしました。

リンゴは学生には高価な果物で自分で買った記憶がありません。
ひとつ100円もしますから。
でも、どこからともなく手に入りました。
それが家庭教師のバイト先であったり、友達の彼女のリンゴ農家からキズ物が流れてきたり。

リンゴ収穫のバイトをしたこともあります。
秋の津軽平野のおいしい空気を吸いながら、リンゴをもいで過ごす一日。
貴重な体験でした。
失敗してヘタが取れたモノは商品にならないので、服でゴシゴシ磨いて食べてしまいます。
程よい酸味と甘い蜜の詰まった「王林」はおいしかったなあ。

あれから25年が経ちました。
友人はリンゴ農家の彼女と結婚しました。
10年ほど前から彼女宅のリンゴをお歳暮に使うようになり、周囲に喜ばれています。
自宅にも購入し、届いた甘酸っぱい王林をかじると・・・あの学生時代の日々が蘇るのです。
年に一度の、私の密やかな楽しみ。