巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

クマ出没注意!

2024-07-12 08:14:41 | 
昨今、巷を賑わせているクマ出没問題。
巨樹・神社巡りを趣味とする私にとって、
他人事ではありません。
近年、山里の神社に参拝すると、
「クマ出没注意!」
という看板をよく目にするようになりました。

というタイミングで、
とうとうクマさんと遭遇してしまいました。

場所は新潟県小地谷市の山里の神社。
人家が近くまであるので、
全く予想していませんでした。

石段を登り切って境内に入ると、
向かって左側の山の斜面から、
「ガサッ、ガサッ」
と音が聞こえました。
「鳥の飛び立つ音かな?」
くらいの気持ちで振り返ると、
林の中を黒い塊が、
「ガサッ、ガサッ、ガサッ」
と移動しています。
「クマだ!」
と直感し、まだ距離が数十メートルあったので、
急いで撤退しました。
息を切らして人家のあるところまでたどり着き、
事なきを得ました。

巨樹巡りを趣味とする知り合いたちに、
「クマ対策、どうしてますか?」
と聞いてみました。
10人中、クマ遭遇経験のある人は1人のみ。
この方は、山の奥深くに立ち入り、
伝説の巨樹を探り当てる名人です。
10mの距離でナイフを手に取り、
クマと見つめ合った経験を教えてくれました。

写真集も出版している、
巨樹巡りというより“冒険家”の方は、
「別に何も用意していない」
という意外なコメント。
「山に入るときは五感を研ぎ澄まして、
 熊の気配を感じたらそこで山を下りる」
とのこと。
「北海道の山はクマの気配がプンプンして、
 山に入れなかった」
と、クマに遭遇しないことをメインに考えていました。

皆さんのクマ対策をまとめると以下の通り;

・クマよけ鈴
・笛(あるいはラッパ)
・ラジオ
・クマよけスプレー(成分はカプサイシン)

…音を発して人の気配をクマに伝え、
「人がいるよ~」
とクマを遠ざける手法ですね。
でも人に慣れてしまったクマには無効かと…。

そんなタイミングで目に留まった記事を紹介します。
林業が衰退し、
人と山の獣が住む地域の境界が不明瞭になった現在、
どう共存していくのかポリシーが必要ですね。


■ クマの出没対策に、二つのマニュアル紹介
田中淳夫(森林ジャーナリスト)
2024/5/27:Yahoo!ニュース)より一部抜粋(下線は私が引きました);

・・・世間の反応は真っ二つに分かれている印象がある。

 まず、もっと駆除に力入れろという強硬意見。もう一つはクマの駆除に無条件に反対し保護を訴える声である。

 だが,どちらも無理がある。前者は、やみくもな銃と罠に頼った駆除を主張しがちだが、人材、手間、費用などを含めて物理的に難しい。後者は、自分は安全圏に身を置きながら、クマなど野生動物を神聖視しており、獣害に遇われる地域の苦悩を無視している。

 もっと冷静になり、増えすぎた生息数を抑える対策と同時に、クマの人里への出没を減らす方法を考え、もし出くわした際はどうすべきかという点を具体的に身につけるべきではないか。

 同時に、クマなどの野生動物への対応知識と技術を身につけた人材の育成も必要だろう。

 実際の対応はいろいろ模索されているようだが、対策マニュアルを二つ紹介しておく。まずは環境省の出しているもの。

クマ類の出没対応マニュアル -改定版-

 やはり事前に出没に備えること、そしてクマが人里に出てこないようにするのが基本だ。そのためには、農山村の最前線における対策が必要となる。

 具体的には、餌となるものに近づけないこと。そして可能な限り除くこと。それは防護柵の設置のほか、果樹や農作物とその放棄残滓、生ゴミ、ペットフードの管理まで及ぶ。そのうえで都市部まで出てくる理由と対策を考えなくてはならない。

 次にクマが出没した際に取るべき行動。目撃時の連絡先や人員の配置、被害発生時の対応……もし鉢合わせした場合のことも取り上げている。彼らを刺激しない(人を襲う気にさせない)方策も知っておきたい。クマは必ず襲ってくるわけではなく、人を避けることも多い。いや、通常はそちらが普通だ。何が人に怒りを向けて襲うのかを知ることで、危険を抑えることができる

 遭遇した際に、いきなり走って逃げるのはもっとも危険であることなども記されている。そして最悪襲われた際の防御方法も、一応触れている。そのように行動できるかは疑問だが。

 日本のクマに則した内容だが、どちらかというと個人の対応策というよりは、自治体の職員向きかもしれない。行政としてクマへのに向き合い方に重きを置いているように感じた。

 それに対して、より実践的なものがあった。ただし海外版。

非致死的なクマ管理技術の手引き』である。

 カナダの市民団体製作のマニュアルだが、それを日本の<Bear Smart Japan>が翻訳したものである。イラストや写真も豊富。

 タイトルどおり、クマを殺さず人間との共存をめざしているが、何も駆除をすべて否定しているわけではなく、銃器の使用も容認している。ただ、できる限りクマを人間社会に近づけず、追い払うという理念で方策を練ったものだ。

 クマを銃で射殺する方法や捕獲方法、別方向に誘導する方法なども触れているが、騒音による抑止などもある。とくにベアドッグ(訓練したイヌによるクマの追い払い)は、今の日本ではほとんど行われていないが、可能性を感じる。

 北米を舞台にしているから、対象とするのはグリズリーとクロクマだ。ただグリズリーは、ヒグマとほぼ同種。クロクマはツキノワグマに近い種類で、体格は多少大きいが、生息環境も森林などで生態はツキノワグマと近そうだ。それぞれの対策が、日本の2種類のクマにも応用できるだろう。

 丸ごと使うのではなく、日本では取れない手段も紹介されているから、よく考えて選択肢に加えると参考になるかと思う。

・・・

 両者を読んで改めて思うのは、クマ出没対策とは、まずクマの生態を知り、人の行動はそれに合わせていくことの重要性だ。画一的な方法ではないのだ。

 どうも日本の場合は、冒頭の「駆除至上主義」と「保護至上主義」の両方とも、肝心のクマに関する知識をなおざりにしているように感じてしまう。さらに言えば、出没する地元の人々以外は、みな他人事のように思われる。

「駆除すればいいんだ」と言っても自身がやる気は毛頭ないだろうし、「保護しろ」と叫ぶものの、被害者には目を向けていない。それどころかクマの餌を心配してドングリを撒くような発想をしている。逆効果も甚だしい。

 日本でも野生動物の研究は結構行われてきて、それなりの知識の蓄積はある。完全でなくても、それらを習得することから始めるべきだろう。



マザー・ツリー

2024-07-05 10:37:40 | 
「マザー・ツリー」という本、
しばらく前に購入しましたが、インテリアと化しています。

「アバター」というSF映画、
有名ですがなかなか見る機会がなく、
先日ようやく自宅で見ました(Amazon Prime Video)。
その中で巨樹が出てきて、ワクワクしながら観ました。

その後、下記の記事が目に留まり、
「マザーツリー」が「アバター」のモチーフになっていることを知りました。
巨樹は森の生態系の中心に君臨しており、
「菌」ネットワークが重要な役割を担っている、
はてこの内容、TVドキュメンタリーで見たことがあるような・・・。


■ 「マザーツリー」は森林や林業の常識を一変させる
〜『マザーツリー』スザンヌ・シマード氏に聞く
岡田 広行 :コラムニスト
2024/06/30:東洋経済オンライン)より一部抜粋;

[著者]Suzanne Simard(スザンヌ・シマード)/カナダ・ブリティッシュコロンビア大学教授。カナダの森林生態学者。森林伐採に代々従事してきた家庭で育つ。大学卒業後、森林局の造林研究員として勤務した後、ブリティッシュコロンビア大学教授に就任。米『タイム』誌が2024年の「世界で最も影響力のある100人」に選出。

 世界的ベストセラー『マザーツリー』。
 カナダ人の著者が本書執筆以前から提示してきた自然についての考えは、2009年公開の映画『アバター』のモチーフにもなった。来日した著者に、森林生態系の危機的状況と、政策やビジネスの転換に必要な科学的知のあり方について聞いた。・・・

──本書は森林や林業に関する常識を一変させる大作です。

 森の木々が、地中の根や土壌の菌根ネットワークを通じて助け合いの関係にあることが、私たちの研究を通じてわかってきました。水分や、窒素、リンなどの栄養素を通じた共存、相互扶助の中心にあるのが、マザーツリーと呼ばれる樹齢の長い大木です。マザーツリーの根にはびっしりと菌類が広がっており、そうした菌類が栄養素を運ぶ役割を担い、木々を健康に保っています。

──これまでの林業では、単一の樹種を整然と植林するほうが生産性が高いとされてきました。本書はそうした常識も覆しました。

 広葉樹のアメリカシラカバと針葉樹のダグラスファーを一緒に育てたほうが、後者だけを育てた場合と比べてよく育つことを、研究を通じて解明しました。
 いろいろな樹種の交じった森が、単一樹種の人工林に転換された後、不健全な状態になっているのを見たことがきっかけでした。そこでいろいろな樹種を混栽したら生存率や成長率がどうなるかを確かめてみました。その結果、多様な樹種のある森のほうが、生産性も高いことが数字を伴ってわかってきました。
 1990年代ごろまでは、このような考え方は異端であり、モノカルチャー的な林業が最も生産性が高いという考えが根付いていました。しかし近年、多様さの重要性がようやく認識されるようになってきました。


▶ 土は生命の根源である


──本書で強調されているのが、森林における土壌の役割です。

 豊かな森の土壌を掘ってみるとわかりますが、そこは生命でみなぎっています。最近でこそ、分子生物学などの研究の発達によって土壌の果たす役割や重要性が再認識されるようになってきました。しかしもともと、土が生命の根源であることは太古の昔から受け継がれてきた英知でした。それを私たちは忘れてしまっていたのです。

──カナダでは原生林が大型の重機によって皆伐され、急速に失われています。この皆伐がいかに環境に悪影響を与えるかについても詳しく書かれています。

 気候変動、地球温暖化という観点でも、皆伐は炭素サイクルに壊滅的な打撃を与えます。樹木が伐採されて二酸化炭素(CO2)の吸収ができなくなるだけでなく、土壌に蓄えられていた炭素も急速に放出されていきます。植林をしても効果は乏しく、土壌の復元には数千年という時間を要します。

──本書では先住民が果たした役割にも触れています。森を豊かにするために、捕った鮭をマザーツリーの下に置きに行くという慣習があったとは驚きました。

 先住民の人たちは森のことを深く知っています。鮭を置きに行くのは、栄養素を森に戻すためで、物質的な循環にうまくつなげています。10年ほど前に先住民で研究者のテレサ・ライアン氏と知り合い、そうした慣習があることを教えてもらいました。・・・

▶ 多様性重視へ林業の転換を

──本書が世に出たことによるインパクトは。

 カナダ・ブリティッシュコロンビア州の首相や森林相とも面会し、意見交換をしました。同州では木材生産中心だった森林管理のあり方を、より多様な価値を中心に据えたものに転換していく考え方に変わりつつあります。その動きは十分ではありませんが、本書が影響を及ぼしたことは確かです。

──今回の来日では、日本の市民に向けた講演も行いました。

 カナダの原生林の皆伐が、日本のバイオマス発電と深く関わっていることを知ってもらいたかったからです。
 伐採して得られた木材から、木質ペレットと呼ばれるバイオマス発電用の燃料が作られ、大型船で日本まで運ばれ、発電所の燃料となっています。そしてこれが、CO2排出量ゼロのカーボンニュートラルと見なされています。こうしたやり方は十分な検討のうえで制度化されたものではなく、持続可能性もありません。

──今までのような、皆伐による破壊的な林業を改め、本来あるべき持続的な林業に戻すにはどうすべきでしょうか。

 水や空気、生物多様性や文化などの外部要因が、経済的な価値評価から除外されていることがいちばんの問題です。言い換えると、今の経済では、材木やペレットとして売れるかどうかという非常に狭い意味での価値しか評価されていません。外部要因として無視されている価値が製品の価格にきちんと反映されるようになれば、システムの大変革につながります。
 そうなれば、本当の意味での経済合理性が回復し、人や環境に優しい経済につながっていきます。資源の無駄遣いも是正されるでしょう。私は森の本来の価値が評価されることを望んでいます。

「日本の凄い神木」(本田不二雄著, 2022年)

2023-03-17 07:46:38 | 
という本が昨年発行されました。

「地球の歩き方」シリーズの一冊です。
こんな風に近年、巨樹の本が出版されたり、
テレビで巨樹特集番組が組まれたり、
巨樹ファンとしてはうれしいことです。

ひとつには、
SNS(Instagram、FB、Twitter)の影響があると思います。
実数としては少ない巨樹ファンがこぞって投稿し、
知り合いになれるのです。

日本の凄い神木」(Gakken)に掲載された写真にも、
私がインスタで知り合いになった巨樹マニアの作品が入っていますし。

著者の本田氏を取材した記事が目に留まりました。
神木探偵」の著者でもあります。

気になる「木」 命感じて
 人々が神聖視 災禍生き抜いた巨樹を巡る
 ガイド本「地球の歩き方」シリーズで、全都道府県の神木や巨樹を秘話や歴史とともに紹介する「日本の凄(すご)い神木」(Gakken)が昨秋、出版された。東京23区内にも震災や戦災をくぐり抜けた巨樹はあちこちにある。この本の著者で、寺社や仏像のミステリーを探究する神仏探偵の本田不二雄さん(59)に案内され、本に収録された木を巡った。
 都営三田線白金高輪駅から徒歩五分。かつて熊本藩細川家の下屋敷があった港区高輪地区総合支所裏手の高台に「旧細川邸のシイ」(同区高輪一)はそびえ立つ。「いい。幹囲が八メートル以上あるのは相当大きいね」。本田さんは見上げながら目を細めた。
 主幹は切断されているものの、樹高は十メートル以上。一部の根が土から浮き出て、ところどころ表面の木皮も剥がれている。本田さんは「それでも周囲に若木を張り巡らせる。知られざる都心の主だ」と力を込める。意識してみると、度重なる震災、火災を乗り越えた命の力強さを、確かに感じる。だが、近隣住民らしき人は見向きもせずに、通り過ぎていった。
 本田さんによると、東京の神社や寺の境内で見かけるのはイチョウの巨木。他の木に比べ、葉や幹に水分が多く含まれるため燃えにくく、防火のために植えられたという。
 なかでも善福寺(港区元麻布一)のイチョウは圧巻。寺のホームページによると樹齢は推定七百五十年以上、都内最古の古木で、国の天然記念物の指定を受けている。根がせり上がり、乳と呼ばれる大きな気根が垂れている。
 寺によると、訪れた親鸞が立ち寄った記念に、持っていたつえを地に差したところ、枝葉が繁茂したと伝わる。一九四五年の東京大空襲で本堂が全焼した際、イチョウにもかなりの被害があったが見事に再生した。秋には見事な黄金色に輝き、見物に訪れる人も少なくない。
 東急大井町線等々力駅から徒歩十五分。閑静な住宅街の中にある善養寺(世田谷区野毛二)には、優美な大カヤがたたずんでいた。環境省のデータベースによると、樹高約二十メートル、幹回り五・四メートル。地面近くに、緑の葉をつけた枝がしだれ、幹がせりあがる。大きなうろの中には石造りの五輪の塔が奉安されていた。
 カヤには伝説がある。寺の長老真保龍敞(しんぽりゅうしょう)さん(89)の話では、寺近くの野毛大塚古墳に眠る姫が、多摩川べりのサワガニの親子を助けた際、お礼にもらったカヤの実が成長したという。
 樹齢は相当古く、高齢の大樹を枯らすまいと、年に二、三回、土を掘って栄養剤を与えている。「歴史を見てきたカヤは寺の象徴。これからも保護していかなくては」と話した。
 この本では、人々から神聖視されている全国の巨樹、神木約二百五十柱を紹介。東京二十三区内にある巨樹として、ほかに「新田神社の御神木」(大田区矢口一)も収録されている。この四柱はいずれも、災害や空襲を乗り越え、人々が何らかの形でかかわり、生き延びてきた。
 だからこそ、本田さんは言う。「身近なところに巨樹はあるし、どの木も見れば、圧倒的な命の力強さを感じられるはず。本を通じ、自分の町の、自分だけのご神木を見つけてもらえたら」
 文・山下葉月/写真・由木直子、中西祥子

なぜ人類が悠久を生きる巨樹に充足感や幸福感などを感じるのか?

2023-03-17 07:02:40 | 
という研究がなされたとの情報が耳に入りました。

「悠久巨樹と人とのつながり 環境研研究員がDB用いて世界初解明」

ポイントと感じた個所を抜粋します。

・環境研生物多様性センターが提供する「巨樹・巨木林データベース」に集積された日本列島全域の巨樹約3.9万本の大規模データを解析し、人と巨樹のつながりと駆動要因を解明。人が太さや推定樹齢といった巨樹の特性、さらにその背後に存在する気候・地理要因により駆動されている可能性を世界で初めて明らかにした。 

<仮説>
・太く、樹齢が長い巨樹ほど、信仰の対象となりやすく、固有名称を持ちやすくなる(巨樹の特性が精神的な生態系サービスに影響する)。
・気温が低く、降水量が多い地域の巨樹ほど、太く、樹齢は長くなる(マクロ生態学的プロセスが巨樹の性質に影響を与える)。
・分布する緯度や標高、年平均気温や降水量の違いが、巨樹の信仰の対象となりやすさと固有名称の持ちやすさに影響を与える(マクロ生態学的プロセスが精神的な生態系サービスに影響を与える)。 

<分析結果>
・幹周囲長は推定樹齢と年間降水量から正の影響、緯度・標高と年平均気温に負の影響を受け、また、推定樹齢は年平均気温から負の影響を受けていた。
・信仰の対象となる確率と固有名称を持つ確率は、いずれも幹周囲長と巨樹の樹齢の両方と正の相関があり、「太く、推定樹齢が長いほど、名前を持ちやすく、信仰の対象となりやすい」ことがわかった。
・信仰の対象となる確率は、緯度と正の相関があり、年平均気温と年降水量と負の相関が確認され、「気温が低く、雨が少なく、より北に分布するほど、信仰されやすい」ことが判明。
・固有名称を持つ確率は、緯度、標高、年平均気温と正の相関、年降水量と負の相関が示されたことから、「気温が暖かく、雨が少なく、標高が高く、より北に分布するほど、名前を持ちやすい」といったことも明らかとなった。  

まあ、巨樹巡りをして居て実感される結果ですね。

防水&広角&軽量カメラを突き詰めて、たどり着いたのは・・・GoPro10

2022-03-06 06:34:38 | 
巨樹巡りを趣味とする私がカメラに求める性能は・・・
□ 広角
□ バリアングル
□ 防水
がベスト3。アラ還の私には、
□ 軽量
も重要です。

大きな木を目の前にしたときの迫力感は、
ふつうのレンズ・画角では捉えきれません。

なので、巨樹撮影のためのカメラ探しは、
広角カメラ探しの旅でもありました。

コンデジでは限界がありますが、
昔のオリンパスの防水コンデジがこの目的に合いました。

■ オリンパス STYLUS TG-870 Tough


広角側で焦点距離が21mm(35mmカメラ換算)とコンデジでは最高レベル、
かつ防水という条件も満たしています。
唯一、液晶モニタがバリアングルではなくチルト式なのが残念。
2016年の発売なので画質はそれなり、
現在は販売終了し、新品は手に入りません。

最近は雨の時は出かけなくなりましたが、
以前まだアクティブだった頃は“雨天決行”でときどき出番がありました。

それ以降は、一眼レフカメラに触手を伸ばしました。

■ ニコン D5100(2011年発売)
■ キャノン 80D(2016年発売)

という入門機・初級者向けカメラから始まり、
寄る年波でカメラを重く感じ始めたため、一時期コンデジ(ネオ一眼?)の

■ キャノン PowerShot SX70 HS

に寄り道したものの画質に満足できず、
ミラーレス一眼&バリアングルの、

■ キャノンEOS Kiss M

にたどり着きました。
これで一件落着と思われたのですが・・・
しかしキャノンは色のりが今ひとつで、
ネットにアップするには加工が必要なため、
発色が鮮やで“撮って出し”が可能な

■ フジ X-S10(2020年発売)

に変更。
フジの“Velvia”画質には満足したものの、
別売りの広角レンズを装着するとちょっと重い(^^;)。

そして唯一の弱点“防水”という課題が残りました。
一眼レフで防水機能を求めると、
どうしても重くなってしまうジレンマがあり、
なかなか私の理想のカメラに出会うことができません。

以上、巨樹用カメラを捜す旅は10年以上続いています。

さて、2022年4月に福島県の桜巡りを計画中です。
日程が決まると、心配なのがやはり天気。
雨天のことも考えて、やはり防水カメラが欲しい・・・

そんなタイミングで、
インスタにアップされていた印象的な巨樹写真が目にとまりました。
発色が鮮やか、かつ広角でダイナミックに巨樹の姿を捉えています。
撮影機種を見ると「gopro9」とあります。

gopro?

初めて聞く機種名。
調べてみると、私の守備範囲外の“アクションカメラ”という分野でした。
スポーツ時に身につけて(ウェラブル)動画を撮ることに特化したカメラで、
「小型・防水・強力な手ぶれ機能」
が特徴です。
かつ、基本的に広角。
GoProの画角(対角)は約170°に広がり、
焦点距離を35mmフイルムカメラに換算すると16mm程度に相当、
とのこと。

んんっ!
これって私がカメラに求めている機能に一致するではありませんか!

「gopro」について調べたところ、
手のひらに収まる小ささのため、さすがにバリアングルモニタはありません。
でも、gopro9 から前面モニタが装着されています。
かつ、スマホとの wifi 連携が標準の使用法なので、
手元のスマホ画面を見てシャッターを切ることも可能のようです。

知れば知るほど欲しくなり、
とうとう2022年3月1日にカトー電機で「gopro10」を購入。



結構値が張るので併売している前モデルの「gopro8」「gopro9」と迷いました。
静止画の画素数が徐々に上がってきているので、最新モデルを選びました。

しかし私はスギ花粉症なので、しばらく外で活動できません。
現在屋内で撮影の練習中です(^^;)。


目撃!にっぽん「空師〜吉野の山に生かされて」

2020-12-07 13:53:45 | 
林業は山の樹木を切る仕事。
第二次世界大戦後に外国材が安く輸入されるようになり、
材木の価格は1/4に、
林業従事者は1/5に減ってしまったといいます。
衰退の一途と言わざるを得ません。

そんな厳しい状況下、
現在も木を切ることを生業にしている人たちがいます。

中でも巨木・大木の伐採を専門とするのが「空師」と呼ばれる職人たちです。
樹高数十mの巨木に登り、
木材としての価値を落とさぬよう計算して効率よく伐採するスキルは、
江戸時代から伝わる伝統術。

そんな彼らを取材したNHKの番組を見つけましたので紹介します。


そびえ立つ木に登り伐採する「空師」。ロープを巧みに操りさまざまな体勢でチェーンソーを扱う職人だ。奈良県吉野地方の空師・中平武さんに密着。山奥に眠る巨木に挑む。 日本屈指の林業の地、奈良吉野で一目置かれる空師・中平武さん43歳。そびえ立つ木に登り伐採する職人だ。技術を極めることで廃れゆく林業を活性化したいと空師を志した中平さん、この秋挑んだのは空師の技を用いなければ切ることのできない山奥の樹齢200年を越える巨大なとちの木。共に伐採に立ち向かったのは背中を追い続けてきた父。予想もしない試練の連続。空師の誇りをかけた挑戦の結末は。知られざる大和の空師の物語。



現代の「空師」はロープを巧みに操り、
チェーンソーを駆使して巨木を伐採します。

そのバリエーションと言っていいのかわかりませんが、
枝打ち師」という職人もいます。

京都の北山杉は真っ直ぐな材木です。
その樹形を整えるために不必要な枝を伐採(枝打ち)する必要があります。

それを担うのが「枝打ち師」。
こちらは命綱たるロープを使いません。
下に降りてまた登ると仕事の効率が悪いので、
木から木へ、樹上を飛び移ります。
木を自ら揺らして隣の木に飛び移る様は、
サーカスレベルの職人芸。

今から30年前、
とあるマンガにこの「枝打ち師」が描かれており、
その時初めて知りました。
その民話の世界のようなストーリーと絵に惹かれましたが、
今となってはマンガの名前も作者も忘却の彼方。
ああ、また読んでみたいなあ。


<番組ディレクターから>
【この番組を企画したきっかけは】
  以前、別の番組で取材をさせていただいたことがきっかけでした。ひとつの木を植えてから、商品として切りだすまでにかかる時間は100年以上。自分の代だけでなく、自分の前の世代、そして後の世代にも思いをはせながら仕事をする、林業ならではの仕事観に感銘を受け、より深く取材したいと思っていました。そんな折に、中平さんからお聞きしたのが、「空師」の仕事の話。地上での伐採でも大迫力なのに、木の上での伐採はいったいどんなものなのか。再びの取材をお願いし、番組の企画に至りました。

 【制作でこだわった点、もしくは、苦労した点】 
 制作で一番大変だったのは、ロケで中平さんたちについていくことです(笑)普段から山で仕事をする彼らはどんな傾斜でもやすやすと歩きますが、我々クルー(特に私)はついていくのに精一杯。筋肉痛と日々戦いながらも、中平さんたちから手厚くフォローいただき、なんとかロケを完遂できました。山奥で初めてのテント泊をしたことは、個人的にも一生忘れられない思い出になりました。 

【取材をする中で印象に残った言葉】 
「俺らは吉野の歴史の中のほんの一部分やから」、その言葉が深く印象に残りました。自分自身、これまでの人生で自分の人生と何かの歴史が紐付いていると感じたことは全くなかったので、木や山を通してその土地の歴史の一部分に自分がいるという感覚をもつ中平さんたちの生き方に非常に心惹かれるものがありました。普段生活していると、自分のことでいっぱいいっぱいになってしまうのですが、もっと大きなものに目を向けたら(それが自分にとって何なのかはまだ分かりませんが)違う世界が見えるのかもしれないと考えさせられました。

“鳥海マタギ”の現在

2019-05-18 06:27:32 | 
 マタギ=クマを狩猟する、というイメージがあります。
 東北地方を題材に、ドラマや映画が作られてきました。
 前項のクマつながりで、“敵を知る”目的で録画してあったドキュメンタリーを見てみました。



□ 「熊を崇め、熊を撃つ」(2019年2月16日、Eテレ
 太古より雪深い地で狩りをなりわいとしてきた山の民マタギ。東北の名峰・鳥海山のふもとには最後のマタギ集落のひとつとされる「鳥海マタギ」の村がある。熊を“山神様の使い”と崇(あが)め、狩った熊を“授かりもの”として大切に暮らしの糧としてきた。過疎化や環境の変化で狩りで暮らすことが難しくなりマタギは消滅の危機にある現代。それでも熊を狩り続ける、あるマタギの息詰まる熊との闘いと自然と共に生きる暮らしに迫る。


 秋田県と山形県にまたがる東北の名山「鳥海山」。
 この周辺を活動の場とするマタギを“鳥海マタギ”と呼ぶらしい。

 クマを仕留めて、毛皮や胆嚢(“熊胆”)を売ることにより収入を確保した職業を“マタギ”と呼びます。
 しかしそれのみで生計を立てられたのは50年前まで。
 現在は、クマの毛皮はお金にならず、熊胆の売買は政府が厳しく管理しているので自由になりません。
 そのため、現在“マタギ”として活動している人たちは、すべて別の職業を持っています。

 番組の中で「“マタギ”とハンターの違いは何か」「なぜ“マタギ”を続けるのか」と繰り返し問われていました。
 取材に応じた面々は、

 「“マタギ”は山で生活し、クマを捕らえるが、一方でクマを“山の神”として崇め、捉えたものはすべて利用する。」
 「町に住み、クマを射殺するだけで、肉を食べたりしないのがハンターだ。同じにしてもらっちゃ困る。」
 「それでもなぜクマを狩猟するのかと聞かれると、わからない。山に生きる血筋のようなものか。」

 と答えていました。

 実際の狩猟場面も放映されました。
 クマは人の気配を察すると、向かってくるのではなくて逃げていました。
 それでも近づいていくと、反応して向かってくることがある、という雰囲気でしたね。

クマに出会ったら・・・

2019-05-16 07:16:23 | 
 私は巨樹巡りが高じて、御神木目的に山の神社巡りをするようになりました。
 中には「この道の先に、ホントに神社があるんだろうか・・・」と不安になるような細い無舗装の山道をドライブすることもあります。
 実際に、ナビを頼りに進んだら使われていない廃道に誘導された苦いエピソードもあります。

 さらに近年、山里にクマが出没するというニュースをチラホラ耳にするようになり、気になってきました。
 昨年秋に参拝した山里の神社の入り口には「クマに注意!」という立て看板がありました。

 今週末に行く予定の福島県郡山市周辺巨樹巡り、4月にクマが出たというニュースがあり、調べてみると私が予定しているルートに入っていました。

□ (2019年05月15日)クマが国道横断 県内で目撃相次ぐ、二本松や猪苗代(福島民友)
 県内で5/14日、クマの目撃が相次いだ。けが人はいなかった。
▼午前7時50分ごろ、二本松市岳温泉4の国道459号を横断する1頭を車で走行中の女性が目撃。二本松署によると、体長約1.5メートル
▼午前10時10分ごろ、猪苗代町の国道49号を横断する1頭を車で走行中の男性が目撃。猪苗代署によると、体長約1メートル
▼午前11時40分ごろ、猪苗代町の国道49号を横断する1頭を車で走行中の女性が目撃。猪苗代署によると、体長約80センチ
▼午後6時ごろ、会津若松市湊町静潟の民家で女性が庭にいる1頭を目撃。会津若松署によると、体長約1メートル。

□ (2019年05月10日)福島・弁天山...また「クマ」目撃 国道4号沿い、注意呼び掛け(福島民友)
 9日午前9時25分ごろ、福島市の国道4号沿いの弁天山で、「知人がクマ1頭を目撃した」と同市の80代男性から福島署に通報があった。付近では4日、目撃情報に基づいてクマ1頭が駆除されており、同署や市鳥獣被害対策実施隊などが注意を呼び掛けている。
 同署によると、同日午前5時30分ごろ、同市の70代男性が体長50~70センチのクマ1頭を目撃。クマは弁天山西側の市水道局浄水場跡地付近の路上を北東から南西方向の山林に走っていったという。
 市は弁天山にある弁天山公園の立ち入りを制限し、同署や同隊、県が広報警戒パトロールを実施。県によると、市の有害捕獲許可でわなを仕掛けたという。付近で子どもの登下校の見守り活動を行っている男性(76)は「クマが頻繁に出没していて驚いている。子どもに危害を加えることがないよう早く捕まえてほしい」と話した。

□ (2019.5.3)クマに襲われ男性重傷 福島(産経新聞)
 3日午前7時ごろ、福島県北塩原村の檜原湖沿いの遊歩道で、旅行に来て散歩していた東京都西東京市の地方公務員の男性(64)がクマに襲われ、顔や脚をかまれるなどして重傷を負った。病院に搬送されたが、命に別条はない。
 福島県警喜多方署によると、男性は近くのペンションに逃げ込んで助けを求め、ペンションの関係者が119番通報した。クマの大きさや逃げた方向は分かっておらず、同署が周囲に警戒を呼び掛けている。


 うむむ・・・山の中にとどまらず、市街地周囲にも出没しているとは・・・クマ対策を確認しておかなくては。

 私の子どもの頃は「クマ対策用鈴」を身につけ、出会ってしまったら「死んだふり」をしてやり過ごす、と言われていました。
 最近は「人間の存在を知らせるには鈴よりもラジオの方がよい」「クマから目線を外さずに後ずさりして逃げる、走り去ると追ってくるので走るのは厳禁」などと耳にしますね。
 ネットで「傾向と対策」を調べてみました;

<参考にしたHP・資料>
①「もし、熊に遭ったら、どうする!本当の熊対策」<講談社発行、アウトドア雑誌「FENEK」2006年10月号掲載記事>
②「死んだふりはNG?実際にあった被害といざという時の熊対策7つ」(YAMA HACK)


 まずは日本に生息するクマの種類。
 北海道のヒグマと本州のツキノワグマ。

<ヒグマとツキノワグマの違い>(資料①)
 日本には2種の熊がおり、羆(学名Ursus arctos「熊」の義)は北海道にのみ、月輪熊(Ursus thibetanus「チベットの熊」の義)は本州以南にのみ現棲している。九州では絶滅したというが、真偽は不明である。
 羆は冷涼な、月輪熊は温暖な気候を好む。
 月輪熊は首や胸に白毛がある個体が多い。羆にも首や胸に白毛がある個体もある。羆は身体が大きくなると木登りしないが、月輪熊は身体が大きくなっても木に登る。
 羆の最大のものは、雄で体長2.4m、体重400kg、雌は体長1.9m、体重169kgである。
 月輪熊の最大のものは、雄で体長1.5m、体重120kg、雌は体長1.3m、体重90kgである。
 両種とも、発情期(5月下旬~7月上旬)、出産期(1月~2月)、子の数(1~3頭)、養育期間(子が1歳ないし2歳過ぎるまで)とも同じである。
 食性も両種ほぼ同じで、草類・木の実・蟻・鳥獣類やその死体・蜂・果樹作物・家畜・魚など・稀に共食いもする。


(ツキノワグマの食性)(資料②)
 雑食性ですが、主に植物を主食としています。
 昆虫のほか、動物の死骸を食べるなど、他の動物を捕食することもあります。

 越冬終了後…ブナやヤマザクラなどの樹木の新芽や若葉、草などを食べる
 初夏…山菜、タケノコ、キイチゴ類など
 盛夏…アリやミツバチなどの昆虫、動物食の割合が増える
 秋・・・ブナやミズナラなどの実、果実など

(ツキノワグマの性格)(資料②)
 基本的には臆病な性格で、人間の気配を感じれば、逃げていくのが普通です。
 ただし視界の悪いところでバッタリと出会ってしまったり、子どもを連れた母熊が子どもを守ろうとして、人間に対して危害を加える場合があります。食べ物の匂いに非常に敏感で、食べ残しの匂いにつられて近づいてくることもあります。

(ヒグマの食性)(資料②)
 ヒグマも雑食性で植物や虫、ドングリなどを食べています。
 近年では、数が増えたエゾシカを食べることもあるようですが、積極的に襲って食べているのではなく、狩猟された死肉などを食べているようです。

 春から初夏・・・フキなどの植物の若葉など
 夏から秋・・・ヤマブドウなどの果実やドングリなど

(ヒグマの性格)(資料②)
 陸上に住む動物としては日本最大です。時速50kmほどで走るほか、泳ぐことも、木登りをすることもできます。人よりも身体能力が高いですが、普通は人との接触は避けて暮らしています。ただし、残飯などの食べものの匂いにつられて、人の生活圏に侵入することはあります。人を見たら必ず襲ってくるような攻撃的な動物ではありませんが、遭遇したときは慎重な対応が必要とされます。


 本州で出会う可能性のあるツキノワグマは「体長1.5m/体重120kg」ですから、小柄なプロレスラーというイメージ。
 食性は「肉食」というイメージが先行していますが、実は「雑食」であり、どちらかというと草食がメインで肉食はオプションという位置づけ。
 すると、人間をエサとして食べるために襲ってくるわけではなさそう。
 山の中でおとなしく生活しているのに、人間が入ってきて邪魔された、だから追い払う、というスタンスかな。

 実際に起きたクマ関連の事件を列挙します;

<熊の出没事件や被害>(資料②)

(2017年6月14日)男性が熊に襲われ額や腕をかまれけが
 山梨県都留市で、イノシシを駆除するための罠を確認するため山林に入った男性が、熊に襲われました。男性は額や腕をかまれ負傷をしました。この山林の付近には住宅があり、近所の人は「この辺りで熊に襲われたことに驚きだ」などと話していました。

(2017年6月14日)カメラには養蜂箱を壊す熊の姿が!
 青森県八戸市ではこれまでになかった熊の行動が報告されています。かねてよりミツバチの養蜂箱が壊される被害があったため、市は付近に3台のカメラを設置しました。録画された映像には夜間熊が養蜂箱を前足で破壊して中のハチミツを食べる姿がありました。養蜂箱の持ち主は「何十年も養蜂をやっているがこんなことは初めてだ」と話していました。

(2017年6月13日)測量作業中の男性が熊に襲われる
 岩手県盛岡市の山中で、測量作業をしていた男性会社員が熊に襲われ左腕と背中にケガを負う事故がおきました。同僚と二人で入山した男性は、木を伐採しているところで熊に襲われました。男性は持っていたハンマーで熊に抵抗、すると熊は去っていきました。男性は熊よけスプレーを携帯していたそうです。

(2017年5月29日)タケノコ採りの女性、死亡した状態で発見される
 秋田県仙北市の山林で、タケノコ採りに来ていた女性が遺体で見つかりました。女性は頭や肩に傷を負っており、状況から熊に襲われたものみられています。女性は年に何度も山菜を採りに山に入っており、熊よけの鈴を付けるなど熊の危険は認識していたそうです。この日も鈴を2つ付けていたことが分かっています。秋田県では2016年の5月から6月にかけて、熊に襲われて4人の人が死亡しています。

(2016年6月15日)島根県で鮎釣りの男性が熊に襲われ指切断
 島根県浜田市の八戸川で鮎釣りをしていた男性(63)が、体長1.5mのツキノワグマに襲われ小指を失う重症を負いました。男性は河原で釣りの準備をしていた際、突然正面から熊に襲われたそうです。

(2016年6月12日)鳥取市中心部で熊出没
 鳥取市の市街地に近い登山道で、70代の男性ハイカーが熊2頭に遭遇するという事件が発生しました。2頭の体長はいずれも1.5m程度、男性はそのうち1頭に10mほど追いかけられたそうです。

(2016年5~6月)秋田で4人が犠牲に。熊の体内から人体の一部
 秋田県では山菜を採りに山へ入った人が相次いで襲われる事故が起こり、4人もの尊い命が失われてしまいました。地元の猟友会員が遺体発見現場付近で熊を発見し射殺。体長1.3mのこの熊の胃の中からは、被害者の体の一部が見つかりました。

(1970年7月)福岡大ワンゲル部・ヒグマ襲撃事件
 1970年の北海道カムイエクウチカウシ山で、福岡大学のワンダーフォーゲル部のメンバー5名がヒグマ1頭から執拗な追跡を受け、その結果3名が殺害されてしまいました。

(1915年)三毛別羆事件
 およそ100年前の北海道でおきた三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)では、巨大なヒグマが数度にわたり民家を襲い、7名が死亡し3名が重症を負いました。討伐隊によりヒグマは射殺され事件は終焉。日本最大級の動物による獣害事件として現代でも語り継がれています。


 頼みの綱のクマ用鈴を持っていても襲われています。
 北海道はヒグマですから危険度が高いのは理解できますが、しかし本州のツキノワグマでも死亡事件が発生しています。
 何か特殊な状況があったのでしょうか。

<人を襲う原因は3つ>(資料①)
 クマが人を襲う原因は3つに大別される。

1.食べる目的で襲う
 ことがあり(月輪熊は稀)、この場合は人を執拗に攻撃し、倒した人間をその場で喰うこともあるが、多くは己の安心できる藪の中や窪地や小さな沢地などに人を引きずり込む。

2.戯れ苛立ちから襲う
 こともあり、襲う熊は2,3歳の若熊に限られている。この場合は頭を下げ、毛を逆立て半ば白目を出して上目ずかいに人を睨みながらにじり寄り、「ファ!、ファ!」と威嚇しながらちょっかいを掛けてくる。

3.人をその場所から排除するために襲う
 ことがあり、その理由は不意に人と出会ったときの不快感から興奮しての先制攻撃(人から反撃されて、熊が直ぐに人から離れ逃げ去る場合はこれである)や、子連れの母熊が子を守るための先制攻撃がある。
 この種の事故を予防するには、鈴や笛を鳴らして歩くと良い。 また人が持参している食物や作物家畜などを奪う目的、あるいはすでに確保した物や場所を保持し続けるのに邪魔な人間を排除するために襲う場合もある。それには越冬穴の存在に人が気づかず穴に近づいたために、穴から熊が飛び出し襲ってきたというのもある。


 あらら、「食べるために襲う」ことはあるのですね。しかし、ツキノワグマではまれとありちょっと安心。
 「たわむれ、ちょっかい」ということもあるようですが、クマにとっては遊びでも人間にとっては“死闘”です。
 やはり「子連れには要注意」な様子。子どもを守るために攻撃的になるのは動物(カラスもヒトも)に共通しています。

※ 時季により襲い方がちがう
 人に対する熊の襲い方は時季により2つに分けられる。
 2月中旬以降の冬籠もり末期と冬籠もり明け直後は、立ち上がる体力がなく這ったまま主に歯で攻撃し易い部位をもっぱら囓る。
 これ以外の時季は立ち上がって手の爪で攻撃することが多い。そろそろ秋の山菜採りの時季、この時期の熊も人を襲う場合は、立ち上がって手の爪(手足とも指は5本)で攻撃してくる。熊の手爪は「熊手」の原型となったほど頑健で、手爪は鉤型で長さは6~10cmもある。


 これは知りませんでした。
 冬眠明けは力が入らないので、腕力(爪力?)よりもかみつき、体力十分なときは“熊手”という凶器で攻撃してくるのですね。

<クマに出会ってしまったら>(資料①)
 「死にものぐるいで抵抗反撃すること」。
 「死んだふりをするなど論外(意識ある状態で、熊の爪や歯の攻撃にじっと耐えられる人間など誰もいない)」。
 鉈(なた)があれば、最善である。鉈で熊の身体のどこでもよいから叩くことだ。そうすれば、熊も痛さを感じ、怯んで、人を襲うのをまず止め、躊躇しながらも立ち去るものである。
 既述のように、人と遭遇し興奮して我を忘れて襲ってきた熊は、人の少しの抵抗で、我に返り、そそくさと立ち去るものである。これ以外に「襲い掛かってきた熊を熊撃する確実な方法」はないと思う。「熊の鼻先を叩け」という人がいるが、うまく叩けるものではない。


 結局、実戦になったら「なりふり構わず抵抗・反撃する」と本能に任せるしかないようですね。
 その際は、武器が必要で「鉈」(なた)がお勧めとのこと。
 鉈というのは手持ちの斧のイメージ。
 しかし、一般市民はふつう、鉈を持ち合わせていません。
 買っておいた方がいいのかな。
 ナイフ、あるいは尖ったもので痛みを与えるのではダメなのでしょうか。
 かえって興奮して狂暴になるのか、スゴスゴと逃げていくのか、知りたいところです。

<クマに遭遇するかもしれない土地での心得>(資料①)
 まず勇猛心を持ち、常に熊と遭遇した場合の対処法を頭に入れ、時々それを思い浮かべながら行動すること

1.必ずを携帯する(武器として実用的な物であること)
2.音の出る物(ラジオや鈴など)で、常時音を立てて歩くと、辺りの音の異常が感知し難いので、要注意である。それよりも、時々声を出すか、を吹いた方がよいと思う。
3.辺りを充分注視しながら進む。見通せる範囲はもとより、その先の死角部分では、特に歩調をゆっくり遅めて、注視すること。
4.万が一熊に出会ったら
①(20m以上距離がある場合)走らないで、熊の様子を窺いながら、熊から離れること。
②(距離が10数mないし数mしかない場合)その場に止まりながら、話しかけること(最初は普通の音声で、それからは大声で)。そして熊が立ち去るのを待つ。自分も少しずつその場から離れてみる。
5.側にのぼれる木があればのぼり逃げる。襲ってきたら死にものぐるいで鉈で熊の身体のどこでもよいから叩く。

 この著者は「鉈は必須」としています。
 ラジオや鈴よりも笛がいい、というのは初耳です。
 それから、クマとの距離により対応が違い、20m以上ならソロリソロリと立ち去り、それより近くて逃げられないと感じたらなんと「話しかける」とあります。で、できるかなあ。
 木登りは圧倒的にクマの方がうまいので、無駄だとテレビで見たことがありますが・・・。
 

<熊に遭遇した際&被害を避ける対策>(資料②)

◆驚いて大声を出さない◆
 突然大きな音をたてると熊も驚き、逆に身を守ろうと襲いかかってくることがあります。悲鳴は“ぐっ”と我慢して冷静に。

◆走って逃げない◆
 熊は逃げるものを追いかける習性があります。熊が本気を出せば人間よりも足が速いので、走ってもかないません。熊の方を向きながらゆっくりと後ずさりしてその場を離れてください。

◆死んだふりをしない◆
 雑食性の熊は死んだ魚や動物を食べることがあります。倒れて死んだふりをしていると、かえって熊が興味を持って近づいてきてしまう可能性があります。
* 熊に攻撃された場合の対応としては、様々なものがあります。その中で「死んだふり」ではありませんが、背中にリュックを背負った状態でうつぶせになり、手で首や頭を守り、攻撃に耐える対応も有効とされています。

◆熊撃退スプレー◆
 熊と遭遇してしまった場合の撃退用として、「熊撃退スプレー」というのが市販されています。万が一遭遇した場合、風向きに注意して、熊の顔に向けて吹きかけます。

◆熊鈴を鳴らす・ラジオをかける◆
 前に述べた通り、熊は基本的に人間を避ける習性があります。音を鳴らして人間がいることを知らせ、熊が近寄らないようにする“熊鈴”は、対策として一定の効果があるとされています。ただし秋田の事件にように、熊鈴をつけていた人が襲われてしまったケースもありますので過信は禁物です。

◆なるべく一人の行動を避ける◆
 熊に襲われた被害者の多くが、一人でいるところを狙われています。山へはなるべく複数で入り、大きな声で会話をするのが、有効とする専門家もいます。また複数いる場合は万が一襲われたときも応急手当や救助の要請がしやすいというメリットもあります。

◆残飯や生ゴミは絶対に捨てない◆
 匂いに敏感な熊は残飯に引き寄せられてしまいます。その結果、本来人を避けるはずの熊と人とが遭遇してしまうのです。野山に食べ物を捨てるのはもってのほかですし、携行する食料もなるべく匂いがしないよう密閉することをお勧めします。


 大きな音に反応してクマが襲いかかってくる可能性があるなら、前項の防犯用笛は危ないかもしれませんね。
 防犯ブザーも同様。
 「クマ撃退スプレー」という商品があることを初めて知りました。amazonでみたら5000円〜1万円と高価。
 こちらのサイトではラジオも推奨しています。「人がたくさんいるようカモフラージュ」という意味ですね。
 クマのエサになる食べ物を持ち歩かないこともポイント。携帯食は密封されたものに限定しましょう。

 さて、現在手元にあるのは・・・
・クマ対策用鈴
・携帯ラジオ
 
 鉈はこれからホームセンターに行ってみてきます。

 ・・・行ってきました。
 が、鉈もクマ撃退スプレーも売っていませんでした。
 アウトドア専門店でないと扱っていないのかな。

 ところで、まぶしい光ってどうなんでしょう。
 災害対策に小型のLED懐中電灯がたくさん売られていますが、直に光を見るとけっこうまぶしいですよね。
 まぶしがらせてクマを撃退、とはなりませんか。

 ・・・検索してもあまりヒットしませんでした。

 結局、ポイントは、
・クマは人を積極的に食べたいわけではない。
・極力出会わないようにする、そのためには鈴やラジオや笛の音で人間の存在を示してクマを近づけない。
・万が一出会ってしまったら、遠目なら刺激しないように立ち去る、近くなら存在感を示して(手を広げて体を大きく見せるなど)クマが立ち去るのを期待する。
・襲われたら本能に任せて必死に戦うしかない。
 
 といったところでしょうか。
 なお、クマが里に姿を現すようになった理由は、やはりエサ不足のようです。

昆虫不足が原因!?頻発するクマの出現と猛暑の意外な関係
FNN報道プライムサンデー:2018年7月30日より抜粋)
・・・なぜ頻繁にクマが人の住む場所に顔を出すようになったのだろうか?そこで秋田市の中でもクマが多く生息している事で知られる山間の集落に向かった。
「人とクマの境界線がなくなった」
 秋田市の上新城・小又地区。このエリアに住む人々は山中に山菜を摘みに行ったり、猟を行うなど、クマと長く密接に関わってきた。そんな人たちもクマの変化を敏感に感じていた。
 住民は「人とクマの境界線が無くなったな」と話す。
 以前は、クマが山の中から出てくることはなかったというが、最近では当たり前のように家の周辺や畑に現れるという。クマの行動範囲に明らかな異変が起きていた。
 取材を続けていると「クマが住む山に詳しい」という住民の男性に出会った。その男性は「熊っこなんてしょっちょう会ってるよ。1日に3回会ったこともある」と話すと、私たちをクマの住む山の中に案内してくれた。
 林道を進むこと20分。するとクマが住宅街に現れる理由を示す場所があった。
「クルミの実が生っていない」
 「ほれ、クルミの木あるべ。でもまったくクルミが生ってない、これが本当に実がない。クマがエサがとれないってこと、だからエサを求めて山の下に降りてくる」と話す男性。
 本来ならこの時期にたくさん生っているはずのクルミの実が温暖化による異常気象のせいか生っていなかった。クマのエサとなるはずのクルミの実不足。
猛暑、そして大雨、異例のルートを進む台風…今年、日本列島を襲った異常気象。生態系の専門家は近年の異常気象で山の環境に変化、動物の生態系に異変が起きていることが、クマが住宅地に出現する一つの原因だと語る。
 日本熊森協会相談役の主原憲司氏も「温暖化で昆虫が減っているんです。ツキノワグマは昆虫を食べる。そのためクマが下に降りていると考えられます」と分析する。


 クマのエサは、ブナやミズナラ、山桜です。
 戦後のスギ植林はこれらの林を伐採して減らしてしまったので、気候変動云々の前に、それが主因かも知れませんね。

「森之巡」〜台湾の巨樹調査

2019-01-03 08:01:56 | 
 私が訪ねる巨樹は、主に里山や神社の御神木として保存されているものです。
 一方、静謐な森の奥に存在する巨樹を発見すべく探検照査する人たちもいて、中でも2017年の屋久島探検は見物でした。

 さて今回は台湾で調査する人たちの映像があることを知りました。
 Youtubeで閲覧可能です。

■ 森林調査隊の映像公開 中央山脈の秘境や巨樹群発見の喜びを記録/台湾
フォーカス台湾:2019/01/01


台東林区管理処の森林調査隊が見つけた巨大なタイワンベニヒノキ


(台東 1日 中央社)林務局台東林区管理処はこのほど、同処の森林調査隊が中央山脈の山奥で撮影した記録映像を公開した。人影まばらな森林に分け入って道なき道を行く隊員の苦労や雄大な巨樹群を見つけたときの喜び、秘境の絶景などが約11分にまとめられている。同処は、映像を見た人に林業の現場や原始林の美しさについて理解を深めてもらい、森林資源を大切にする気持ちを喚起できればと期待を示している。
 同処に所属する関山、知本、大武、成功の4カ所の工作站(事務所)は、毎年不定期に職員やポーター(荷物運び)からなる特別調査隊を編成して山奥の実地調査を行っている。「森之巡」と名付けられた今回の映像は、このうちの知本工作站が組織した13人の11日間にわたる調査記録。
 調査隊は、タイワンベニヒノキやタイワンスギの群生地などを調べるために、南部・屏東県から東部・台東県にまたがる一帯を探訪。小鬼湖や紅鬼湖など行く先々で美しい景色を空撮したほか、海抜約2378メートルの大浦山付近では、タイワンベニヒノキの巨樹が100本以上群生しているのを発見。最も大きいものは直径約4.8メートル、幹周約15メートルで、10人が手をつないでやっと木の幹を囲めるほどだったという。

「樹の上に住むアメリカ人 ~ツリーハウス 人気の秘密~」

2018-08-16 17:47:01 | 
 「ツリーハウス」
 なんて魅惑的な言葉でしょう。
 昔からのあこがれです。

 はじまりは、おそらく少年時代の「秘密基地造り」。
 近所に住む友だちとその弟と私の3人で、あちこちに秘密基地を作りました。
 その数は数十。
 家の裏の狭い空間だったり、原っぱの中だったり、埋め立て地の砂利の中だったり、神社の境内の林の中だったり・・・。

 一番の傑作が、小川にせり出して枝を伸ばしている大木の上に作った樹上基地。
 たぶん、板を何枚か載せて固定したくらいの代物だったような・・・まあ、子ども版ツリーハウスとも言えそう。

 しかしその上で遊んでいたら、友だちの弟が川に落ちてしまったのです。
 それが双方の親たちにばれてしまい、樹上基地はあえなく撤去される運命に。

 でも、樹上基地から眺めた、ふだんとはちょっと違う風景は今でも目に焼き付いています。

 さて、ツリーハウスを取り上げたNHK-BSの番組を視聴しました。
 プロが作成するツリーハウスは多様で、子どもの秘密基地の他に、大人の隠れ家だったり、宿泊施設だったり。
 ツリーハウスを巡るいろんなドラマが取り上げられていました。

 うらやましいなあ。
 でも気がつくと、何mもはしごを登るのが億劫になりつつある年齢になってしまいました。

 我が庭には10年選手のクスノキが何本かあります、というか、ありました。
 なぜ過去形かというと、近所から「落ち葉と枯れ枝を何とかしてほしい」というクレームが入ったので、仕方なく数本を残して伐採せざるを得なかったのです。
 将来、ツリーハウスを作るのが夢だったのに、その実現がさらに非現実的になってしまいました。

 確か軽井沢にツリーハウスのホテルがあったはずだから、それを利用するしかないかな。


樹の上に住むアメリカ人~ツリーハウス 人気の秘密~
2018年5月14日、NHK-BS



<内容紹介>
地球に好奇心 樹の上に住むアメリカ人~ツリーハウス 人気の秘密~(初回放送:2003年)
9・11同時多発テロ以降のアメリカで増加中のツリーハウス。人々はなぜ、樹の上で過ごす時間を求めるのか探る。