巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

「ホタルの歌」by 原田一美

2011-06-26 09:35:34 | 里山
初版:1971年発行(学研)
新版:2007年発行(未知谷)

 地元の里の川でホタルを見ることができて感動した私は、本棚からホタル関係の本を引っ張り出して読んでみました。

 著者は小学校の先生。徳島県は美郷村という山里の中枝小学校で宿直をしているとき、子ども達から「ホタル狩り」の誘いを受けたのがそもそもの始まりでした。川面に乱舞するゲンジホタルの大群に魅せられ、子ども達とともに観察を始め、人工飼育に挑戦し、3年がかりで卵から成虫になるまでを見届けた活動の記録です。

 ホタルについてほとんど知識がなかった私ですが、この本の中の小学生達に教わっているような錯覚を受けました。
・成虫だけではなく卵も幼虫もさなぎも光ることを初めて知りました。
・カワニナという巻き貝しか食べない幼虫、水しか飲まなくて生殖活動を終えると3週間の命を終える成虫(「ホタル来い」の歌に習って砂糖水を与えたら死んでしまった!)。
・キレイな清流に住むホタル・・・鉱山の廃液が流れる川には一匹もいない事実。

 本で調べてお終いではなく、実際に飼育して卵から成虫になる過程を詳細に観察し、試行錯誤の中で知識を確認していく熱意と集中力に脱帽しました。その生き生きとしたまなざしを記録に残したいと先生も思ったのでしょう。

 初版の年代から計算すると、ホタル研究部の部員は私より少し先輩達。私の田舎にはすでにホタルはいませんでしたが、春夏のザリガニ釣り、小川にはメダカが泳ぎ、秋には赤とんぼの大群が空を埋め尽くす自然が残っていました。
 現在の子ども達は「人為的に造られた遊び空間」しか与えられず、未知の自然に踏み入って行くときのドキドキ感が経験できなくてかわいそうですね。

 一時、ホタルの研究で盛り上がった村も時代の流れの中で過疎を免れず、中枝小学校は廃校へ。図らずも、貴重な記録となってしまいました。

~自分のためのメモ書きです~

■ ホタルが飛びやすい条件:
・水温が14~16℃、それより高くなると上流へ移動していく。
・雨の降る夜や月の明るい夜は少ない。
・空が曇って湿度が高く、気温も高い夜に多い。

■ ホタルの飛行に関する知識:
・当たりが薄暗くなる7時過ぎに飛び出し、9時頃最もたくさんの数になり、それからだんだん数が減り、夜中と、朝の3時頃またちょっと増えるが、その後減り続け、やがて夜明けとともに姿を隠す。
・最初にオスが飛び始め、約2週間遅れてメスが飛び出す。
・オスは飛ぶ力が強く、メスは弱い。
・昼間はほとんど動かないで、草や木の葉の裏側や、葉の付け根の引っ込んだところにずっと隠れている。

■ ホタルの産卵(飼育観察):
 産卵はいつも夜が更けてから行われた。苔の間をあちこち這いまわっていたメスのホタルは、卵を産むのにいい場所(ほとんどが隅の方)を見つけると、お尻を上下に振りながら、苔にこすりつけるようにして産みつけていく。そして、生み終わった後しばらくはそのあたりを這っているが、やがて草の影に身を隠して死んでしまう。

■ ヘイケボタルの観察より:
・汚い水辺に住んでいる
・大きさはゲンジボタルの約半分で、メスは10mm、オスは9mm。
・ゲンジボタルはふわりふわり曲線のカーブを描いて柔らかく飛ぶが、ヘイケボタルはすっ、すっと直線的に鋭く飛ぶ。
・光る回数はゲンジボタルと変わらないが、光はうんと弱い。


・・・ホタルが光る、その大元は「ルシフェリン」という化学物質です。実は私、今から15年前にこのルシフェリンを使って実験・研究をしていました。正確には「ウミホタル・ルシフェリン誘導体」という物質を用い、肺胞マクロファージという細胞から産生される活性酸素を喘息の薬が抑制するかどうか、という研究です(専門用語でよくわかりませんね)。一応この研究で医学博士の資格をいただきました。

 重ね重ね、ホタルに感謝。

里の川にホタル

2011-06-13 22:59:51 | 里山
 今夜長男が「お父さん、旗川にホタルがいるらしいから見に行こうよ」と突然言い出しました。
 旗川というのは近所にある清流で、子どもの頃は釣りをしたりヤスで魚を突いたりした里の川ですが・・・そんな話、ついぞ聞いたことがない。
彼の話では、ホタルを放した人がいて、カワニナ(ホタルのエサ)を放した人がいて、そしたら繁殖してしまったとのこと。
ホントかなあ、と半信半疑で見に行ったら・・・ホントにいました。
川岸の草むらで点滅したり(メス)、フワフワと飛翔したり(オス)。

早速デジカメで撮影にトライするも、一眼レフではないのでこの辺が限界です(苦笑)。

  

栃木県足利市周辺では「名草」というホタルの名所があるのですが、歩いて10分の場所でホタルに会うことができるなんて、幸せな夏になりそう。

尾出山神社のモミとスギ

2011-06-12 22:09:36 | 巨樹・巨木
 梅雨の合間に近隣の鎮守の森巡りに出かけました。曇り空で湿度は高めですが、蒸し暑いと云うほどではなく、助かりました。

 今回の目的地は尾出山神社(鹿沼市)とその周辺。

■ 熊野神社のスギ(鹿沼市下永野)

 昨年も訪ねた熊野神社。参道の階段脇にスギの巨木が並んでおり、圧倒されます。左手奥の一番太いスギは直径2m以上ありそう。今年も樹勢が盛んで安心しました。

■ 尾出山神社(上社)のモミとスギ(下社)

 尾出山神社は2つあります。なぜかはわかりません。上にあるのが本来の社と思われますが、そこまで参拝するのが大変なので簡易的に下にも造ったのでしょうか。
 上社(と勝手に呼ばせていただきます)はいかにも「山神社」という雰囲気です。小さな本殿覆い屋の左隣に直径1.5m強のモミの木(樹齢700年)が聳え、新緑の葉を纏っていました。
 50mほど南にも小さな鳥居を見つけました。「天照大神」と書いてあり、参道の階段は延々と上に続いていました。不思議な感覚。

 下社は民家の近くにありました。参道の階段の終わりにトンネルのような木造建築物があり、それを抜けるとやはり小さな本殿覆い屋が鎮座し、その手前左右に幹周1m強のスギの巨木が聳え、あたかも助さん角さんを従えた水戸黄門と云った様子。手入れされたスギ林の木陰に風がそよぎ、なんとも心地よい空間でした。

 他にもいくつか神社を回りましたが、手入れが行き届かずちょっと荒れた印象を受け残念でした。

赤城南面の鎮守の森巡り

2011-06-01 06:40:11 | 巨樹・巨木
 5月は鎮守の森巡りによい季節です。
 新緑が美しく、まだ蚊の発生が少ないので虫さされの心配がありません。
 昨日午後を利用して、桐生~赤城山南面の鎮守の森をいくつか訪ねました。


 記憶に残ったのが桐生市南部の里山にある賀茂神社(式内社)。昨年夏に訪れた社ですが、スギとモミの巨木(上の写真)にまた会いたくて、さらに本殿右奥の境内社(摂社・末社)の雰囲気が忘れられなくての再訪です。境内社の集まりを眺めていると、翁顔の神様達が談笑しているような気がしてきますね。


 もう一つは旧宮城村の苗島神社
 小さな社ですが、拝殿右手にあるスギの御神木は大きな石と石でできた末社群に囲まれていて独特の雰囲気を醸し出しています(上の写真)。巨樹信仰と巨石信仰の要素が混じていることが見て取れ、興味深く感じました。
 群馬県内には他にも前橋市の産泰神社や群馬大学病院の西にある岩神稲荷神社が「巨石信仰」を伝えています。

 他にも小さな神社をいくつも回りました。
 氏子さん達の高齢化が進む中、管理が行き届かなくて荒れた神社もよく見かけるようになり、神様達も寂しい思いをしている様子・・・。
 粕川村の稲荷神社でひとりで黙々と草むしりをしているおばあさんの姿が印象的でした。

 今回はコンデジながらレンズの明るいカメラ(オリンパス:XZ-1)に替えたので、薄暗い境内でもピンボケなしで撮影できました。アートフィルターという6種類の画像処理が可能で、提示写真は「ラフモノクローム」を使用したモノです。

※ 神社の雰囲気をよく捉えたHPである「プチ神楽殿」をリンクさせていただきました。