巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

スギ植林が日本の森・里山を破壊した。

2009-09-20 22:12:22 | 林業
最近、森に関するTV番組を2つ見る機会がありました。

1.難問解決!ご近所の底力「土砂災害が故郷を襲う」
 長野県諏訪湖周辺の村を数年前の豪雨の際、土石流が襲いました。その原因の一つに「スギ林による地盤の脆弱化」が指摘されました。きちんと「間伐」をすれば問題解決するのですが、所有者の高齢化、間伐費用、間伐材の利用価値などの点でその作業が進みません。しかし地元民は「何とかしなければ・・・」と悩んでいます。その解決法は?
・都会からのボランティアに間伐を手伝ってもらう(高知県の例)
・間伐材で製造した紙(少し割高)を自然保護活動に熱心な企業に購入してもらう(宮城県の例)
 これらのアイディアに賛成した地元の人は両者とも約6割にとどまりました。「女性に間伐ができるのか?」とか「製紙工場までの距離がありすぎる、紙を本当に買ってくれるのか?」とか保守的な不安も覗かせていました。その後話し合いを持ち、最終的には実行に移す方向でまとまったようです。

2.熊本県水上市湯山の里山
 里山を知り尽くす約60歳の幼なじみ3人組の目から見た森の変遷物語。
 3人とは、イノシシ猟師、民宿の親父、イチゴ農家(林業からの転職)。
 夏場の魚取りから始まり、山の幸の見つけ方、プチ焼き畑農業など、里山と共に生きてきた少年のような顔をした実年世代が眩しく見えました。
 100kg超のイノシシを仕留めたときの写真は「もののけ姫」に出てくる大イノシシを連想するほど。
 豊かな里山の自然は、やはりスギの植林で衰えてきたことを実感せざるを得ない内容でした。
 木の実を食料とするイノシシが減る一方では、スギを伐採した後に出てくる木の芽を食料とするシカが増え、人間の数より多くなってしまいました。畑を荒らすので近年「害獣」として駆除対象に指定されてしまいました(シカが悪い?)。

 2つの番組は「スギ植林が森を、里山を破壊した」と共通する問題点を指摘していることに気づきました。

1ではスギ植林後に「間伐」という手入れを怠ったがために、一本一本のスギの木がもやしみたいに細くしかならず、根の張り方も浅く、かつ地表に日光が届かないので下草も生えない・・・ここに大雨が降ると保水するどころか簡単に地滑りを起こし土石流が村を襲うことになる、と。

2でも同じことをコメントしていました。さらにいくつも気になることを指摘しています;
・広葉樹が無くなると木の実が減り、それを食べる森の動物がいなくなる。
・小川の水量が少なくなり、雨が降ると急激に濁流が増加する。近年、小川の水量が増えて濁りが無くなったので不思議に思って水源を見に行ったら、スギ林が伐採された後に自然に広葉樹が根付き、雑草もたくさん生えていた光景を眼にした。これは広葉樹の根が張り、雑草が増えて保水力・濾過機能を高めたためであろう。

無計画な戦後のスギ植林による被害はスギ花粉症の激増だけではありません!
近年、それが悪いと知りながら、私有林が多いため間伐の費用を個人が負担しきれず、やはり日本中のスギ林は野放し状態。
自民党から民主党へ政権交代した今年、この対策がどう変わるのか見物です。