巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

マザー・ツリー

2024-07-05 10:37:40 | 
「マザー・ツリー」という本、
しばらく前に購入しましたが、インテリアと化しています。

「アバター」というSF映画、
有名ですがなかなか見る機会がなく、
先日ようやく自宅で見ました(Amazon Prime Video)。
その中で巨樹が出てきて、ワクワクしながら観ました。

その後、下記の記事が目に留まり、
「マザーツリー」が「アバター」のモチーフになっていることを知りました。
巨樹は森の生態系の中心に君臨しており、
「菌」ネットワークが重要な役割を担っている、
はてこの内容、TVドキュメンタリーで見たことがあるような・・・。


■ 「マザーツリー」は森林や林業の常識を一変させる
〜『マザーツリー』スザンヌ・シマード氏に聞く
岡田 広行 :コラムニスト
2024/06/30:東洋経済オンライン)より一部抜粋;

[著者]Suzanne Simard(スザンヌ・シマード)/カナダ・ブリティッシュコロンビア大学教授。カナダの森林生態学者。森林伐採に代々従事してきた家庭で育つ。大学卒業後、森林局の造林研究員として勤務した後、ブリティッシュコロンビア大学教授に就任。米『タイム』誌が2024年の「世界で最も影響力のある100人」に選出。

 世界的ベストセラー『マザーツリー』。
 カナダ人の著者が本書執筆以前から提示してきた自然についての考えは、2009年公開の映画『アバター』のモチーフにもなった。来日した著者に、森林生態系の危機的状況と、政策やビジネスの転換に必要な科学的知のあり方について聞いた。・・・

──本書は森林や林業に関する常識を一変させる大作です。

 森の木々が、地中の根や土壌の菌根ネットワークを通じて助け合いの関係にあることが、私たちの研究を通じてわかってきました。水分や、窒素、リンなどの栄養素を通じた共存、相互扶助の中心にあるのが、マザーツリーと呼ばれる樹齢の長い大木です。マザーツリーの根にはびっしりと菌類が広がっており、そうした菌類が栄養素を運ぶ役割を担い、木々を健康に保っています。

──これまでの林業では、単一の樹種を整然と植林するほうが生産性が高いとされてきました。本書はそうした常識も覆しました。

 広葉樹のアメリカシラカバと針葉樹のダグラスファーを一緒に育てたほうが、後者だけを育てた場合と比べてよく育つことを、研究を通じて解明しました。
 いろいろな樹種の交じった森が、単一樹種の人工林に転換された後、不健全な状態になっているのを見たことがきっかけでした。そこでいろいろな樹種を混栽したら生存率や成長率がどうなるかを確かめてみました。その結果、多様な樹種のある森のほうが、生産性も高いことが数字を伴ってわかってきました。
 1990年代ごろまでは、このような考え方は異端であり、モノカルチャー的な林業が最も生産性が高いという考えが根付いていました。しかし近年、多様さの重要性がようやく認識されるようになってきました。


▶ 土は生命の根源である


──本書で強調されているのが、森林における土壌の役割です。

 豊かな森の土壌を掘ってみるとわかりますが、そこは生命でみなぎっています。最近でこそ、分子生物学などの研究の発達によって土壌の果たす役割や重要性が再認識されるようになってきました。しかしもともと、土が生命の根源であることは太古の昔から受け継がれてきた英知でした。それを私たちは忘れてしまっていたのです。

──カナダでは原生林が大型の重機によって皆伐され、急速に失われています。この皆伐がいかに環境に悪影響を与えるかについても詳しく書かれています。

 気候変動、地球温暖化という観点でも、皆伐は炭素サイクルに壊滅的な打撃を与えます。樹木が伐採されて二酸化炭素(CO2)の吸収ができなくなるだけでなく、土壌に蓄えられていた炭素も急速に放出されていきます。植林をしても効果は乏しく、土壌の復元には数千年という時間を要します。

──本書では先住民が果たした役割にも触れています。森を豊かにするために、捕った鮭をマザーツリーの下に置きに行くという慣習があったとは驚きました。

 先住民の人たちは森のことを深く知っています。鮭を置きに行くのは、栄養素を森に戻すためで、物質的な循環にうまくつなげています。10年ほど前に先住民で研究者のテレサ・ライアン氏と知り合い、そうした慣習があることを教えてもらいました。・・・

▶ 多様性重視へ林業の転換を

──本書が世に出たことによるインパクトは。

 カナダ・ブリティッシュコロンビア州の首相や森林相とも面会し、意見交換をしました。同州では木材生産中心だった森林管理のあり方を、より多様な価値を中心に据えたものに転換していく考え方に変わりつつあります。その動きは十分ではありませんが、本書が影響を及ぼしたことは確かです。

──今回の来日では、日本の市民に向けた講演も行いました。

 カナダの原生林の皆伐が、日本のバイオマス発電と深く関わっていることを知ってもらいたかったからです。
 伐採して得られた木材から、木質ペレットと呼ばれるバイオマス発電用の燃料が作られ、大型船で日本まで運ばれ、発電所の燃料となっています。そしてこれが、CO2排出量ゼロのカーボンニュートラルと見なされています。こうしたやり方は十分な検討のうえで制度化されたものではなく、持続可能性もありません。

──今までのような、皆伐による破壊的な林業を改め、本来あるべき持続的な林業に戻すにはどうすべきでしょうか。

 水や空気、生物多様性や文化などの外部要因が、経済的な価値評価から除外されていることがいちばんの問題です。言い換えると、今の経済では、材木やペレットとして売れるかどうかという非常に狭い意味での価値しか評価されていません。外部要因として無視されている価値が製品の価格にきちんと反映されるようになれば、システムの大変革につながります。
 そうなれば、本当の意味での経済合理性が回復し、人や環境に優しい経済につながっていきます。資源の無駄遣いも是正されるでしょう。私は森の本来の価値が評価されることを望んでいます。


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