巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

「日本の歴史を作った森」

2010-08-04 06:03:36 | 
立松和平 著、ちくまプリマー新書、2006年発行。

皆さんご存じのように、立松さんは2010年2月に亡くなった、栃木県出身の作家です。
自然保護活動にも熱心だった彼が、木曽のヒノキを都市への材木供給という歴史的視点で紐解いた内容です。

一番印象に残った箇所は、なんと「あとがき」でした。
「日本は森の国である。なにしろ国土の70%が森林なのである。たとえばアフリカのサハラ砂漠やナミブ砂漠に行って帰ってくると、この国はなんと恵まれた風土の中にあるのだろうと思う。・・・それなのに、例えば世界最古の法隆寺を造るほどの木材がないということは、またなんとしたことだろう。見かけはよいのだが、森の力は根底的に落ちている。」

本文にはちょっとガッカリしました。
扱われているのは木曽のヒノキのみ。
話は細切れで、同じことの反復も多く、ストーリー性が今ひとつ。
何のことはない、書き下ろしではなく新聞の連載記事を本にまとめただけなのですね。

さて、これはと感じ入った箇所をメモしておきます;

■ 伊勢神宮の式年遷宮
 伊勢神宮は創建された西暦600年代から20年ごとに全てを造り直すことを延々と繰り返してきた(戦国時代のみ100年強途絶えた時期があります)。これは「新しいもの、新鮮なものが尊い」という稲作に基づく浸透の蘇りの思想に基づいている。20年というのは意味がある。今から約1300年前の日本人の平均寿命は30歳代後半だと推定されており、技術を次世代に渡すためには20年間隔が適当だったのではないか。

・・・別の説も聞いたこともあります。出雲大社は数十年ごとに木柱が劣化して自然自壊を繰り返したので、巨大木造建築の寿命として設定されたと。

■ 仏教の「声明」(しょうみょう)とは土や森への祈りである。
 声明とはみんなで声を合わせて仏菩薩をたたえ、この場に来ていただき、こちらの祈りを聞き届けてもらうこと。その根底の願いは、「地味増長」である。土に力をくださいという誓願である。次は「五穀豊穣」だが、土が米や麦を実らせてくれ、森の木を育ててくれる。こうして食べるものが豊富にあれば、万民富楽となる。人々が幸せになるなら、国は安泰であるから鎮護国家に繋がる。

■ スギは500年、ヒノキは1000年
 耐久性が望まれる社寺を造るには、ヒノキ材が最良である。日本に最も多く植林されたスギは、早く育って60年も経てば伐採適齢期になるのだが、建築したら400~800年しかもたないとされる。

■ 木曽五木と「ヒノキ一本首一つ」
 木曽五木とはヒノキ、サワラ、アスナロ(ヒバ)、コウヤマキ、ネズコを指し、宝永5年(1708年)に尾張藩の林政改革によって指定された。この五木は停止木(ちょうじぼく)と云い、御用材以外には伐採が厳禁とされた。それまでの激しい伐採のため荒廃した山を保護するためである。これがかの有名な「ヒノキ一本首一つ」であり、盗伐したものは容赦なく処刑されたのであった。

・・・続きは後ほど・・・